その時、パッ!とT雄がこっちに振り向いた。
俺たちは瞬間凍りつく。
T雄が口紅を塗っていた。と思ったが、どうも変だ。
T雄が手に持っている物は、血まみれのニワトリだったからだ。
そしてT雄のまわりにひらひら舞う物。まさしくニワトリの羽だった。
顔を見られた!と思ったが、とにかく逃げた。
教室まで今までに無い走りをした。
すぐさま布団に入ったが、真夏にガタガタふるえる。止まらない。
心臓がバクバク破裂しそうだった。
その時・・・。
教室のドアが開く音がした。
「やっぱりばれていたんだ!」と思ったが、怖くて怖くて、寝た振りするしかなかった。Mもじっとしているようだった。
他の部員のいびきや歯軋りが1つ1つよく聞こえるほど神経が高ぶっていた。
T雄はじっとしている。動く気配は、無い。
「このまま出て行ってくれー」俺は祈った。
入り口からごそごそ音がしてきた。「T雄が動き出したんだ!」
俺は目をぎゅっとつむり、寝たふりをする。
動いちゃいけない。そんな気がしたからだ。
T雄は近づいてくる。「・・・・・」何かつぶやいている。
でも俺には聞こえない。俺のほうがMより入り口に近い。
やべーよ・・・こわい・・・。耳の中は自分の鼓動いっぱいだった。
T雄が隣の奴の所まできた。ごそごそ。「・・・ちがう・・・」
T雄の声がはっきり聞こえた。何が違うんだ!?やっぱり顔を見られたのか!?
そして俺の布団の中に手が入ってきた。
T雄の手が何かを探している。そして、俺の左胸をさわって
「君だね・・・」