SPEAK/24

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2022/1/23 14:37 +Sun+
傲慢と善良/辻村深月

30代を半ばを過ぎた男女の恋愛が軸にあるのに、恋愛要素をあまり感じなくて、人の(とくに女の)内面にざわざわさせられる。そして「こういう女、いるよね」と色んな角度から思わされる。それは自分の中にもおそらくある要素であることに、恐怖すら覚える。

39歳の架と34歳の真実は婚活アプリで知り合ってから数年付き合い、架は彼女と結婚することにようやく決めた。そのきっかけは真実が地元である群馬時代に知り合った男からのストーカー被害に遭っていると訴えたことだった。
そして指輪を渡し真実が仕事を退職した翌日、彼女は突然姿を消した。

あらすじだけ書くとミステリっぽいけど…事件は軸になるわけではないけどある意味とてもミステリ。怖い。人の内面が。
真実は地方都市で堅実に暮らしてきた女性で、何でも型に嵌めようとする母親の影響を強く受けていわゆる「真面目すぎる」と分類される生き方しか出来ずにいた。
一大決心をして上京後、彼女が理想としていたおしゃれでフランクでモテるタイプの架と付き合うことになるが、付き合いが数年過ぎても結婚したいと言い出さない架に不安を感じはじめていた。

架が行方不明になった真実を探して奔走する中で、真実を取り巻く人物たちから彼女の過去について聞いていくのだけど、その人物たちが語ることにドキッとさせられる。結婚という市場において、人は大抵自分のことを高く見積もって、相手の中身を知らないうちに「ピンと来ない」で片付けてしまう人が多い、とか。自分と見合わない理想を高く掲げる人が多いのは、現実でもきっとそうなのだろうと思う。そういう部分に関して、自分もそうなのだろうか、としみじみ考えてしまう。
そして架の女友達たちの女の嫌な部分には辟易とさせられ、私も似たような女たちの攻撃を受けたことがあるなと恐ろしさを回想したりした。この辺りについては、是非読んでみて欲しいと思う。たぶん、思い当たる人けっこういると思うから。

真実が起こした行動は、今までの彼女の生き方を振り返ってみたら、本当に死ぬ気で起こした行動だったのかもしれない。自分が嫌いで、自分を変えたいという勇気。すべて無くしても仕方ないという覚悟は、彼女の価値観を変え、そして彼女を見る周りの感情も変えた。
ドロドロを感じる序盤から、徐々に爽快さを感じる終盤へと向かってゆく。

婚活に限らずどんな場面においても、自分を高評価しがちな人間は多いということなのだろう。突きつけられたくない現実だけど、自分含め、きっとそういうものだろうと思わされた。
辻村さんみたいな人、身近にいたら怖い。笑



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