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地下鉄で

夏のある日、俺は納期に追われて先輩と二人で残業してた。
突然先輩が「なんか変な声がしない?」と言い出した。
「そうか?俺には聞こえないけど」と答えると、「いや、するって。女のすすり泣くような…」と答える。
俺はキーボードを打つ手をとめ、耳を澄ました。
そんな声は聞こえなかったが、かわりにゴロゴロと遠くで音がした。
…雷だ。
雷は怖い。
停電になったら打ち込んだデータは消えてしまうし、マザーボードがやられる危険性もある。
仕事のめどはいまいちつかなかったが、仕事を切り上げ、帰ることにした。
先輩は一人で帰るのを怖がったが、あいにく帰る方向は逆方向だ。
会社の前で別れ、俺は栄駅から名城線に乗った。
今日も疲れたな、とため息をついていると、ぽつぽつと音がする。
「雨かよ…傘持ってきてねーや」
俺は舌打ちし、俺が降りる日比野からはファミリーマートとローソンのどちらが近かったか考えた。
そうしているうちに、金山に着いた。夜は新瑞橋行きのみになってしまうので乗り換えなければならない。
俺はホームに降りた。
そこでふと気が付いた。
地下鉄で雨?

真っ赤な小人

5年程前、帰省のため、福岡行きの新幹線に乗っていた。
その客車は、かなり空いていた。
新横浜で、一人のおばさんが乗り込み、通路向こうの席に座った。
おばさんは、隣の女性にしきりに何か、訴えはじめた。様子が明らかに変だ。
おばさんは、寝巻きのまま飛出して来たような服装でピンクの汚れたスリッパを履いている。
話のほうも支離滅裂で、なんとか聞き取れたのは、
「京都のお寺に、逃げ込む」「夜、眠れない」
「眠ると、真っ赤な小人が大勢やってきて、家をガタガタ揺らすのだ」ということ。
話すうちに、恐怖がよみがえり、半狂乱になっていく。
私と、隣の女性がなんとか落ち着かせた。
安心したのか、おばさんは眠気を訴え始めた。
京都に着いたら起こしてくれ、と何度も懇願しながらおばさんは、眠りに着いた。
しばらくして、おばさんが、うなされ始めた。うわ言を繰り返す。
「こわい やめて かんべんして ゆらさないで…」
その頃には、恐怖は完全に、我々にも感染していた。
凍りついた我々を乗せて新幹線は、西へと、疾走していく…。

鉄橋の下

小学校のころ、よく川で釣りをしていた。
電車の鉄橋の下でいつも釣っていた。
でかい鯉を釣り上げて、友達とはしゃいでたら、上を電車が通過していった・・・、そのとき、なにかヘンな音が聞こえた。
なんの音だろうな?と思っていると、眼前の川に何かが落ちて水しぶきを上げた。その波紋の中央には、子供の靴があった。他にも何かがいくつか落ちてきたようで、川面にいくつかの波紋ができていた。
上では、キキキーっと音を出して、電車がすいぶんと向こうで止まっていた。
俺は嫌な予感を感じながらも、どうしても水面にうかぶいくつかの物体を確認せずにはいられなかった。
予感は当たっていた、その物体はまぎれもなく人間の一部だった。
後でわかったことだが、その子は俺の学校の一つ下の学年の少年だった。

駅のトイレ

数年前の冬、夜11時ごろ、飲み会のため友達と駅で待ち合わせしていて私以外まだ誰も来てなかった。
待っているうちにトイレにいきたくなり仕方なく一人でトイレに行った。
男子トイレを過ぎて女子トイレに入る。個室に入り、ドアを閉めた、次の瞬間
「ダン!!!!」
という音と共にドアの上の隙間から手が2本出ていた!
あまりにもビックリしすぎて声も出なかった。一度は顔をそむけたがもう一度ドアを見るとそこにはもう何もなかった。
ずーっとここに居る訳にもいかないので、覚悟をきめて恐る恐るドアを開けた。
が、そこには誰もいなかったし何もなかった。
幽霊なのか人間かはわからないけど、あたりに人は誰もいなかったのだよ。
もう夜に駅のトイレは行かないと決めている。あんまりでスマソ。

電車

京都までJR湖西線新快速に乗ったその日はうまく座席が空いていて出発してまもなくうとうとしだした。ずっと目をつぶっていたがアナウンスからして大津駅にさしかかった頃、両膝に何かがのしかかった。
大きさとそのちからからして丁度こどもが手で体重をかけたと同じなので電車が混んで来て子供が自分の股の間にはいったようになったのかとじゃけんに膝を動かさずにしばらくそのままにしていた。
もうすぐ京都駅なので目をあけて確かめようとしたらなんと自分の前には誰もいない。しかし膝には誰かが触っている感触が確かにある。
思わず氷ついた一瞬であった。
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