アルとアネットという不思議な二人組で三十分クオリティなSSを。
どっちもどっちで子供っぽいこの二人を絡ませるのはなかなか楽しかった←
アネットは戦闘時に少々正気を失うので(?!)怖い人と誤解されがち。
…という裏設定(?)をほのめかしてみたり。
ともあれ追記からどうぞー!
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主に創作について語ります。 バトンをやったり、 親馬鹿トークを繰り広げたりします。 苦手な方は、どうぞ戻ってやってくださいませ! (私のサイト「Pure Rain Drop」) → http://id35.fm-p.jp/198/guardian727/
アルとアネットという不思議な二人組で三十分クオリティなSSを。
どっちもどっちで子供っぽいこの二人を絡ませるのはなかなか楽しかった←
アネットは戦闘時に少々正気を失うので(?!)怖い人と誤解されがち。
…という裏設定(?)をほのめかしてみたり。
ともあれ追記からどうぞー!
「一体何処に行っちゃったんだろう……」
小さく呟いた白髪の少年はきょろきょろとあたりを見渡しつつ、
ある人物の姿を探していた。
多くの騎士たちが出ている中庭。
わいわいと賑やかなそこにおそらく彼はいるだろう。
大きな黄色の瞳が探すのは、時折共に戦うことがある彼の姿だった。
彼の赤い髪はよく目立つ。
居れば直ぐに気づくはずなのだけれど……
そう思いつつ、中庭に視線を走らせていれば……
「あ、居た!」
アルは声をあげて、見つけた彼の方へ駆け寄っていった。
その先にいるのは剣を振るう、赤髪の髪の少年。
ガーネットの瞳に灯るのは、鋭い赤い眼光。
あくまで訓練に過ぎぬのに、
何の標的もなく剣を振るっているだけなのに、
まるで実戦のような鋭い雰囲気を彼は醸し出していた。
真剣そのもの、といった表情の彼に物怖じもせずに近づくアル。
その姿に周りに居た騎士たちは驚いた顔をしていた。
「アネットさん!」
駆け寄り、声をかけるとアネットは剣をとめる。
先刻までの鋭さは何処へやら、いつもどおりの社交的な彼の表情に戻る。
アルの姿を見るときょとんとして首をかしげた。
「アル。どうした?」
「アレク様が、これをアネットさんに渡すように、と」
お届けものです、と言ってアルが手渡したのは一枚の書類。
アネットは怪訝そうな顔をしつつそれを受け取り、読んだ。
そして眉を顰める。
「うげ、護衛任務かよ……」
どうやら、任務命令の書類だったらしい。
しかも、アネットが苦手とする貴族護衛の任務だ。
マナーなどに相当疎いアネットはこういった任務が苦手だ。
中に潜入して騎士らしく振舞うことが出来ないのだ。
そもそも敬語が壊滅的に苦手だし、テーブルマナーや女性に対する振る舞いも、
正直言って落第点。
かと言って、屋敷の傍に静かに隠れている、ということもなかなか出来ない。
そんな彼に護衛任務とは……アレクは一体何を考えているのだろう。
アネットが小さく溜息を吐くと、アルは苦笑気味にいった。
「アレク様はアネットさんをそういう場に慣れさせたいと思ってらっしゃるのでは?」
「あー、それはあるかも。アレク様、そういうこと細かい人だから」
アレクは炎豹の騎士であるが、礼儀や作法をかなり重んじる人物でもある。
力で剣を振るうだけが能ではないと思っている騎士らしい騎士だ。
わしわし、と短い赤髪を掻いて、アネットはもう一度溜息を吐いた。
そのまま剣を鞘に戻して伸びをする。
「堅っ苦しい任務は嫌いなんだけどなぁ……」
「好き嫌いで任務を選んじゃダメですよー」
「わかってるよ……でも、面倒」
ぶぅ、と頬を膨らませるアネットを見て、アルは笑う。
なんだか子供みたいです、とアルが言うと、
アネットは若干恨めしげな視線を彼に向けた。
「アルに言われたらおしまいだよなぁ……」
「な……!アネットさん、酷いですよ!
僕、少なくともマナーはしっかりしてます!」
アルが怒ったように抗議すると、アネットは"確かにな"と呟く。
アルは医療部隊の人間。
尚且つ、この騎士団内でも一番といっていいほど礼儀正しい統率官、
ジェイドの元で修行を積む騎士でもある。
マナーや言葉遣いが正しいのは当然といえば当然なのだろう。
"でもさ"とアネットは付け足した。
「容姿は子供だけどな」
に、と笑ってから、アネットはアルの頭を撫でた。
その行動もまた、アルを子供扱いしているのにほかならない。
今度はアルがむっとした顔をする。
「もう……アネットさんなんか知りません!」
「ほら、そうやって拗ねるところもガキっぽいんだよ」
けらけらと笑うアネットに、アルはむすっとしつつも、小さく笑った。
彼の感情表現が、友愛表現がそういったからかいに表れることを理解している。
狂ったように剣を振るう姿が、
それこそ猛った獣の魔獣を仕留める姿が、
恐ろしいと避けられてしまうことさえある彼。
しかしそれはあくまで偏見でしかないことを、アルはよく知っている。
彼は恐ろしくなどない。
少々子供っぽく、甘えた気質さえ残した19の少年だ。
夜叉でもなければ、血に飢えた獣(けだもの)でもない。
彼が真剣に剣を振るうのは妹のためであることもよく知っている。
ただ、その所為で暴走して怪我をするのはやめてほしいものだが……
ストッパーとなれる人物は、何も自分だけではない。
傍にいて、支えてくれる人間がいることも、アルは知っている。
―― 皆、ちゃんと"彼"を見てくれるといいな。
たまにでも共に戦う仲間として。
彼が誤解されてしまうのは、なんとなく嫌だから。
アルはそう思いつつ、小さく微笑んだ。
―― I know… ――
(傍にいるごく一部の仲間しか知らないとしても
僕たちは知っています。貴方の強さを、優しさを)