とあるライブ主催団体の企画っぽいライブに出演するため、僕はライブハウスに行ったんですよ。

まあ、何故か機材持ってなかったんですけどw

で、オープン前、ようするにリハの時間にライブハウス入りして。




そんなわけで地下に向かう階段を下ってライブハウスに入ったんですが、なーんかハコの中がヤバい雰囲気なんですね。

なんと言いますか、アラブ人のグループがいくつかいて、すごく険悪な雰囲気。

恐らく彼らは出演者とかじゃなくて、ハコでいけないクスリの闇取引をしてる連中なんじゃないか。そんな予感がしましたね。




そしたら、突然騒がしくなって、唐突に響く炸裂音。

何事か、と思いながら楽屋に入って行くと、そこで人が倒れていて。しかもそれが、スクリーモバンドを組んでいるサークルの後輩で。恐らく彼らもライブの出演者だったんでしょうね。

そしてショックのあまり呆然としていると、回りのアラブ人達が手に手にカラシニコフを持っているのに気づきました。

彼ら曰く、『アイツらが彼を撃った』と。アラブ人達が指し示す方、楽屋と客席を繋ぐ廊下の先を見てみると、他の銃持ったアラブ人集団が。




気付くと、もうすでにアラブ人同士の銃撃戦が始まっていました。

アイツらは敵だ、これはヤバい。そう思った僕は考えるよりも早く、その場にあった銃を手に取りました。恐らく、撃たれて戦闘不能になったアラブ人が持っていたものでしょうね。

僕は銃(ルーマニア製のカラシニコフコピー"AIMS")を手に取り、ボルトをコッキングして弾薬を装填し、そしてそこら辺に落ちている弾装を3本ほど乱雑にかき集めて腹部のカンガルーポーチに仕舞いました。

なんで普通の服にカンガルーポーチが付いてたのかはわかりませんがw

そして僕は楽屋から飛び出し、

素早く壁際に張り付いて膝立ちし、

廊下の先にいる二人の敵の内、左側に銃を向けました。

腕に伝わる、ずっしりとした重量感。しかし、逆にそれが余分なブレを取り除き、カラシニコフ特有の狙いにくさを感じつつもしっかりと敵を捉えました。

近代的な銃器よりも少し前方寄りに設けられた照門の、その小さな窪みに照星が顔を覗かせ、その直線上には"目標"の胸部がしっかりと刻まれます。

そして、

銃声。

想像よりずっと軽かった引き金を無意識に2回引き、連続で肩に衝撃を受けました。

しかし目はしっかりと照準を捉え続けていて、その先でゆっくりと崩れ落ちてゆく目標。

やった!

そう思ったのも束の間、もう一人の敵から火花が散ったかと思うと曳光弾の航跡が視界を掠めます。

狙われている!と咄嗟に判断した僕は素早く楽屋と反対側の、ちょっとした部屋ほどのスペースがある窪みに身を滑り込ませました。

共に戦っていた仲間が依然として廊下のど真ん中でまごついていますが、どうにか鉛弾の餌食にならずにすんでいます。自分を狙った弾も外れたし、敵はあまり射撃の腕は良くないみたいですね。




しかし、僕はあることに気付きました。

廊下の射撃が止んでいる。

不審に思い窪みから顔を出すと、そこには倒れたアラブ人しか見当たりません。僕に鉛弾を叩き込もうとしたアラブ人がいないのです。

僕はそこで、窪みの中に設けられたドアを目撃します。そして思い出しました。

ドア何枚かで隔てられているものの、この窪みと客席は繋がっている。

そう、敵は恐らくドアを通って迂回してくるつもりだと気付きました。

そう思った瞬間、僕は咄嗟にライフルのセレクターを"フルオート"にあわせました。

そして、いつ開けられるとも知らないドアに向けて、激しい連射を何回も叩き込みます。

無意識に僕は4発ずつの連射を行っていました。それ以上の連射をしようとすると、まるで銃に巻き込まれてしまうかのように感じてしまって指が離れてしまいます。4連射以上はとても制御できない、そう体が判断したのでしょう。

木製のドアくらいなら軽く突き抜ける7.62mm弾が次々と狙ったドアに吸い込まれて行きます。




果たしてドア側に回り込もうとした敵は死んだのか。それとも、機会を伺っているのか。

そして、廊下側からはもう誰も前進してこないのか。

そんな疑問が、恐怖と仲良く肩を組ながら脳内を駆け巡ります。

そう、敵の弾が近くを掠めたその時から、すっかり恐怖が植え付けられてしまっていたのです。

これが、実戦か。そう思いながら血の気が引いて行く思いでした。

エアガンでなら素早いサイティングには自信があるし、サバゲーでだってそんなすぐ死んだりしない。イザって時には、戦って敵を皆殺しにしてやるさ。

そんな強がり、実戦の洗礼の前にはもう通用しませんでした。

なんでオレはアラブ人の戦争になんか加わってんだ?後輩の敵討ちなんかじゃなくて、ただ銃が撃ちたかっただけなんじゃないか?これ以上、戦う必要があるのか?

その上、この日本で何の躊躇いなく人に向けてアサルトライフルをぶっ放すような連中だ。オレよりも実戦慣れも射撃慣れもしてるだろう。本物の軍人ほどじゃないだろうが、オレよりは"殺り慣れている"だろう。最初こそ上手くいったが、こっから先はジリ貧なのは目に見えてる。

脳内にネガティブな文句が並びます。

マガジンに弾はまだある。薬室にも装填されている。

室内で咄嗟の遭遇戦になった場合、フルオートは得策じゃない。万が一連射を外したら再び姿勢を立て直して狙うのは難しい。ならばセミオートにしよう。

ライフルのセレクターをセミオート、つまり単発に合わせながら、僕は決断しました。

裏口から逃げよう。




セレクターが切り替えられるのを合図に、僕は動き出しました。

くるりと踵を返し、廊下を客席と反対側へ駆けます。

ドアを開いては銃口を巡らせて安全を確認し、クリア、と呟きながら裏口に迫ります。

こんな極限状態で、ここまで冷静にクリアリング出来るんだからオレはなかなかセンスがあるな。裏口に迫るに従って、そんなことまで考える余裕が生まれてきました。

そして。

長い階段をかけ登って、光が射し込み、

僕は脱出に成功しました。




戦場からの脱出に成功した僕は、とりあえず銃を隠すことにしました。

まず暴発が怖いのでセレクターをかけ、それから折り畳み式のストックを畳んでコンパクトにしました。途端に80cmほどもある銃が60cm程度まで縮みます。

そして小さくなった銃をシャツの下に押し込み、とりあえず時間稼ぎのため辺りを散歩することにしました。

もちろん敵の襲撃に備えて警戒は解きませんが、大分思考も落ち着いてきました。

あー、人撃っちまったなあ。

そう思ったものの大した感慨もなく。まるでゲームのような、現実味のない浮遊感が頭を支配します。




しばらく歩いて、僕はライブハウスの裏口に戻ってきました。

ライブあるし、戻んなきゃなーなんて考えながら、気付いたら裏口の目の前にいて。この頃になると、大分おかしくなってたんでしょうね。

僕はシャツの下からライフルを引っ張り出すとストックを展開し、セレクターをセーフティーからセミオートへ勢い良く合わせ、そして新しいマガジンに入れ換えて、

勢い良く裏口に飛び込みました。

覚悟を決めろ、俺達のライブを取り戻せ。

が。

中には普段と変わらない、オープン後、スタート前の騒がしいライブハウスの光景が広がっていました。

サークルの連中が酒を飲みながら呑気にスタートを待っていて、

無駄に耳障りなSEがけたたましく鳴り響いた、

そんな見慣れた光景。

僕は呆然としながら友人たちの側に行き、オレがいない間に警察でも来て処理したんだろうな、なんて現実味のない理屈で無理やり自分を納得させます。

アラブ人もいないし、あれは現実じゃなかったんだろう、なんてことまで思ったものの、手にはその動かぬ証拠たるカラシニコフが。

僕はライフルからマガジンを引き抜き、ボルトを引いて装填された弾を取り出し、そしてストックを畳んで武装解除しました。

あれは何だったんだろう。

突然絡んできたラッパーっぽいDQNを『アラブ人の方が百倍怖いわwww』と言いつつ叩きのめしながら、僕はそんなことを考えるのでした。






っていう夢を見たんだ。


ノシ