偏死体



母親に住所が伝わった。
わざわざ「あなたの住んでるとこが分かった」という連絡も。携帯会社が母親にわたしの住所を分かるようにしてしまったみたいだ。電話した時も仕事が出来なさそうなオペレーターだなと思っていたけど、まさかここまでとは思っていなかった。そのうえ、他の頼んでいたことひとつもやってなくて。もう怒り通り越して笑えてきた。

とりあえずショップに行って電話番号を変えたけど。住所が伝わってしまったから、母親なら簡単に車で来ることが出来てしまう。来ることが万が一なくても住所を知られているなんて全く意味がなくて。でも怒りをぶつけられるところがなくて絶望している。

送金しろといわれているけど、それが24日の午前まで。日にちどころか時間帯まで指定してくる。

「りりのお金をあてにしていたのに勝手に引越すから、わたしも計算が狂って困るんだけど」

その言葉の最初から最後まで狂っていることが、どうして分からないんだろう。
頭がおかしい、狂っているのは、母そのもので。

「姫(わたしの妹)を留学させてあげたいから、時期になったら、りりに相談するね」
「わたしのiPhoneがブラックアウトするようになったから、りり、注文とか手続きよろしく」

最近言われたすべての言葉はもはや気違いで、なのにわたしはそれに対して拒む返答はしていない。「はい」と言おうが「いや」と言おうが、結果はなにも変わらなかった。

しかし、今回ばかりは、わたしは手もとにお金が無い。それを説明したとして「じゃあどうすんの」となにも解決というか良くも悪くも進展はない。
とりあえず電話番号を変えただけで、LINEもまだブロックしておらず届くようにはなっている。メールアドレスも住所も知られている。何故かある意味ものすごく信頼されてるのは「わたしがお金を母親に送る」こと。小さな頃からわたしを支配して洗脳してきたからそれには自信があるんだろう。

わたしも今回ばかりはお金が無いと書くだけあって、毎回にも関わらずその信頼に応えようと勝手に身体が動くのを自覚している。

「ごめんねー、」
「りり、困るよね、ごめんね」
「わたしにお金が入ったら返せるのは返すから」
「だから、忘れずに、必ず24日の朝イチで送金してね」

おかしいのは、気狂いなのは、わたしなのか。


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