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2019/9/28 Sat 09:15
アイナナについてと、少し私の話(ネタバレあり)

今回の更新分(四部14、15章)読みました。読んで感じたことを、少し話させてください。

私は、アイドリッシュセブンを読み始めた当初からずっと、感じていたことがあります。それは、アイドリッシュセブンというアプリに登場する人々は、皆必ず何かしらの葛藤を抱えながら生きており、その葛藤を抱えながら皆で困難を乗り越え、皆それぞれの幸せのために尽力する物語がアイドリッシュセブンであるということです。

14章までで今回焦点となったのは、セトのナギに対する兄弟葛藤であると私は感じました。
セトにとってナギは自分より優れた弟であるとセトは感じでおり、一国を背負う第一王子として、それを利用する一方、自分より優れた存在が、王子という絶対的である存在にいていいはずがない。私が優れていなければならず、それに伴い失敗することや、失態をあらわにすることは許されない、と感じていると私は思いました。そのため、セトはナギを家族として、兄弟として愛する一方で、一番の敵かのような振る舞いをしてしまいます。

そしてもう一人、完璧な弟に兄弟葛藤を抱く人物がアイドリッシュセブンの登場人物にはいます。
それが、和泉三月です。
三月は、自分よりルックスも、頭脳も秀でた弟に対して劣等感を抱いており、弟を蔑ろにしていたことがありました。

この二人について、以前もどこかしらで述べさせていただいたのですが、今回も話させてください。

この二人の大きな違いは、立場でした。

三月は、一般家庭で両親に愛されてすくすくと育ちました。
一方で、セトは一国の王子です。
その地位は、セト王子を苦しませ、ねじ曲がったプライドを築いてしまった。失敗してはいけない。それは国の名誉の失墜につながることだ。そのプレッシャーは計り知れないものです。だからこそ、セトは挑戦できなかった。それは三月が何度も、何度も行ったものです。三月はたくさんのオーディションを受け、何度も失敗してきました。そして幾度の失敗を乗り越え、やっと夢であるゼロのようなアイドルに一歩近づくことができました。デビューした三月は、多くの困難を乗り越えながらも、「自分が好きでいられる自分」になる努力を、周囲に支えられながら行ってきました。そうして、少しづつ彼は自分を好きになることができ、それと同時に兄弟葛藤が無くなりはせずとも、薄れていったように、私は感じています。
だからこそ、セトの気持ちを唯一共有できている存在である三月が、今回キーマンとなり、IDOLiSH7をゼロを超えるアイドルとしての道へ導くことができました。

私には姉がいます。活発でコミュニケーション能力が高く、周囲を巻き込み魅力があり、容姿も優れた姉がいます。
一方、私は引っ込み思案で、一人で遊ぶことを好み、姉と比較されては容姿が劣っていると言われ続けてきました。
私は、多くの点で姉より劣っており、姉は周囲から必要とされている一方で私は誰からも必要とされず、その場から居なくなれば話題にも上がらぬ存在なのだと思っていました。
そう思わせてきたのは、周囲の何気ない「あなたは〇〇だけど、あなたの姉は〇〇だよね」「姉は〇〇なのに、あなたは違うね」という言葉の数々でした。だから私は優れた姉が自慢で、大好きである一方、自分の存在を脅かす存在でした。
今では多くの友人に恵まれ、姉と活動するフィールドが離れ、比較されることなく、私自身に目を向けてくれる人々のおかげで、すこしましになってきましたが、今でも時々、姉を好意的に評価し、比較する言葉などに苛立つこともあります。
なので、私は三月に親近感を覚え、アイドリッシュセブンの中で一番好きなキャラクターとなっています。

その三月が、今回自分の兄弟葛藤の対象である一織を目の前に、自身の葛藤や劣等感について発言する姿は、本当に、本当に印象的なシーンでした。
三月の言及は、以前の三月であればできなかったことでした。数々の挫折を味わい、劣等感を味わい、それを乗り越え、多くの人に愛され、それをきちんと受け止めて自覚している現在の彼だからこそ、発言できたものでした。私は、その三月の勇気や決意に感銘を受けました。彼の命が宿った言葉だからこそ、セトを動かせたのだと思っています。
アイドリッシュセブンの中で度々語られる訴求力というものが、あの瞬間三月の中にあったのです。実感を伴った、感情を乗せた言葉にそれは宿るのです。

その後のシーンで、再び訴求力について触れられるシーンがありました。
生放送用のコメントをメンバー全員が行う直前のシーンです。はじめ、順番通りにコメントしていき、ナギがコメントした後、最後に陸が締める予定でした。その時、三月がナギの後にコメントし、締めたいと申し出たのです。しかし、その時一織はそれを阻止しました。なぜなら彼の中には、ナギの王子であるという発表の後に陸が話すことでIDOLiSH7という名が皆の心に刻まれるのであって、三月が話すことでそれはなされず三月が登場する番組を数本見て飽きられる程度であると考えたからです。
本当に酷な話ですよね。劣等感について赤裸々に話した後に、当の本人である弟にまた優と劣の“劣”のハンコを押されるのですから。
ただ、私はその一織の考えは正しいと感じました。
たしかに三月はナギの後で、きちんとフォローを行い、綺麗にまとめ上げることができるでしょう。そこに感情は乗っていますが、三月はバラエティで活躍する最中で、感情よりも進行を優先する術を身につけてしまいました。その術は、普段はIDOLiSH7に欠かせないものですが、今回必要なのは訴求力でした。生々しいまでの感情をぶつけ、思いのまま話す。番組が進む中、限られた時間の中で順序立ててコメントを行う術は、それを邪魔するものでしかないのです。
一方七瀬陸は、幼少期から体が弱く、自分では何もできない、ひとりぼっちの存在でした。唯一の拠り所であった兄は自分を見捨て、家を出た。そしてみんなの前でアイドルをし、愛される存在となった兄を見た陸は、より兄への不信感を募らせ、いつか兄に真意を問おうとアイドルを目指します。その道の最中、兄と対峙することがありアイドル活動に関して止めるように言われることなど多々ありました。しかし、活動していくなかで、陸は次第に、自分の歌を聞いてほしい、自分を認めて欲しい。自分の力強い仲間とともに、もっともっと戦って、上へ行きたいと願うようになりました。そして、兄にライバルとして、戦うことを宣言するのです。
彼にとっての幸せについての話でも、「みんなで」何かをする事ばかり上がります。彼の中にはいつでもIDOLiSH7が生きているのです。何にもなくなっても、IDOLiSH7とともに歌っていたいのです。陸は、自分の感情に誠実です。IDOLiSH7を認めてもらいたいという感情、IDOLiSH7が全員集まった幸福感、それらを感情のままに、自分の気持ちを表す言葉を丁寧に選び、時に自己中心的に表現できるのは、陸だけなのです。
これが、陸の訴求力の正体ではないかと私は思っています。様々な人に愛され、正直に生きてきた彼だからこそ、できる技なのです。何かを過度に期待されたり、虐げれらてこなかった幼少期を過ごせたからだと思っています。彼の弱さが、強さにつながったような、不思議な感覚にさえ陥ってしまいます。

一織は、それら全てを見越して、最終的に、IDOLiSH7にとって、IDOLiSH7のメンバー全員にとって最善の策を常に講じてきました。
それは今回に限らず、今までもこれからもずっとそうあり続けるでしょう。
ただ、以前からその策には危うさがありました。先の先を見据える彼の考え方は、時に周囲に混乱をもたらすのです。
今回、三月の提案を却下する際、陸が少しムキになって反論している様にそれが現れていました。今後の展開も楽しみではありますが、今は一織のコントロールと、IDOLiSH7というグループの持つ能動性がどうなっていくのか、メンバーに受け入れられるのか、少し心配な気持ちもあります。

ただ一つ言えるのは、ここまで感情を揺さぶられる物語は時に読み進めるのがしんどくなることもありますが、とても面白く、今後も楽しみであるということだけです。
今後の更新も楽しみですね。



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