さくっと前のブログ消去いたしました。
サイトのほうはリンクつなぎなおしてるので、大丈夫かと。
改めましてこのブログよろしくお願いしまっす
そんな感じで
人魚にまつわる話三話
前のブログで書いてた一番最後です。
この続きはまたこのブログで書いていきます。
いつになるかはわかりませんが
( ´∀`)
ではどうぞ
久々!
人魚にまつわる話3話です
BLはファンタジー
お忘れなきよう。
女性が出てきます
人が死ぬグロテスクな描写があります
気をつけてください
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わだかまりなく、それは口を開けた。重く感じられたのはおそらく、錯覚だ。それ自体は鉄でありながら造りはそう丈夫でなく、いわば単なる入り口にすぎなかった。
鼻を突くのは嗅いだことのない酸い空気。あたかも水中で水を飲み溺れてしまった最中に感じる焦燥が、空気に混じって霧散しているよう。ここは、肺で息をする生物にとって、適していない場所だ。
しかし、だからこそ進まなければ意味はない。不自然な自然の中に見つけた、異常。曾祖母の生死の不可解とを鑑みれば、先に何かがあることは明確だ。
「私が」
ぎしり。剥がした床板を踏み、部下が進言する。次いでもう一人もまた、頭を垂れた。
入り口から見える梯子は、地下に向かい伸びている。それと部下とを交互に見て、私は思案した。
いや、そんなもの必要ない。この度の強行は私の我が儘である。危険に踏みいる第一歩は私でなければならない。
「ここで待っていろ。私が指示をするまで、会話一つも許さない」
「できません!この先は、今までとは違います」
「これは命令だ」
「でしたら、友として行動させていただきます」
「今は公務中だ」
「そのご公務を抜け出してきているではありませんか!」
二人の語気は荒くなる。私は強く嘆息し、腰に差した短剣を引き抜いた。
「だったら、これを突きつけて脅す。私を、先に行かせろ」
「!」
「な、んてことを…!」
「私を犯罪者にしたくなければ、公務の中の命令として大人しくしているんだな」
とうとう閉口した部下を捨て置き、私は短剣を床板に刺して地下に向かった。会話をしているうちにも慣れるかと思ったが、なかなかそうにもいかない。
自身の関節がきしりと鳴き、鉄より先に錆びてしまったかと勘違いした。あまりに潮の香りが強い。
だが、呼気になど意識をやる余裕は地下に降り立ってすぐ、消失した。ぐるり、と眼球が転がって、あぁ貧血か、と場違いな思考をしていた。
違う。貧血ではない。あまりに衝撃的な光景に、心を破壊されたのだ。
小さな部屋だ。木製の柱に、薄く青に染められたタイルが壁の三面に貼り付けられている。床は石畳で、寒々としていた。
中央にはやはり木製のテーブル。五、六人で食卓を囲めそうな広さを有し、とんと構えている。
そ、うそぼ、か…
声にはならなかった。したつもりだが、唇が戦慄いたのみで音としては出来損なった。
同時に、体内にある水分が生きるために流れる順序を無視してかき回される、そんな強い不快感を覚えた。それは私から直立の力を奪い、尻餅をついてしまうほどだった。
ぞわりぞわりと体の芯が揺さぶられる。玉の汗がつぷりつぷりと四肢から漏れる。
目の前に広がる、異状。
一つは、テーブルに突っ伏して眠っている曾祖母。
そしてもう一つは、私の体内をいじり楽しんでいる、生命体の存在。
三面をタイルで覆われ、あとの一面は水槽が置かれていた。空色の水が蓄えられ、ただそこにある。
その中に、いる。
私と同じ上半身、私と違う下半身を持つ何か。見たことはあるがそれは確か空想の中を泳いでいたはずだ。清く愛らしく、美しさと神秘を持った姿。
違う。ぜんぜん、違う。
水にたゆたうそれは、明らかに空想のそれと同じであって違うものだった。
夢に触れれば好奇心に溢れるものではないのか。幻に見(まみ)えれば心は躍るものではないのか。
「──」
私は叫んでいた。
涙を流し、力の入らぬ体で上ることのできない梯子にしがみつき、のどを散らして叫んでいた。
それは
狂気の塊だった。
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