久々のお医者様コンビです
メンゲレさんは泳げない、ということで…
水辺ネタ?です。
*attention*
・お医者様コンビのおはなし
・ディアロ城騎士団では水泳試験があります
・メンゲレさんは泳げないようで…
・ジェイドは基本泳ぎは得意です
・相変わらず妄想クオリティ
・ナハトさん、勝手に済みませんでした!
以上がOKという方は追記からどうぞー!
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主に創作について語ります。 バトンをやったり、 親馬鹿トークを繰り広げたりします。 苦手な方は、どうぞ戻ってやってくださいませ! (私のサイト「Pure Rain Drop」) → http://id35.fm-p.jp/198/guardian727/
久々のお医者様コンビです
メンゲレさんは泳げない、ということで…
水辺ネタ?です。
*attention*
・お医者様コンビのおはなし
・ディアロ城騎士団では水泳試験があります
・メンゲレさんは泳げないようで…
・ジェイドは基本泳ぎは得意です
・相変わらず妄想クオリティ
・ナハトさん、勝手に済みませんでした!
以上がOKという方は追記からどうぞー!
「メンゲレ、少し付いてきていただいてもよろしいですか?」
メンゲレがそうジェイドに声をかけられたのは、
だいぶ気温が上がり始めたある日の午後のこと。
メンゲレは不思議そうな顔をして、訊ね返した
「え?構いませんが……いったい、どこへ?」
「多分、まだメンゲレは来たことがないですよね……
今度、騎士団の試験のために使う場所の整備が僕の担当なのです。
いつもはアレクに手伝ってもらうのですが、
最近あたりで魔獣の出没が増えていて彼も忙しいようで……」
手伝って欲しいんです、と少し申し訳なさそうにジェイドは言う。
少しでも彼……ジェイドの手伝いが出来たら、と思う彼のこと。
メンゲレは笑顔でこくりと頷いた。
***
そして、彼らが辿りついたのは騎士の棟の外れ。
確かにメンゲレは初めて来る場所だったのだが……
その場所に足を踏み入れ、メンゲレは思わず固まった。
「此処は……?」
「水泳訓練用のプールですよ。
貴方が此処に来た時には訓練するような時期ではなかったので、
貴方はまだ来たことがなかったでしょう?」
ジェイドは事も無げにそう言った。
そう、この騎士団では水泳の訓練がある。
というのも、あたりに水辺も少なくないこの地域、
水辺に住む魔獣を倒しに行くこともあるし、
ジェイドやメンゲレたち……医療部隊の人間は、
水に落ちた人間の救助もしなければならないケースがある。
だから、ということで訓練があるのだ。
そして、騎士団入団のための試験にも水泳の項目がある。
今日はその準備をしなければならないのだとジェイドは言っていた。
「結構、深いですね……」
おずおずとプールサイドに膝をついて、メンゲレはそこを覗き込む。
その試験のためか、水はなみなみと溜められていて、水面が揺れていた。
上から見ただけでも結構な深さがあることは窺える。
「そうですね……池やら湖も想定した深さになっていますから……」
だからこそ訓練は慎重に行わないといけないのですが、と言うジェイド。
そうですか、とメンゲレが言おうとしたその時。
「わ……!」
不意に足元が揺れた。
「っ!いつもの、地震ですかね……」
最近近くで魔獣が暴れることによる地震が起きていた。
アレクが忙しいのはそのためである。
最近あまりに頻発していたためにそれが原因だろうと冷静に二人とも思う。
―― しかし、問題はそこではなく。
プールサイドにいたメンゲレが揺れた衝撃で水に落ちてしまったのである。
ばしゃんっと水音と小さな水柱を上げて、彼は水に沈む。
冷たい水に体を包まれて、メンゲレは焦った。
恐怖心と驚きで慌てて藻掻く。
それが逆効果であると心の何処かで警鐘が鳴るが、
半ばパニック状態のメンゲレにはそれが出来なくて……
―― 元々、彼は泳げない。
オリジナルの因縁故か、泳ぎが苦手なのだ。
慌ててもがいても水面は遠ざかるばかりで、酸素は奪われ息苦しくなる。
どうしよう、どうしよう。
そんなおもいでいた、その刹那。
不意に後ろから体を支えられた。
驚いて、そして何より助けて欲しくて体を支えてくれる人物に縋ろうとするも、
後ろにいられてはしがみつくことも出来ない。
不安は消えず、暴れそうになるが魔術でか体が軽く拘束されてそれもできない。
相手は泳ぎになれているのか、あっという間にふたりは水面に顔を出した。
ばしゃっと顔が出ると同時に、メンゲレは咳き込む。
自由になった体でもがこうとした時。
「落ち着きなさいメンゲレ……もう、大丈夫ですから」
耳元で聞きなれた声がした。
少し冷静になって軽く体を捻って見れば、見慣れた緑髪が目にうつった。
無論、彼を後ろから支えているのはジェイド。
彼が落ちると同時に水に飛び込んだのだった。
「ジェイドさ……っ」
安心するやら、落ちた時の恐怖を思い出すやらで怯えた顔をするメンゲレ。
ジェイドはふっと息を吐くと、落ち着いた声で言った。
「大丈夫ですって……深いですが、僕が支えていますから溺れはしませんよ。
……少し落ち着いてくれないと、上がる事も出来ません」
しっかりとメンゲレを抱いたまま器用に立ち泳ぎをするジェイドは、
少しでも彼を安心させようといつもどおりの落ち着いた声で言う。
こういった事態にもなれていた。
正面からでなく後ろから彼を支えているのもそのため。
正面から回れば下手をすると二人揃って溺れるハメに陥る。
メンゲレが少しおとなしくなると、ジェイドはプールサイドから彼を押し上げた。
濡れたための寒さ故か、恐怖故か、メンゲレの体は小さく震えている。
ジェイドは飛び込んだ時に外したのであろう眼鏡を拾い上げて、
かけ直すと彼に歩み寄って、顔を覗き込んだ。
ぽたり、と長い緑髪から水の雫が落ちる。
「大丈夫ですか、メンゲレ……」
「え、えぇ……今、は……」
大丈夫です、とメンゲレは答える。
ジェイドは安心した顔をして、垂れてきた前髪を後ろに払った。
プールに飛び込んだために無論彼もずぶ濡れだ。
ジェイドは小さく息を吐き出すと、メンゲレに言った。
「貴方が泳げないとは知りませんでした」
「済みません……」
泳げないのだということを事前にいっておかなかったこと、
そのために面倒をかけてしまったことをメンゲレは詫びる。
尚且つ、これから先どうしようか、という思いもあった。
泳げないのではまた余計に周りに迷惑をかけてしまうのではないか、
出来ることが一層減ってしまう……という不安。
俯いていると、目が熱くなってきた。
泣いても仕方がないからと歯を食いしばる。
ジェイドはそんな彼の様子を見て想いを悟ると、小さく笑って彼の頭を撫でた。
「そんな顔をしなくても大丈夫ですよ。
まぁ、大体の騎士は泳げますが……
泳げないからと言ってクビになるわけではありません。
現に、僕らがよく知る中にも一人泳げない子がいますしね」
「え……」
メンゲレは俯いていた顔を上げて、ジェイドを見た。
いったい誰だろう、というその思いもあって。
ジェイドはふ、と笑って彼に言った。
「アルは泳げないんですよ。
貴方同様に、此処で溺れましてね……
試験の時も駄目だったらしいのですが、僕はそのとき見ていなくて。
それでも彼は今立派に騎士の仕事をこなしているでしょう?
出来ないことを補える何かがあればそれで十分というのがこの騎士団です」
"だからそんな顔をしないでください"と言ってメンゲレの頭を撫でると、
ジェイドは彼の手をとって立たせた。
「ほら、着替えに戻りましょう。
このままでいたら風邪をひいてしまいます」
「あ……」
行きますよ?と手を引くジェイドについて歩き出すメンゲレ。
ずぶ濡れの二人を見て周りは驚いた顔をしているが、
ジェイドは涼しい顔をしている。
「ジェイドさん、でも僕……泳げたほうが、良いのでは……」
医療部隊の人間として、何より騎士として……
苦手であっても出来たほうが良いのでは、と彼は言う。
ジェイドは少し悩むような顔をしたあと、答えた。
「怖い思いをしながら無理に泳ぐことはありませんが……
もし貴方が泳ぎたいというのならば、僕が教えてあげますよ。
あんな深い場所じゃなくて、もう少し浅い場所でね」
にこり、と穏やかに微笑む統率官。
メンゲレは小さく微笑みを返すと、握られた手を強く握り返す。
濡れた体は冷たかったけれど、触れている手は暖かで、
少しだけ恐怖心も寒さも薄れるような気持ちがした。
―― 優しく守ってくれる手があるならば ――
(少しずつでも苦手を克服するべきなのでしょうか)
(けれどもあまり無理はさせたくないというのが心情です)