お医者様コンビでほのぼのしたお話を…
ほのぼの&イチャイチャ、と思っていたらふとある花の花言葉を思い出したので。
…タイトル見ればわかるって?その通りです←
*attention*
・お医者様コンビのSSです
・ほのぼのです。二人でいちゃいちゃと。
・とある植物の花言葉を使って(花言葉は一例ですが)
・メンゲレさんの健気さが好きです
・こう言う構図が好きな星蘭ですから!
・相変わらずに妄想クオリティ
・ナハトさん、本当にすみませんでした!
以上がOKという方は追記からどうぞー!
「これで全部、ですかね」
穏やかな光が差し込む、研究室。
黒髪の彼はそう呟いて、手元にある書類をとんとんと整えた。
その声を聞いて、棚に積んである書類の整理をしていた緑髪の魔術医が振り返る。
そして穏やかに笑むと、彼……メンゲレに言った。
「ありがとうございます。そこにまとめて置いておいてくださいな」
「はい。……お茶淹れてきましょうか?」
疲れたでしょう?とメンゲレはジェイドに訊ねる。
メンゲレ自身もなのだが、
今日ジェイドは朝から講義やら研究資料の整理やらで動きっぱなしだったはずだ。
疲れているだろうと思ってそう申し出たのだが、
ジェイドは微笑んでからゆっくりと首を振った。
「お茶ならば、僕が淹れてきます。二人で、休憩にしましょうか。
貴方が焼いてきてくれたクッキーもありますしね?」
僕の方も区切りが良いですし、と言ってジェイドはキッチンの方へ歩き出す。
メンゲレが止めようとしたが、それも簡単に諌めて。
「これくらいのことは、僕にさせてくださいな。
自分の仕事を貴方にいつも手伝わせてしまっているのですから」
ジェイドは苦笑気味にそういう。
メンゲレは彼の言葉をやんわりと否定するように首を振った。
「僕が少しでもジェイドさんのお手伝いをしたくてやっているんですよ。
気にしないでください」
優しい彼の言葉にジェイドはふっと笑みを零す。
ありがとうございます、と呟く声ににじむのは愛おしさか。
ジェイドはなれた手つきで紅茶を淹れると、
部屋の方へ戻ってきて、片付いているテーブルの上にそれを並べて置いた。
「こうして二人でゆっくり過ごすのも、久しぶりですよね」
仕事では常に顔を合わせているのに、とジェイドは何処か可笑しそうに言う。
メンゲレは少し記憶を遡ってから、小さく苦笑して"そうですね"といった。
確かに、仕事で一緒にいることはかなり多い。
交代で講義を行ったり、一緒に街に診察に行ったり、こうして研究を手伝ったり。
しかしこうしてゆっくりと、仕事以外の話をしながら寛ぐのは久しぶりだった。
向かい合わせに座って、たわいもない話をする。
街に出かけた時に子供たちに言われたことや、
庭で咲いた花のこと、草鹿の騎士たちの噂話……
そんなとりとめのない話をする中で、ふとジェイドが表情を曇らせた。
メンゲレは不思議そうな顔をして、首をかしげる。
「どうしたのですか?クッキー、お口に合いませんでしたか?」
少し心配そうにまゆを下げたメンゲレを見て、ジェイドはあわてて首を振る。
「!いや、違うのですよ。
貴方が作るお菓子は、本当に美味しいですから」
ジェイドはそう言って笑う。
嘘偽りのない言葉であることはメンゲレもよく知っていた。
元々あまり甘いものを好んで食べない彼なのだが、
メンゲレが作るお菓子は好きなのだと言っていた。
愛情ゆえですかね、などといって黒髪の天使をからかうことも多々あったりして。
では何故?という顔をする彼に、ジェイドはゆっくりと答える。
「……貴方に、申し訳ないなと思いまして」
「僕に?」
メンゲレはきょとんとした顔をする。
ジェイドはふっと苦笑にも似た笑みを漏らすと、言った。
「あまりに忙しくて、ゆっくり出来る時間がないことですよ。
医療部隊である此処(グラスディール)がもともとそう言う部隊なので、
仕方がないといえば仕方がないのですけれど……
そうでなくともメンゲレは僕の手伝いまでしてくれていますから、
他人以上に多くの仕事をしているわけですし……
貴方の負担になってしまっていなければよいのですが」
ジェイドの表情の曇りの理由はそれ。
騎士団内でも忙しい医療部隊草鹿。
休みなど早々取れるものでもないし、
例え休みであっても何かが起きれば出動を命じられる。
挙句、自分の手伝いをするためにこうして部屋に来てくれる彼に、
いらぬ負担をかけてしまっているのではないか、と。
メンゲレはジェイドの言葉を聞いてしばしキョトンとしていたが……
やがて、くすくすと笑みを零した。
そして、まっすぐにジェイドを見つめながら穏やかな声で、言う。
「負担なんかじゃありませんよ。
こうして僕を必要として、傍においてくださることが嬉しいんです」
メンゲレはそう答える。
自分が存在する意義が欲しくて、死の天使として生きていたあの頃。
そんな自分の迷いを見抜き、本来あるべき道に戻れば良いと諭してくれた彼。
医療従事者として真剣な姿を見せるこの国の騎士に憧れ、
自分の組織を離れ、移籍してきたこの場所。
忙しいことはわかりきっていた。
ジェイドの手伝いだって本当はしなくていいことだと知っている。
それでも彼がこうしてこの部屋に来るのは……
「例え、仕事をしながらでもお話は出来ますし、
ジェイドさんと一緒にいられるのが僕は嬉しいのです。
……ジェイドさんと一緒にいられる時間が、僕は一番好きですよ」
少しはにかんだように笑うメンゲレ。
ただ、一緒にいられれば良いのだと。
迷いない口調で、天使はそういう。
開いた窓から吹き込んでくる柔らかな風が彼の黒髪を揺らす。
ジェイドは彼をじっと見つめ返してから、嬉しそうに笑った。
「ありがとうございます。メンゲレ……
こんなかけがえのない仲間が、恋人が出来て……僕は幸せ者ですね」
ストレートに恋人と言ってのけるジェイドにメンゲレは少し赤面する。
くすくす、と笑うとジェイドはふと何かを思いついたような顔をした。
「ねぇ、メンゲレ。一緒に、中庭に行きませんか?」
「え?」
唐突な誘いに、メンゲレは驚いた顔をする。
しかし、断る理由もない。
構いませんよ、と彼が答えるとジェイドは嬉しそうに笑った。
***
そして、二人で中庭に出る。
穏やかな午後の中庭はかなり賑やかだ。
ノトやアークの騎士たちがいたるところで剣の練習をしている。
休憩中であろう騎士たちは木陰で談笑したり、昼寝をしたりしていた。
穏やかで、平和な日常。
メンゲレはその様を見て目を細める。
―― こんな日々が、続けばいい。
ふと、そう思う。
戦いに身を置くのは、好きではない。
変わらぬ仲間たちがいて、穏やかな時間が流れて、
愛しい人の隣にいられれば……それでいい。
そんなことを思う自分がなんだか照れくさくて、メンゲレは苦笑を浮かべる。
と、その時。
「メンゲレ、こっちに来てくださいな」
「?ジェイドさん?」
しばし自身だけの思考に入っていたメンゲレは彼の声で現実に戻される。
彼の声の方を見て少し驚いた顔をした。
ジェイドはメンゲレから少し離れた場所に座っている。
直接、芝生に腰を下ろして。
まるで、子供のように。
長い白衣が緑の上に広がっている。
彼の傍には白い花がたくさん咲いていて……
メンゲレは彼の方へ駆け寄って、訊ねた。
「どうしたんですか?」
「ちょっと、探し物を」
「探し、もの……?」
彼の言葉にメンゲレはきょとんとする。
草の上で一体何を探しているというのか。
何かを落としたのだろうか?と若干見当違いな思考をするメンゲレ。
ジェイドは暫く"その場所"に視線を向けていたが、
すぐに笑みを浮かべると何かを摘み取った。
「これですよ。昔から、探すのが得意だったのです」
そう言いながら、ジェイドはメンゲレの手に何かを乗せる。
不思議そうな顔をしつつ自分の手に乗せられたモノを見て、
メンゲレは目を丸くした。
「四葉のクローバー……探し物って、これですか」
メンゲレの白い掌に乗せられているのは四枚の葉のクローバー。
ジェイドが探していたのは、どうやらこれらしい。
彼の周りに咲いているのは、シロツメクサ。
中庭のあちこちで群生していることは知っていたが、
こうしてじっくり見たり、彼のようにクローバーを探したことはなかった。
幼い騎士たちがしている姿を見ることはあったけれど。
「そうですよ。少し、子供っぽい思想でしたかね?」
そう呟くジェイドの頬は微かに赤い。
照れくささを隠そうとするかのように、
彼は一本のシロツメクサを摘んで指先で弄んでいた。
暫く驚いた顔をしていたメンゲレだが、すぐに明るく笑う。
「いえ、とても嬉しいです……ありがとうございます、ジェイドさん」
後で押し花にしよう、と心の中で思いつつ、
メンゲレは保護の魔術をかけてポケットにそれを入れる。
そのまま、ジェイドの隣に座った。
隣に座る彼の深緑の瞳を見つめて、ジェイドは微笑みながら言う。
「シロツメクサの花言葉、知っていますか?」
「えっと……何でしたっけ」
彼の問いかけにメンゲレは考え込む。
色々な花言葉を知っている彼だが、それ故に色々ありすぎてどれがどれやら。
ど忘れしてしまった、と素直にいうと、ジェイドは微笑んで言った。
「約束。それから……"わたしを思ってください"ですよ」
「そう、でしたね……ふふ、今更ですよ?ジェイドさん」
隣に寄り添って、彼の肩に頭を預けながらメンゲレは言った。
―― わたしを思ってください。
純粋に、愛しさを表すその言葉。
花言葉に託した思いを聞いて、メンゲレは笑う。
今更すぎる。
大切だと、愛しいと思わない相手と、どうしてこうやって一緒にいられようか?
大切だからこそ、愛しいからこそ、思っているからこそ……
こうして、同じ場所に座っているのだから。
メンゲレがそう言うとジェイドは穏やかに微笑んで、彼の長い黒髪を撫でる。
「そうですか……それは、嬉しいです。
四葉のクローバーの花言葉は、わかっていますよね。
幸福、そして……」
―― 私のものになってください。
二人の声が重なって、どちらともなく可笑しそうに笑う。
言葉に出すのも照れくさいようなセリフさえ言い合える仲。
それほどまでに愛しくて、それほどまでに大切で。
ふと、メンゲレが小さく欠伸を漏らした。
連日の激務で体が疲れていることは事実だし、何よりこの暖かな陽気と平和な雰囲気。
眠くなっても仕方がないだろう。
少し決まり悪そうな顔をする黒髪の天使を優しく抱き寄せて、
ジェイドは穏やかに微笑みながら、言った。
「少し、眠ってもいいですよ。
僕がこうして、ずっと抱いていてあげますから」
「でも、申し訳ないですよ……
ジェイドさんだって、疲れているでしょうに」
僕だけが眠るわけには、とメンゲレは呟く。
ジェイドはにっこりと笑った。
「貴方の寝顔を見ているだけで、僕は十分幸せですから」
からかうようにそう言って、ジェイドはメンゲレの額に軽くキスを落とす。
普段ならば、外や他人の前でこんな行動は取らない。
あくまでも、この関係は"秘密"である。
まぁ、仲が良いということは正直騎士団内でも誤魔化しきれないが。
しかし、今は……
ほかの騎士に見られたらどうするのだ、というツッコミをする気もおきなかった。
ただ穏やかに微笑んで、彼の体に身を預けるメンゲレ。
そのまま静かに目を閉じた。
疲れていたのか、彼はすぐに静かな寝息を漏らし始める。
安心できる彼の傍だからこそ、こうも穏やかに眠れるのだろう。
ジェイドは愛しげに目を細め、そんな彼の頭を撫でる。
心地よさげに擦り寄る彼を見て微笑むと、ジェイド自身もそっと目を瞑った。
―― Clover ――
(愛しい貴方を想い、想われ……こうして共に穏やかな時を過ごす)
そんな時間を宝といわずしてなんと表せば良いでしょう?)
(永久にこんな時間が続けばいい…
いつまでもこうして貴方と寄り添っていられたらきっと幸せだから)
2013-4-29 20:40