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情熱をウザく語りつくすガイルク熱の掃きだめ場。
それから3日。
心もとなしってこういうことなんだろうか。
すみません、短冊よりも時間軸が前になります。
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それからも何度かギンジさんに色々な場所へ連れていってもらった。
もちろん、いつもギンジさんの奢りだった。
申し訳ないとは思うものの、気前よく出してくれるし俺は払わなくていいっていうし、何より例えば飯やなんかは高級そうなところばっかで俺に支払い能力はない。
でも、俺的にそんなギンジさんべったりに甘えてるのが嫌で、申し訳なくて、この状況をどうしようかと思い悩んだ結果、何か贈り物をしようという結論にたどり着いた。
いや、確かに付き合ってるわけでもないのにプレゼントなんて誤解されるかもしれないけど、俺にはこれしか思い浮かばなかった。だがギンジさんは(多分)金持ちだから、欲しいものなんてもう全部持ってるんだろう。ちょっと恥ずかしいけど、悩んだ挙げ句ガイさんに相談することにした。
ルークの授業が終わったのを見計らってガイさんを引き止めた。
「プレゼント?ギンジに?」
「はい…何か欲しいものとか言ってたら教えてほしいんですけど…」
あーーーーなんだこれ。めっちゃテレるし…。
ただのプレゼントじゃねーか!そうは思ってもガイさんの前で赤面が隠せない。やべー、死ぬ。
顔を伏せていたらガイさんがしばらく無言でいたから、ちらっと上を向いてガイさんの反応をまった。
俺よりも随分目線が高い。正直首が辛い。どんだけ身長あるんだこの人…。
ギンジさんもそうだけど、イケメンってやつはなんでこう全てを持ってるんだ。
…うらやましいぜ。
目線が合うと、ガイさんはにっこり微笑みかけてくれた。…と思ったら、とんでもない言葉が出てきた。
「そんなのアッシュ君自身に決まってるだろ?」
「なっ…なんですかそれ!俺、真剣に聞いてるんですよ〜?」
またもや顔が熱くなっていくのが分かる。
あー、めっちゃハズかし。
「だったらギンジ本人に聞いてみなよ。その気持ち自体が嬉しいと思うよ。」
「はあ…」
そりゃ、そうかもしれないけど。俺の求めてる答えじゃないんだよな…。
ま、結局自分で考えろって事か。
ガイさんをルークと見送った後、俺は早速ギンジさんに電話した。
夜の10時。いつもこの時間に電話したことはないけど、大丈夫かな?
何度かのコール音の後に、ギンジさんが電話に出た。
「ん?どうした、アッシュ。さては俺が恋しくなったな〜?」
「え…えっと…」
ギンジさん、明らかにいつものテンションと違う。台詞は変わらないものの、何と言うか…酒でも飲んでるんだろうか。
とか思ってたら、電話から女の声でギンジさんを呼ぶ声がした。回りもザワついててなんだか煩い場所にいるようだ。
「ちょっと待っててな?」
そういうと階段を上る音が聞こえて、やっと受話器の向こうが静かになった。
「煩くてゴメンな。で、どうした?甘えたくなったか〜?」
「え、いや…いつもご馳走になったりしてるから、何かおかえししようと思って何がいいかガイさんに聞いたら直接聞いた方がいいって言われて。」
「ははは!そーか!ガイのやつ、流石俺のこと良く分かってるな〜!」
いつもの軽快なノリでそう言うと、ギンジさんはまた赤面を誘う一言で俺を口説く。
「そりゃ、おまえ自身だよ。……まあ、それは最終目標だけどな。その気持ちだけで嬉しいよ。ありがとうな。」
その後、何分か会話したあと電話を切った。
切った後、何だか変な…心の奥のほうが焼けるような感覚にみまわれた。
俺が気になったのは、電話の向こうの女の声。
別に、ただ飲み会してるだけかもしんねーのに、ただならぬ不安が心を蝕んでいくのが分かる。
俺はギンジさんと付き合ってるわけじゃない。でも。
あの人、俺の事好き…なんだよな?冗談なんかでこんなに良くしてくれたり、何より男に好きだとか言わねーよな?
一体何なんだ、この変なもやもやは。
これは…
そう、明らかに嫉妬だ。
この日を堺に、俺の中の感情が確実に変わっていった。
まだ梅雨の明けきらない鈍よりとした雲の下。
講義が終わって、いつものようにルークの家に向かった。
ルークに惚れてるって気持ちに気付かされて数週間。この空に負けないくらい心に靄のかかった俺。
晴れてアッシュ君と付き合うことになったギンジは俺とは違い、梅雨の湿気も吹き飛ぶような清々しい気分だろう。
なんて思いながら歩いていると、いつのまにかルークの家にたどり着いた。
「ガイさん!今日はちょっと早かったね。」
「ああ、雨降り出しそうだったから急いで来たよ。」
「そっか。あーでももう7時か。日が長くて全然気付かなかった。」
そう言いながら机を片付けるルークの様子を見ていると、見慣れないものが机の上に置いてある事に気が付いた。
「ん?ルーク…それ何?」
何、と言うかどう見ても草だった。
細長い形の背丈の高い雑草が一本、壁に立て掛けられている。
「これ?うん…今日七夕だから。」
「あ、もしかして笹の代わり?」
ルークは恥ずかしいのか正解、と言いながら頬を少し赤らめた。
笹が欲しいなら買ってきてやったものを。少年みたいな発想が何とも弄らしい。
「ま、子供だましだけど…願掛けでもしよっかなって思ってさ。」
「そっか〜。じゃあ俺も何か書こうかな。」
「ガイさんも願掛けするようなことあるの?」
就職も決まってもう安泰なのに、とルークは首を傾げたが、少ししてはっと気づいたように目を見開いた。
「あ…そっか。好きな子と付き合えるようにとか、そっち系?」
「あは、ばれたか。」
そうだよ。
俺のかける願いなんて一つしかない。
ルークを俺のモノにしたい。
ただ、それだけ。
「…と、見せかけて…」
俺はルークから一つ短冊をもらうと、ペンを滑らせた。
ルークが受験を成功するように、と。
「…よし、出来た。」
「なんだー、彼女と付き合えますようにとかじゃないんだ〜?つまんねーの!」
俺の書き上げた短冊を草にくくりながらルークは笑ってそう言った。
「ルークの部屋に俺の個人的な願いなんて書けるわけないだろ。」
引き裂かれた夫婦が、年に一度だけ赦された逢い引きの日。
そんな日にルークと過ごせるだけでうれしい…なんて、いつからこんなにもロマンチスト思考になったんだか。
授業が終わると、俺は一枚短冊をもらって帰った。
帰りのバスの中、揺られながら書いた願い。
『ルークに想いが通じますように』。
バスを降りると、あれだけ雲に覆われていた空が嘘のようにクリアな星空を映していた。
天の川を挟む二つの星が、俺の願いを聞き入れてくれたように、瞬いていた。
あれから何度かギンジさんと会った。
電話はもちろん毎日かかってきた。会うペースは週イチくらい。
しかし妙な違和感を感じる。
俺、告られたんだよな…?
その割にその話には一切触れて来ないし、返事を求めるような態度も全く感じない。
まるであの告白が嘘だったようだ。
そんなある日。
「さー、着いたぜ〜。最近来てなかったから楽しみだぜ♪」
「俺、小坊の時に学校で見学に来て以来ですよ…懐かしいな〜。」
目的地に到着すると、ギンジさんは深呼吸をしてキョロキョロと辺りを見渡した。ただでさえ派手で目立つギンジさんなのに、車がアルファロメオの赤だから更に目立つ。
実家はバイク屋らしいけど、どんだけ金持ちなんだろう。まだ学生なのに…。
到着した場所は、隣町にある航空自衛隊基地の隣の博物館だ。飛行機が何機も展示してある、飛行機マニアにはたまらない場所だ。
入館まえからウキウキしてるギンジさんは、本当に嬉しそうで、そーとー飛行機が好きなんだなと分かる。
中に入り飛行機の歴史やら色々見て、ちょっと疲れたから飲み物買って座って休憩することにした。
「ギンジさんって本当に飛行機好きなんですね。」
「まあな〜。目ぇ輝かせて子供みたいでカワイイって思ってただろ?」
そう言ってニコッと笑うギンジさんに、頬が熱くなるのを感じた。
「ま、まあ…」
…いつも心の中を読まれて、図星でカッコ悪い。
まあ、ちょっと都合良いように解釈されてる感じはするけど。
「俺さ、パイロットになるのが夢だったんだ。あ、ガイには内緒だぞ?夢挫折したなんて知れたらカッコ悪ぃからな。」
「へー、そうだったんですか。ギンジさんがパイロットって似合うなぁ。」
「だろだろ〜?俺ってば何でもサマになって罪だよな〜?」
ギンジさんは自信たっぷりに言うけど、その通りだから全く抵抗を感じない。
「だからさー、俺、自衛隊行こうかって思ってんだよな。アクロバット飛行とかやりてーし。」
「え…自衛隊?」
その言葉を聞いた時、何故か心臓がつきん、と痛んだ。
「そーそー。パイロットはパイロットだし。夢追い掛けるのもいいかなって思うんだよな。俺、お前がプロ目指して頑張ってるのめちゃカッコイイって思うし。そんなとこに益々惚れたし。」
「…!あ、そ、そうなんですか…。」
久々に聞いた愛の言葉ってやつにヤバいくらいに顔が紅潮して、ハズかしくて顔を伏せた。
それから夜、飯食って家に帰り、部屋に入ってベッドに横たわった。
ギンジさんと遊びに行くのは嫌いじゃないし、ギンジさんの事も嫌いじゃないし。でも、なかなか俺の本心が見えてこずに、ずっと心の中でモヤモヤしてる感じだ。
ギンジさんは俺と居るときも色んな人から電話がかかってくる。相手は女が多い。モテるくせに俺に惚れてる意味が益々分からない。もしかして遊ばれてるんじゃないかとさえ思う。
それにしてもさっき、ギンジさんが自衛官になるって言った時に妙な感じになったのはなんだろう?
もう6月だってのに、まだ梅雨入り宣言が出されない空が雲を広げてその宣言を待ち構えているようだ。
何かひとつ決定打があれば、俺だって答えを出せるのに。
性 別 | 女性 |
誕生日 | 12月21日 |
血液型 | AB型 |