一日遅れになりましたがワンライの小説です。
きっちり一時間はかってやりました!
使わせていただいたお題は
・君と生きる未来のために
・雪が降る
・必要悪
・「わかって」
です。
ペルの話でシリアス。
こういうノリが好きです←
ネタがないのでお題で…
ともあれ、追記からお話です!
ひらひらと舞い落ちる雪。
はぁ、と息を吐き出せば、その吐息は凍って空に昇る。
長い黒髪が風に揺れる。
慣れた雪景色を見つめて、ペルは息を吐き出した。
今日は、一人で出かけてきた。
城を抜け出し、城下町を抜けて、歩いて向かった先は、限りない平原。
ここ数日は酷く寒く、雪が降り続いていた。
広い広い平原は真っ白に染まっている。
こんな街外れまで来る人間はほぼ居ないわけで、白い雪の上には足跡の一つもない。
そんな景色を見つめて、ペルは息を吐き出した。
「……久しぶりに、見た」
思わず、そう呟く。
彼にとっては見慣れていた美しい景色。
厳しくも美しい、雪原だった。
彼が生まれ育ったのは、真っ白い雪に埋め尽くされた小さな村。
優しい母と勇ましい父。
父親はペルが幼い頃戦士としてとられてしまったために記憶が薄いのだけれど……
それなりに、幸せな生活を送っているつもりだった。
……母親が殺されるまでは。
と、ペルはあることに気が付いた。
雪原の上。
一羽の小鳥が歩いている。
真っ白い、雪のような小鳥。
それを見て、ペルはゆっくりと瞬きをする。
息を飲むほど美しい。
その姿に見とれていた、その時。
ぴいいっと、甲高い鳥の悲鳴が響いた。
驚いてそちらを見れば、一匹の猫がその小鳥を口に咥えている。
「あ……」
思わず、声を漏らす。
漆黒の瞳を見開いたまま、ペルはその光景を見つめた。
真白の雪に上。
点々と残るのは猫の足跡と、鳥の血の痕。
それを見つめ、ペルはゆっくりとそちらへ歩み寄っていった。
残る血の痕。
猫が鳥を襲うその光景に、かつての自分の姿が重なって見えた。
母を殺され、一人南を目指したあの頃。
暖かい国へ。
平和な国へ。
そこで生きるためにと、なんでもやった。
商店を襲って、食事を得たこともあった。
同じように路上で生活している子供の食事を奪ったこともあった。
喧嘩だって、たくさんした。
あの猫だって、同じなんだ。
一歩間違えば、自分があの小鳥のようになっていたかもしれないのだ。
そう思いながらペルは俯いた。
いつもは袖に隠れている手を見る。
真っ白い手。
綺麗な手。
切り揃えられた爪。
……汚れのない、手。
けれど……
見えないだけで、この手は穢れているのだと、ペルはそう思っていた。
幼い顔立ち。
幼いしぐさ。
幼い性格。
けれど……彼は何処か、大人びたところもあるのだった。
生きるためだった。
そう思ってしてきた事。
けれど今思うと、今の生活を思うと、その過去は負担になる。
一緒に過ごす愛しい人たち。
彼らに、過去の自分の所業を、姿を知られてしまったら?
彼らは、自分を嫌悪するだろうか。
生きるためにしたことだと許してくれる、だろうか。
「……っくしゅん」
小さくくしゃみをする。
体を震わせて、マフラーに顔を埋めた。
帰ろう。
そう思って、歩いていく。
今は、帰る家がある。
今は、自分を大切にしてくれる人がいる。
今は、幸せだ。
―― あの過去も、今の幸せのためだったと思っても良い……?
そう思いながらペルはゆっくりと歩いていったのだった。
―― A necessary evil ――
(必要なことだった。
そう思っても、いいかな…)
(今こうして貴方と生きるためだったと。
貴方と出会うためには仕方なかったのだと…)
2016-1-17 13:06