あれから、関係は変わってない。
ちゅーか、全く進展はない。

そりゃ、あれだけじゃわかんねーだろう。


ギンジの男気に感動した俺は、気持ちを告げる事はまだ到底無理だが、何かルークに対してアピール出来ることはないかと必死で模索し、結果、ルークの首に俺の愛用していたネックレスをかけてやった。
まあ、ちょっと高かったけどそんなのルークをモノに出来るなら問題じゃない。せめてルークを取り巻く奴らに、俺の存在を知らしめる事が出来ればという苦肉の策でしかないんだけどな。告白するにはそれなりのシチュエーションも必要だし。
…まー、告るったってルークにはまだ告ってもいない好きな子がいるんだ。はっきり言って玉砕は目に見えてる。でも、ギンジが勇気をくれた。
思ってるだけじゃ気持ちは伝わらないし、いつまで経ってもこのままだ。だから、何とかしてこの気持ちを伝えないと何も始まらないし終わらない。
気持ちに気付いてもらうためにそれと同じ物を買って着けていったらすぐに気付かれて突っ込まれた。
ルークとおそろいがよかったとそれらしい発言をしたのに、ルークには本当の意味は通じなかったらしく、ふーん、とその一言で終わった。
…ちょっとへこんだけど。


もちろん、このまま引き下がる俺じゃない。何かルークを誘う口実というか材料というか、何かないのか。そんなことばかり考える毎日が、しばらく続いた。そしてある日、何気なくバイト帰りの電車で広告を見上げてたら、今話題の映画の広告が入ってた。
そーだ、これに誘ってみるか…。
バイト終わるのは8時だからレイトショーなら間に合う。時間に合わせてルークに来てもらえば大丈夫だろう。

早速ルークに電話をし、約束を取り付けた。

当日の夜8時15分。ルークはいつもの時計台の下で待ってた。
上映時間までまだあるから、映画館のあるビルで食事済ませることにした。


いつも通りのラグランのTシャツに大きめのジーパンを腰で履いてるルークが、地元で見るのとはちょっと違うような錯覚になるのは、ここがネオンの光のあふれる都会で、少し薄暗いからだろうか。

横断歩道を渡り、目的のビルに到着すると、適当に和食の店に入った。

暗がりの中、間接照明にうっすらと輝く瞳と、透き通るような肌が艶めかしい。


……って、変なこと考えそうになる前にメニューを決めることにした。


「ルーク、何でも好きなもの頼めよ。」

「え〜?何でもいいよ、ガイさんのお勧めで。」

「お勧めっていってもなぁ…じゃあ、適当にこの二人用のコースにするか。」

と張りきったものの、内心思いのほか高価なメニューに心臓が一瞬固まった。
でも、ルークの前で金額で動揺するなんてかっこ悪い真似は出来ない。
平常を装ってルークの胸元に目をやると、見慣れたものがぶら下がってる。

嬉しくなってニヤけてたら、ルークがどうして今から見る映画が見たいのか聞いてきた。
これが見たいって言うよりルークと見たいから。
そう素直に答えると、照れ隠しに不貞腐れるルークがヤバいほど可愛かった。

こりゃ、効果ありかな?

益々嬉しくなってルークの胸元のネックレスを見ていたら、ルークが怪訝に思ったのか照れ隠しの延長なのか、ムスッとした顔で言ってきた。

「…もー、何見てんの?」

何って、ルークの可愛い不貞腐れ顔だよ。
…と、思いながらも素直にネックレスの事を口に出した。

「うん、効果出てるかなって思って。」

「?効果?」

「魔除けの。」


魔除けっていうのが本当の意味での魔除けに捉えていたらしく、少し面食らった。
…ま、まあそんなちょっと天然なところも可愛いんだけどな…。

まだ虫は付いてないみたいだけど、これからも付かないように、俺も同じの買ったし。
…なあ、どこまでやったら気付いてくれるんだ?

ある意味報われない俺のこの努力は、いつまで続くのか。
まあ、いつまでだって続けてやるけどな。

上映の時間が近づき、俺たちは店を出た。