彼は前を見ずに歩いていたのか、前から来た人にぶつかって転んだらしい。なるほど、ぶつかり負けするほど華奢だ。
その時に落とした大きめのトートの中から、紙が何枚かバラけて落ちていた。彼はそれを必死にかき集めているようだ。
俺は考えるより先に、彼の元へ駆け寄っていた。
「大丈夫?」
「は、はい…!すみません…」
恥ずかしそうに下を向いたまま答え、必死で紙をかき集めている。
…ん?これって…
「…あれ?君、もしかしてデザイナーなの?」
その紙に描かれていたものは、トータルコーディネートされた男女だった。
じっくり見てみると、今まで見たことのないような、流行に捕われない斬新なスタイルばかりだ。
「そ、そうなんですけど…まだ、認めてもらえないんですよね…」
下を向いたままで答えた彼は、ちょっと残念そうにそう言った。
予感が確信に変わった。この声、やっぱり間違いない。
「…君、もしかしてさっき●▲ってアパレルメーカーにいなかった?」
「え!?ど、どうして知ってるんですか!?」
そう言って驚き、彼はこちらに顔を上げた。
大きな碧色の瞳は、そのまま俺の目を見つめたまま固まっているようだ。
何だか時が止まったような、そんな錯覚さえした。
朝、名古屋のカフェで偶然見かけた子が、今東京のこの場所で、俺と目を合わせている。
しかもデザイナーだって?
こんな偶然ってあるか?
これは…
運命。
これをそう呼ばずして、何が運命というのか。
「…君、今朝名古屋にいたよね?」
「えっ!!?そ、そうですけど…」
「俺も今日は出張で来てるんだ。俺、名古屋にあるアパレルメーカーで企画やってるこういうもんなんだけど」
そう言って、俺は名刺を渡した。
「…ガイラルディアさん?」
「ガイでいいよ。…あのさ、君さえよければ、俺の会社まで来ない?今、丁度デザイナー探してたんだよ。」
「えっ…!?ほ、本当ですか!?」
彼のデザインは、粗削りだが目を見張るものがある。
ちゃんと磨けば、絶対にトップデザイナーになれるはずだ。
…いや、俺がしてみせる。
何故か、根拠も無くそう思えた。
彼はルーク。今年芸大を卒業したばっかりだという。
こんないいタマゴが見つかるなんて、本当に今日はツイてる。
彼を誘った理由は、それだけだ。
それだけなんだ。
この時は、そう思っていた。いや、思い込もうとしていた。
あの時、確実に芽生えた想いを掻き消すかのように。
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今帰りの新幹線です〜。
いやー、今日もハードだった。今日は初めて横浜に行きました。といっても観光も何も出来ませんけどね、仕事だしね(T_T)
でも、今日偶然乗り換えの駅が浅草だったので浅草寺も初めて行きました。まあ、時間がなかったので賽銭投げてきただけですけど。そのくらいの特権は許して下さい(笑)
今回の現パロ妄想もまた微妙に続きそうな感じですが続きません(多分)
あと、毎度ガイが名古屋の人でアパレル関係なのは見逃して下さい。自分と一緒の方が妄想しやすくて描きやすいんです(^-^;