文章が雑になってきていたので、毎日書くのは断念しました…
いくら書いても、自分が納得いかないのでは、どうしようもありませんしね…!
というわけで、今日は更新します。
今回はシリアス目。
フィアとルカで、シリアス目です…。
では、追記からどうぞ!
If I ……
静かな風の吹く中、フィアは立っていた。
訓練室を抜け出して、外に来ていたフィアは、溜息をつきながら、
そっと自分の髪を梳いた。
「…………」
―― 気分が悪い……
そっとその場に腰を下ろす。
溜息をついて、顔を覆った。
―― フィアがこんな顔をしている原因は、数分前にさかのぼる……
フィアは、いつものように雪狼の騎士たちと訓練をこなしていた。
何のことはない、普通の訓練だった。
―― そんな時。
「!!」
不意に、訓練室に広がる炎。
フィアは驚いて、その場に凍りついた。
「おい、危ないっ!」
シストがフィアを抱き寄せて、障壁を張る。
いつもなら、余裕で障壁を張るのに、今回は反応が遅れた。
そんなフィアを、怪訝そうに見つめるシスト……
フィアは、茫然としながらその炎を見つめていた。
―― なぜ、炎……?!
「す、すまない!」
響いたのは、炎豹のトップ、アレクの声。
どうやら、一緒に訓練室を使っていた炎豹の騎士の魔術が、こちらへ向かってしまったらしい。
アレクはその騎士をしかりつけている。
「おいフィア、大丈夫か?顔色悪いぞ……?」
シストは障壁を解いて、フィアの顔を覗き込んだ。
フィアははっとして首を振る。
「大丈夫だ……すまない」
そういってシストの肩を押して離れると、ふらりと歩き出した。
「お、おい!」
「悪い……俺、少し外にいるよ」
ごめんな、と笑みを浮かべてから、フィアは外に出て行った。
―― 情けない。
震える肩を抱いて、フィアは心の中でつぶやく。
フィアは、炎の魔術が苦手だった。
それは、昔の記憶を呼び起こしてしまうから……
自分の村を襲った竜。
その炎が、村を焼いた。
フィアの両親も、炎にまかれて死んだ。
……それを思い出すから、炎は苦手だった。
「……もしも」
もしも、もしも……
自分がもっと強かったなら。
竜を倒せる、今くらいの実力があったなら……
両親は、死なずに済んだだろうか……
何度も何度も、そう考える。
それが無駄だと、わかっていても……
座り込んだまま、顔を覆っていたフィアの肩を、誰かが叩いた。
驚きと恐れとで、フィアは体を硬直させる。
「フィア、大丈夫かよ」
その声に、体の力を抜いた。
「ルカ……」
「あんまり大丈夫そうじゃないな……」
ルカはそっとフィアの頭を撫でる。
いつもは怒って拒むフィアだが、今回はそうしなかった。
その様子からも、あまり余裕がないことがうかがえる。
「……大丈夫だ、驚いただけだから……」
そういうフィアの声は、微かに震えている。
「そう、か……あまり無理はするなよ。
今日は訓練、もういいから。シストもわかってるし……」
部屋に戻って休んでろ、とルカが言うと、フィアは小さくうなずいた。
ルカはそんなフィアを安心させようとするように、そっと撫でる。
「……なぁ、ルカ……」
「何だ?」
「……俺、」
フィアは何かを言いかけて、すぐに口をつぐんだ。
そして、ゆっくりと首を振る。
「……何でも、ない……」
「……そう、か」
ルカは小さくうなずいて、フィアから手を離した。
そのまま、フィアから離れて、優しい声で言う。
「俺……訓練室に戻るから。何かあったら、来いよ」
「あぁ……わかった」
ルカはそのままフィアに背を向けて、帰ろうとした。
しかし、それをフィアが呼び止める。
「さっきの……炎豹の騎士があまり怒られないようにしてやってくれ」
「あ?」
「……俺が勝手にびっくりしただけだから、ってアレク様にいっておいてやってくれ」
フィアの言葉に驚きつつ、ルカは小さくうなずいた。
”わかったよ”と返して、今度こそ歩き出す。
―― くそ。
訓練室の前まで戻ったルカは、静かな廊下で拳を壁に打ち付けた。
唇をかみしめる。
―― 俺がもっと……強かったなら……!
何度も悔やんできたものだった。
何度も、何度も……
もっと強ければ。
もっと、早く村に戻れていたら。
フィアの両親を、守れただろうか……
「……くだらない、な」
そうつぶやいて、自嘲気味に笑う。
その瞳には、むなしさが浮かんでいて。
―― そんなことを語ったって、所詮、夢物語だ。
理想論。
過去は、捻じ曲げられない。
わかっては、いたけれど……
―― あいつのことを、守ってやりたかった。
そう思うのだ。切実に。
フィアを、優しい従弟を、守ってやりたかった、と。
自分が恐ろしい目に遭ってもなお、相手を心配する、優しいフィアを、
フィアの心を……
If I ……― もし、私が…… ―
はい、一日ぶりの更新でした。
今回のお題は「夢物語」でした。
今回はシリアスです。
フィアもルカも「もし、自分が…」と思っていたから、何度も思ってしまうんです。
お題からずれている気がしますが……
ここまで読んでくださって、ありがとうございました!
2012-5-24 21:49