チェーザレさんとラヴェントのお話です。
冷静そうに見えて内心狂気的な雰囲気のチェーザレさんを書きたくて…←
*attention*
チェーザレさんとラヴェントのお話です
ラヴェントとの絡みはないです←
シリアスなお話です
頭がよく、冷酷なチェーザレさんを書きたくて…
頭がよくて笑みを浮かべたままに人を殺せるようなタイプの人もいいかなと(笑)
相変わらずの妄想クオリティ
ナハトさん、本当にすみませんでした!
以上がOKという方は追記からどうぞ!
薄暗い裏路地を駆け抜ける。
うまでは入り込めないようなその場所を、自分の足で駆ける。
"騎馬隊"と名のつく組織のトップではあるものの、青年は自分の足にも自信がある。
だから、逃げ出した"捕縛対象(ターゲット)"を馬から飛び降りて追いかけたのである。
生臭いような、酒臭いような、何とも言えない臭いが立ち込める路地を走り、走り、逃げていく男を追う。
そんな青年……ラヴェントの表情は険しかった。
今彼が追っているのは、最近街を騒がせている強盗殺人犯。
漸く突き止めたその男を逮捕すべく、彼は追っているのだ。
「っは……しぶとい……っ」
逃げ切れるはずがあるまいに。
そう呟きながら、ラヴェントは必死にその姿を追いかけた。
路地を曲がった先。
そこは、行き止まりだ。
常々この街を巡回している警官であるラヴェントはそれをよく知っていた。
追い詰めた。
そう思いながらその路地を曲がった、その刹那。
鋭い銃声が響いた。
一瞬何が起きたのかわからなかった。
鋭い痛みを足に感じたと思うと同時、体が後ろに飛ばされるような衝撃を受けて、倒れこむ。
銃撃されたのだと気づくには、少し時間がかかった。
「っぐ……」
小さく呻く。
そんな彼を見て、男は笑みを浮かべた。
「甘かったな、追い詰めたと思ったかい?警官さんよぉ」
そういいながら男はもう一度武器を構える。
ラヴェントはそんな男を睨みながら短剣を構えて立ち上がろうとするが、足を撃ち抜かれているためにうまく立ち上がれない。
やっとのことで立ち上がって怪我をしていない方の足に力をいれて攻撃の構えをとった瞬間、今度は腕を痛みが襲う。
「武器を向けないでくれないか、物騒なものは好かなくてな」
男はそういいながら笑う。
ラヴェントは痛みに呻きながら足元に落ちた武器を拾い上げようとした。
しかしそれを許そうとはせずに、男はさらに攻撃を加える。
一体何発食らったかわからない。
それでもラヴェントは必死に男を捕らえようとした。
それが、仕事だから。
この人間は、街の平和を脅かす存在だから。
そんなラヴェントを見て男は顔を歪める。
そして、小さく舌打ちをしながら、いった。
「しぶといな」
そんな声と同時に、もう一発、銃撃音が響いた……――
***
リノリウム張りの廊下を、少し急ぎ足で進む。
少し長い黒髪がふわりと揺れた。
消毒液の臭いが満ちる場所……医療棟。
それを感じながら、少年……チェーザレは一室を目指していた。
夜になっても戻ってこない家主。
一体何をしているんだあの馬鹿者は、と思っていたときに家にやって来た伝令。
ラヴェントが怪我をした。
そんな、一言の連絡。
それを受けて、チェーザレは普段は仕事のためだけにいっている城に向かったのだった。
たどり着いた病室。
軽くドアをノックしてからなかにはいると、長い緑髪の髪の男性……ジェイドが振り向いた。
「来ましたか」
どうぞ入ってください。
そういいながら、チェーザレを傍に呼ぶ。
チェーザレはジェイドの方を見て訊ねた。
「容態は?そもそもどうしてこうなったんだ」
詳しいことは聞いていないんだが。
チェーザレはそう問いかける。
思ったより冷静だな、と思いながら、ジェイドはいった。
「銃撃されたようですね。
彼を発見した彼の仲間によれば、最近城下を騒がせていた強盗殺人犯をおっていたとか……」
裏路地の奥に倒れていたのを発見されたようです。
ジェイドはそう説明した。
チェーザレはベッドに眠るラヴェントを見る。
元から溌剌としたタイプではないが、今はまるで生気を感じない。
ぐったりと目を閉じたまま、顔色は青白く、呼吸は浅い。
それを見つめ、チェーザレは顔をしかめながら、呟くようにいった。
「馬鹿者……人は確かにいつか死ぬがそれを自ら早めてどうする。
……せめて覚悟を、決めさせてからにしろ」
そういいながら、彼はそっとラヴェントの頬に触れた。
ヒヤリと冷たい感触が返ってくる。
苦しげな浅い呼吸。
少し布団を捲れば、痛々しい処置のあと。
と、彼の制服のポケットから、警察手帳が落ちて、折り目がついたページが開いた。
チェーザレはそれを拾い上げる。
そしてスッと目を細めた。
「……こいつか」
そこにかいてあったのは、捕縛対象の手がかり。
彼はこうして調べて、追い詰めたのだ。
少し、詰めが甘かったようだけれど。
チェーザレは落ちた手帳を彼のポケットにいれなおす。
それからジェイドに"コイツの様子を見ていてやってくれ"といって、病室を出たのだった。
***
静かな、夜の路地。
獲物を求めてうろつく、男。
その服の内側には、あの警官を撃ち抜いた拳銃が入っていた。
夜はいい。
顔を隠してくれるし、自分ほどでないとはいえ、無法者も屯する。
そんな空間は心地よい。
人を殺すにも飽いてきた。
今日は久しぶりに女でも抱くか。
否、気分を変えておとなしそうな少年を拾っても……
そんなことを思ったとき。
路地に一人の少年がたっているのを見つけた。
長い黒髪。
街灯に照らされると少し茶に、橙に透ける髪が雪風に揺れる。
銀灰色の瞳に憂いを灯したその少年を見て、男は舌なめずりをした。
声をかける。
すると少年は顔をあげて、にこりと微笑んだ。
その無邪気なようで何処か色気を秘めた笑み。
男はその虜となった。
―― 今日の獲物はコイツだ。
言うことを聞かなければ殺してもいい。
そう思いながら、男は少年を見つめた。
彼の方も、満更ではない風だ。
穏やかに微笑みつつ、男の話に相槌をうち、同意して、あまつさえ体に触れても怒ることはせず。
なんだ。
相手もその気ならいいだろう。
手間が省けていい。
そう思いながら、男は自分が拠点としている小屋に少年をつれていった。
一通りのものは揃っている。
何か飲み物でも用意するか、と問えば少年の方から"自分が用意する"と申し出た。
なかなか気が利く。
もしかしたら何処かで召使でもしていたのだろうか。
否、そんな風には見えない身綺麗さなのだけれど。
そう思いながら男は煙草の煙を燻らせた。
元から、従順な人間は好きだ。
あの少年は見た目も麗しいし……
そんなことを思っていたとき。
少年がグラスを二つもって戻ってきた。
どうやら、ワインらしい。
こんなものはあったか、と問えば彼はクスクスと微笑んで、自分が持ってきたものだと言う。
誰だかと約束をしていたのだが、その相手に用事が出来てしまった。
その土産のワインを開けたのだ、と彼は言う。
ワインは好きだし、いいだろう。
気が利く子供を拾ったものだ。
そう思いながら、男は笑みを浮かべて、グラスの中身を呷った。
それから、少しして。
体が、変調をきたした。
呼吸が苦しい。
気分が悪い。
耐えかねてその場に踞ると同時、少年の靴が蹲る男の視界に映った。
「穢らわしい手でベタベタと……」
吐き捨てるように言う声。
それを聞いて男は少し驚いたように顔をあげた。
彼の視界に映ったのは、冷たい顔をした少年……チェーザレだった。
彼からすれば、ハニートラップ紛いの方法だって容易い。
ちょっと誘いをかければ、男はすぐに引っ掛かる。
そこからは、簡単だ。
飲み物を勧め、そのなかに毒を混ぜれば良いのだから。
「っぐ……っは……」
苦痛に悶える男。
その姿を暫し見下ろして何か考え込んでいた様子のチェーザレはあぁ、と小さく声をあげた。
「そうだった、なぜ死なぬと思ったのだが少量をとある人物に譲ってしまってな……
致死量には足らなかったようだ」
その言葉に、男は大きく目を見開く。
致死量に至らない程度の毒。
それを盛られたために、こんなにも苦しい想いをさせられているのか。
そう思いながら男はぎらつく瞳でチェーザレを睨み付けた。
「貴様……っ」
ナメやがって。
そう唸りながら、男はチェーザレに飛びかかろうとした。
しかしそれを軽くいなして、男の体を蹴り倒す。
―― そんな彼の瞳に点るのは残忍な光。
憎悪。
この男を殺す。
その思いだけが、チェーザレを動かしていた。
「適当に川にでも投げ捨てて物取りの犯行に見せかけようと思ったが気が変わった、貴様などその慈悲をかける程度にも値しない」
そういいながら、彼は服の内側から短剣を取り出した。
ぎらり、とその刃が煌めく。
チェーザレは口元に笑みを浮かべつつ、いった。
「ではどこから切り刻んでやろう…脚だろうか、腕がいいだろうか、いきなり首は面白くないだろう?」
なぁ?
そう問いかけるチェーザレ。
顔に似合わぬ狂気に、男は言葉を失う。
動揺し、恐怖した様子の男を見つめながらチェーザレは笑みを浮かべる。
そして、短剣を片手に男に歩み寄った。
殺される。
そう直感して逃げようとするが、逃げるに逃げられない。
もう体が言うことを聞かなかった。
チェーザレはそんな男の指先に短剣を添える。
そしてにっこりと笑みを浮かべながら、いった。
「貴様は強盗やそれによる殺人が多かったそうだな、ならその手はもいでしまおうか」
そこからにしよう。
そう呟くのと同時、冷たい刃物が押し当てられた……――
―― 策略と狂気と ――
(冷静を装う仮面を張り付けた顔。
その裏に潜むものは…狂気?)
(野獣ではないのだからいきなり襲い掛かるようなことはしない。
けれど心に灯った憎しみを消すことはできなくて)