チェーザレさんとジェイドのお話です。
この二人、少し共通点があったので…
そして新しく決まったイリュジアでの暦を使わせていただいてますよ←←
*attention*
チェーザレさんとジェイドのお話です
ほのぼの?なお話です
毒薬研究なお話
共通点がそこなので…←おい
イリュジアでの暦を使っています(協力者はナハトさん)
チェーザレさんの挑発的な態度も好きです♪
相変わらずの妄想クオリティ
ナハトさん、本当にすみませんでした!
以上がOKという方は追記からどうぞ!
イリュジア王国、騎士の棟……
賑やかな騎士たちの声が響き渡る、初冬の午後。
吹き抜ける風は日に日に冷たさを増し、昨夜は微かに粉雪が舞っていたと幼い騎士たちが騒いでいた。
「雪月(ネージドール)というだけありますね」
そう呟いて緑髪の男性は目を細める。
この国での暦。
その中で、この月を"雪月"と呼ぶのだ。
昨日今日と、その名の通り、ひんやりと冷えた空気になり、小雪も舞ったらしい。
今は、昼食後の休息の時間。
そこで、緑髪の男性……ジェイドは暫しの休息をとっていた。
小さく息を吐き出せば、それは白い靄となって空に消える。
もう昼なのにこんな風になるとは、と思いながら彼は苦笑を漏らした。
もう少ししたらきっと、自分たちの仕事も増えるだろう。
風邪を引く騎士も増えてくるだろうし、冷え込むことで動きが鈍くなる騎士もいる。
気を付けていてやらなくては……
そう思いながら、ジェイドは小さく息を吐き出した。
今は、特に目立った仕事もない。
だから、少し休憩をしてから、"仕事外の仕事"をこなそうと思っていた。
そっと、白衣のポケットに触れる。
布越しに触れる小さな塊の感触。
それを感じ取って、彼はふっと息を吐き出して、目を閉じる。
と、通路の向こう側から歩いてくる影を一つ、見つけた。
それを見てジェイドは"おや……"という顔をする。
「あ……」
歩いてきたその人物……最近この城に出入りするようになった傭兵、チェーザレもジェイドに気づいて、足を止めた。
そしてその瞳を細めて、いう。
「あぁ、お前は……
あの時は世話になったな」
彼はそう言う。
それを聞いて、ジェイドは目を細めた。
「いえいえ、医者として当然のことをしたまでですよ。
……もう大丈夫ですか?」
体調の方は、と彼はそう問いかける。
チェーザレはそれを聞いて苦笑を漏らしつつ、言った。
「あれから何日経っていると思うんだ。
流石にもう大丈夫だ、ちゃんと薬も飲んだし……ぶり返すようなこともないし」
そう答えるチェーザレ。
彼の発言に、ジェイドは穏やかに微笑んだ。
そう。
以前、チェーザレとジェイドは顔を合わせている。
と言っても、同じ騎士としてではなくて、医者と患者の関係で、だけれど。
数日前、チェーザレは体調を崩して寝込んだ。
そんな彼の診察をするために、ジェイドがチェーザレが滞在している家……ラヴェントの家を訪れたのだった。
大分苦しそうにしてはいたが、ただの風邪だった。
薬を処方して寝かせてやったら、それだけで良くなったようである。
「それならば良かったです。
あまり無理をしてはいけませんよ?
これから先どんどん寒くなりますし……」
そういって穏やかに微笑むジェイド。
チェーザレは"医者の言葉だしおとなしく聞くとしよう"と言って小さく頷いた。
そして彼はふっと口元に笑みを浮かべる。
"そうそう、そういえば……"と、チェーザレは口を開いた。
「そのポケットの中……何が入ってるんだ?」
「え?」
チェーザレの言葉にジェイドは大きく目を見開く。
そして反射的にポケットに触れた。
そんな彼を見て"図星か……"といわんばかりの顔をしつつ、チェーザレは言った。
「これでも私は気配に敏感でな、お前毒物を持っているだろう?それも、とても強力な……」
どうだ?とチェーザレは首を傾げる。
ジェイドはそれを聞いて幾度も瞬きをした。
……図星だ。
だって今の彼の言葉は、間違いなく事実だったから。
ジェイドは小さく息を吐き出して、ポケットの中に手を入れる。
そしてそれを取り出した。
彼が取り出したのは小さな小瓶。
中には、鮮やかな青色の液体が入っていた。
まるで硫酸銅の水溶液のような、否それよりも尚鮮やかな青色の液体……
自然界には存在しない青色。
それを見つめて、チェーザレは目を細める。
それか、と彼が呟くように言うと、ジェイドはこくりと小さく頷いた。
「えぇ。それにしても、鋭いですね。
何故わかったのです?そんな素振りを見せた記憶はないんですけど」
そう言うジェイド。
それを聞いて、チェーザレは目を細めながら言った。
「私の名はチェーザレ・ボルジア、毒物を研究しているなら私の名は一度は耳にしたことはあるだろう?」
なぁ?
そう問いかけるチェーザレ。
彼の発言に一瞬驚いたように目を見開いたジェイドは、すぐにその眼を細めた。
そして、"本当に、貴方が……"と呟くように言った。
どうやらやはり自分の名前は知っていたらしい。
そう思いながら、チェーザレは首から下げたペンダントを揺らした。
ジェイドはその行動に少し怪訝そうな顔をしたが……すぐに笑みを浮かべた。
「なるほど……貴方のはそれ、ということですか」
彼はそういいながら、チェーザレのペンダントトップを指さした。
そのトップの中には真っ白い粉が入っている。
ジェイドはそれを見て目を細めた。
「雪のように白く、甘美な毒薬……それが、あの有名な"カンタレラ"ですか」
ジェイドはそういう。
それを聞いて、チェーザレは口角を上げた。
正解、とは言わないあたりが彼である。
ジェイドはそれを見てふっと微笑んだ。
そして自分が手にした青い液体の入った小瓶を揺らす。
「これは陛下に預けられたものでしてね……
生憎と、貴方のように自作ではないのですよ」
その成分分析をしているんです。
まだ、少しも成果は出ていませんが。
ジェイドはそういって、溜め息を吐き出した。
「ほう、なるほど……
そのためにお前はそれを手に……今から研究の仕事か?
医者の傍ら大変だな」
チェーザレはそういう。
ジェイドはいえいえ、というように首を振って、いった。
「まぁ、趣味……息抜きのようなものですよ」
「毒薬の研究が趣味とは……なかなかに悪趣味だな」
「ふふ、常にそれ(カンタレラ)を持ち歩いている貴方に言われたくはないですよ」
ジェイドはそういって、くすくすと笑う。
普段自分の一番近くにいる警官の青年とはまた違った反応を見て、チェーザレも笑みを浮かべる。
そんな彼を見て、ジェイドは首を傾げつつ、言った。
「物は相談なのですが……
その毒薬を少し、いただけませんか?」
彼の言葉に、チェーザレは少しだけ驚いた顔をした。
次の瞬間には怪訝そうな顔をしつつ、言う。
「参考にはならんだろう、我がボルジア家でさえ秘伝のこれをこの国に伝わっているとは思えん。
偶然の一致……というのなら話は別だがその可能性も低いだろう」
それなのに渡す必要があるか?
彼はそう問いかける。
ジェイドはその言葉に目を細めながら、言った。
「それもそうですね。
けれど、興味があります。もちろん、使うためでなく、研究者として」
そういって目を細めるジェイド。
彼の発言にチェーザレは一瞬目を見開いた後、ふっと笑みを浮かべた。
そして、ペンダントを外す。
「薬包紙は、持っているか?それか小瓶」
そう問いかけるチェーザレ。
ジェイドは少し驚いたような顔をした後、彼の言動の意図を理解して目を細めた。
「少し待ってくださいね……これでいいですかね」
そういって、ジェイドはポケットから小さな瓶を取り出した。
キャップを外して手渡すと、チェーザレはそれを受け取って真っ白い粉を中に移した。
「ん、これでいいだろう?
それと……交換条件だ。お前の方のも渡すなら、これはお前の手中におさまろう」
そういって、真っ白い毒薬の入った小瓶を揺らした。
彼のそんな行動を見てジェイドはふっと笑みを浮かべる。
それから、もう一つ小さな瓶を取り出して少し移した。
「これで良いですか?」
彼はそう問いかける。
それを聞いて、チェーザレは小さく頷いて、小瓶を交換した。
「ありがとうございます、研究対象として使わせていただきますよ」
使うつもりはないのでご安心ください。
そういって微笑むジェイド。
チェーザレはそれを聞いて目を細めた。
「誰が致死量を渡すか、優秀な研究者なら少量でも構わんはずだろう?」
そういって挑発的に笑みを浮かべながら首を傾げる。
ジェイドは彼の物言いに少しだけ驚いた顔をしたが、すぐに笑みを浮かべた。
「えぇ、そうですね。
これだけあれば、成分分析も出来るでしょう」
助かります、ありがとうございます。
そういって穏やかに微笑むと、チェーザレはふっと笑みを浮かべながら、青色の液体が入った小瓶を揺らした。
「……カンタレラとはまた随分と違うな。
だが随分と協力な毒薬のようだ……」
美しい毒薬。
そんな共通点があるとは。
そういいながら、チェーザレは目を細める。
ジェイドも彼の言葉に同意するように頷いた。
「そうですね。
こんなにも美しいのにごく僅かな量で人の命を奪える……
なんとも、恐ろしい話です」
ジェイドはそういいながらふたつの瓶をポケットの中にしまう。
そしてふっと息を吐き出した。
「研究サンプルが増えて助かりましたよ。
……とはいえ、この毒を使うのは貴方くらいなものでしょうけど」
ジェイドはそういって笑みを浮かべる。
チェーザレはそれを聞いてそれもそうだな、と笑いながら言った。
「まぁ、ありがたく保管させていただきますよ。
チェーザレ公……エデタンティーノ公」
ジェイドは書物で読んだ"通称"を紡ぐ。
チェーザレはその呼び名に少しだけ驚いた顔をした後、懐かしいなといわんばかりに目を細めたのだった。
―― Double sweet poison ――
(ふたつの、甘美なる毒薬。
雪のように白い一つと、海のように青いもう一つ)
(美しい二つを交換して。
灯す笑みは、よく似たそれで…?)