えー、お久しぶりです。
うん、まぁ、あれだ。
皆、こうなることなんて全力で予想ついてたよね!(殴)
シルイエが不足して呼吸困難になりかけたので、のったり戻ってきました。
まぁ、がっつりジャンル浮気とかもしてたりしたんだけど。
基本的には仕事が忙しくてって感じです。
愚痴とかだらだら書いても自分も楽しくないので以下からシルイエ文。
浪人侍と狛犬で江戸パロだぜ!
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〜遊びましょ、遊びましょ、
〜朧月夜に沈丁花
〜ぱちりと芒がはぜたなら、
〜そこは現の水鏡
くすり、誰かが笑う声で目が覚めた。
がばりと飛び起き刀片手に目を四方に動かす。
辺りを一通り見渡して、此処がどうやら神社の境内であることを悟った。
そういえば追っ手から逃げてる途中だった気がする。
(逃げてる最中に寝るとは、我ながら信じられん)
思い返せばここ一週間程まともに寝た記憶が無い。
そのせいか、起きたばかりの頭はズキズキと酷く痛んだ。
あまりの痛さに低く呻きながら、もと居た石段に全体重を預ける。
まだ日も沈みきっていないというのに鳥の声一つしない境内は心底不気味だったが、今はその薄気味悪さを推しても音がしないことの方がありがたい。
(………俺は、生き延びたのか?)
ぼんやり、頭の隅で言葉を並べて文を作るがそれを考えるのは酷く億劫だった。
からん、
唐突に、風も無いのに境内の鐘が鳴る。
音に身構えようとする体を無理矢理抑えて、固く眼を閉じる。
人の気配なんて感じなかった。
いや、寧ろ、
(人、じゃない)
思わず安堵の溜息を漏らして気付く。
(俺は、妖より人の方が怖いのか)
その事実が無性に可笑しく、口元がゆるく歪む。
人を斬ることを躊躇わなくなったのは、何時からだ。
死んだ人間を怖がらなくなったのは、何時からだ。
気付けば刀の柄は染み付いた血で黒ずみ、それに伴ってもともと赤かったこの髪も更に朱を色濃くするようになった気がする。
「ねぇ、何が可笑しいんですか?」
幼い少女の様な声。
相手をしてはいけない、とさらに目を固く閉じる。
「…………無視なんて酷いなぁ、折角助けてあげたのに」
(…………助けた?)
「もしかして忘れちゃいました?自分が斬られたこと」
「…………何だと?」
「あ、ようやく喋ってくれた」
楽しそうに笑う少女。
同時に脳裏に蘇る光景。
大きく振り下ろされた切っ先が自分の皮膚の下を深々とえぐっていった記憶。
(何で忘れていたんだ)
半ば呆然としながら胸中で呟く。
脳が正常に機能してないということか。
「…………俺は、死んだのか?」
「生きてますよ、かろうじて」
助けたって言ってるじゃないですか、と少女はまた笑う。
その笑い声に妙に腹がたって、無愛想な声でぼそり反論する。
「妖は人を助けない。用があるから起こしただけだろ」
ぴたりと反応が消えたので恐る恐る目を開けて声がした方を見る。
其処にはそれはそれは美しい金の髪を持った少女が緑の目を丸く見開いていて、そしてその位置が存外近いことに此方もほぼ真似る様に目を見開く。
「……別に間違っていないだろ」
強気な口調と裏腹に、身構えながら少女とゆっくり距離を取る。
意味が無いことは分かっているがここまで近いと落ちつかない。
「あるいは、助けた事を代償に取引でもしようってところか?」
びぃどろの玉の様にくりくりとしていた少女の目は、次第にすぅと猫の様に細くなる。
言葉が終わると、境内が沈黙に包まれた。
「………まぁ、そういうことでもいいや。貴方に用があったのも事実だし」
正しくは貴方の腰に下がったその刀にね。
「……欲しけりゃやる、それでいいか」
面倒臭そうに答えれば、少女は眉をしかめて首を振る。
「否、血生臭すぎて僕じゃ触れないんですよ」
彼女が無造作に伸ばした指の先が刀の柄をかすると同時に、じゅっと肉の焦げる音がした。
ほらね、とこともなさげに少女は小さな火傷を負った自分の指を撫でる。
「じゃあどうするんだ」
少女はほんの一瞬悩む素振りを見せて、口から言葉をぽろりと零した。
「それを使って貴方がちょちょいっと鬼を倒してくれれば良いんですけれど」
「…………あ?」
此方の口からも間の抜けた声が零れる。
「鬼ですよ鬼。鬼退治。」
「……………意味が分からん」
「貴方じゃなくてもその刀があれば倒せるハズなんですけど、他人が使うより持ち主が使った方が使いやすいと思いますし断られたら生き返らせなかった事にしちゃえば良いかなぁなんて」
僕の言ってる意味分かります?
少女はとても良い笑顔で問い掛ける。
もちろん理解などは出来る筈も無かったが、詳しい意味を問うにも何から問えばいいのか、そんな途方も無い話であった。
「………その、鬼は何処に居るんだ。人間が行けるところにいるのか?」
「それは案内しますよ。大丈夫、出来ることしか頼みませんから」
少女は楽しそうに笑った。