話題:忘れられない人

発作のように思い出す、そんなひとがいる。実ることのない恋だから一方的におわらせた。まだまだ未熟な20歳前後のあたしには実らない恋を持続させる余裕もなければ、意義を見いだすこともできなかった。今だって、そんな恋を優先させるようなことはできないけれど、うまく持続させることはできるような気がする。何段かは大人の階段を上ったのかもしれない、そんな気がした。

時間にすれば、1年も満たない恋なのに離れてから6年余りを経てもなお覚えているのは、すきだからという安直な理由ばかりではなく、美化された記憶は改ざんのようでもあり、安定剤のように拠りどころにしていたり、すきという気持ちが伝わり、すきだったという気持ちが残像のようにきえることがなくリフレインのように鳴り響いているから。どのくらい好かれていたかに比例する記憶の量。いつまでも残っている記憶が意味するのは、想いの質量。

会いに行きたいと思うこともあった数年だけれど、行動を起こすことはなかった。今さらという思いと彼にわるいというもっともな理由。理性とモラルが訴える、過去の恋だよと。何度も胸にしまっても彼が風俗や夜遊びをするたびに開けてしまう。それは言い訳にすぎず、もっと早く会いに行っていればよかったと後悔する。友人に相談すれば、正論を言うならば会いに行くのはやめたほうがいいけれど、友人として言うのなら後悔するくらいならどんなことが起ころうと会いに行くべきだと。

今年で27歳になるのにこんな気持ちをもやもやと抱えているくらいなら気持ちに終止符を打ちに行くべきなのかもしれない。あの日あのときのあたしたちに。前に進まないといけない。過去の恋も今の恋も。

あたしたちはまだ独身なんだよと友人が言った。まだのところを強調して。今の彼との将来があるのかないのかも見極めないといけないし、選択していかないといけない。泣いても笑っても人生は一度きりで、どう生きたいかはなんとなくで進むこともなく、決断していくことでしか方向性を決められない。ねえ、あたしたちの未来はどうなってるの?どうなるの?相手任せにしてはいけない。時間は有限、戻ることはない。先へしか進まない。