久し振りに増やした悪魔、レオンの話をかきたくなったので。
エビルと昔馴染みという設定だったのでレオンと絡めたりして。
レオンは医者枠の悪魔。
ただし、病を流行らせる方が本職です(笑)
では追記からどうぞ!
少し冷えた風が部屋の中に吹きこんでくる。
陽が落ちるのも大分早くなってきたものだ。
そう思いながら、エビルは煙草を口に加える。
城の中で堂々と煙草を吸うのはなかなかに難しい。
今日は特段用事もなく、いつも一緒に過ごしているシュタウフェンベルクや荒錵も仕事でいない。
一人で部屋にいるのも退屈だから、と城の周りを散歩していた。
見かけた魔獣を魔術や鉤爪で屠りながらの散歩という非常に物騒なものではあったが。
さぁいい加減に城に帰るとするか。
そう思った、その時。
「煙草は程々にしとけよ不良青年」
聞こえたのは、そんな低い声。
エビルが驚いて顔を上げると、そこには癖のある赤髪の男性が立っていて。
その人物が身に付けているのは一式黒の、まるで葬儀から抜け出してきたかのような服装。
その上から白衣を身に付けているという奇妙な格好だ。
普通の人間がそれを見たとしたら、当然その異様さに驚くだろう。
しかし、エビルが驚いたのは違う理由。
その人物が"何故此処にいるのか"という驚きである。
しかしその驚きもすぐに解けたようだった。
エビルは緩く口角を上げて、声をあげる。
「不良いうな猫背医者」
そういいながら、エビルは彼その人物に向かって軽くウィンクをしてみせた。
声をかけられたその人物はくつくつと喉の奥で笑って、いう。
「相変わらずだな、エビル。元気そうで何よりだ」
「珍しいな、レオン。アンタが表に出てくるのは」
そう。
エビルに声をかけてきた白衣姿の青年……それは、エビルにとっては昔馴染みだったのである。
「マルバスの血筋のアンタは人間に呼ばれることも少なくはねぇだろうが……
今時、正式な手順で悪魔を呼びだそうとする人間はそうそういねぇし、仕方ねえか」
エビルはそういって、軽く肩を竦めた。
レオンという名のその悪魔は、マルバスの血を引く悪魔。
病を流行らせ、また治すことも出来るその悪魔は、人間に求められることも多いだろう。
しかし最近はわざわざ悪魔を呼びだそうとする人間もそうそう居ない。
故に、彼がこうして人間界に居ることにエビルは驚いたのである。
彼の言葉にレオンは軽く肩を竦めた。
そして緩く笑みを浮かべながら、いった。
「お陰で魔界は暇なんでね。表に出ていったお前らがどうしてるか様子を見に来たんだ。
お前は昔からよく怪我して帰ってきちゃあ俺が手当する羽目に陥ってたしな」
そういって笑う、レオン。
少し懐かしむように、彼の鮮やかな金の目が細められる。
魔界に居る頃からの付き合いだ。
眼前の悪魔は喧嘩っ早く、しばしば喧嘩をして帰ってきていた。
無傷な時の方が珍しく、傷を負って帰ってくる度に医術の心得があるレオンが治してやっていたのだった。
エビルはそれを聞いて、くっくと笑った。
「なるほどね」
「お前は割とすぐに無茶するからなぁ……
煙草も相変わらずに吸って体をイジメているようだしなぁ」
レオンはそういって笑う。
エビルは吸いかけの煙草から一度口を離して、軽く鼻を鳴らした。
「良いだろ、別に」
そういいながら、彼は紫煙を吐き出す。
まぁいいけどな、と肩を竦めながら、レオンはエビルの様子を眺める。
「変わってねぇな、寧ろどっか楽しそうだ」
「一緒に居て楽しい人間がいたんでな」
そういうエビルを見て、レオンはほぉ、と声を漏らす。
「元々然して人間に興味もなかったお前が?」
レオンが知るエビルは、人間には無関心だった。
人間はあくまで精力の供給源でしかない。
気にいった人間を見つけても、一度喰って終わり。
ヘタをすれば"抱くよりこちらの方が良い"と殺すこともあるレベル。
そんな彼が気にいった人間とは。
「興味深いね、一度見にいってみようか」
「見に来ても良いが、やらねぇぞ、ちょっかい出したら細切れにするからなクソ医者」
そういって笑うエビル。
それを聞いて、レオンは少し驚いたような顔をした。
「……本当、変わったなお前」
レオンはそういって肩を竦める。
そして面白がるように目を細めて、いった。
「もうちょい、こっちで遊んでいくのも悪くなさそうだ」
元々、本当にちょっとした退屈しのぎのつもりで魔界から出てきただけなのだが、思ったよりも面白そうだ。
そういって笑うレオン。
エビルはそれを聞いて、苦笑した。
「たまには魔界に帰ってやれよ、医学が得意な悪魔は珍しいんだし」
「それはこっちの台詞だ、仮にも魔界の王候補の王子様よ」
そういって、笑い合う。
こちらの世界で悪魔に会うことも珍しくはなくなっていたが、旧友と会えるというのは殊の外、嬉しいものだ。
そう思いながら、エビルは金の目を細めたのだった。
―― 久し振りの再会は… ――
(昔馴染みのクソ医者だけど。
まぁ、話が合う相手であるのに違いはなくて)
(元々人間に興味を持ってる方じゃなかったと思うんだが…
そんな彼が人間界にとどまろうとした理由、見てみたくもあって)
2019-9-1 22:31