大佐殿とフォルのお話です。
こういう不穏な会話をしてる大佐殿とフォルを書きたくて…←
*attention*
大佐殿とフォルのお話です
シリアスなお話です
魔力のお話です
大佐殿の魔力は特殊なので…
フォルはこういうちょっかいを仕掛けます←
世界改変さえ出来る大佐殿
相変わらずの妄想クオリティ
ナハトさん、本当に澄みませんでした!
以上がokという方は追記からどうぞ!
襲い来る魔獣を次々と撃ち落とす。
強い、強い、破魔の魔力。
普通の人間なら持ち得ないその魔力を持つ隻眼の少年は、一度自分の武器であるマスケットを下ろして、息を吐いた。
遠距離武器で助かった、と思う。
一応一撃で仕留めるようにしてはいるが、それでも血は出るもので、もし近距離武器で戦っていたとしたら、返り血でどろどろに汚れていたことだろう。
そう思いつつ、彼……シュタウフェンベルクはマスケットを握り直した。
もう周囲に気配は感じない。
群れで襲ってくるタイプの、特殊魔力使いの魔獣……
その討伐に、彼が駆り出されていたのだった。
以前は、天使の魔力を持つフィアと一緒にこういった任務に挑んだ。
しかし、今日は一人だ。
空中戦になる恐れはなかったし、魔獣自体もそこまで強くはない。
群れでかかってきたとはいえ、シュタウフェンベルクにとっては余裕だった。
悪魔の魔力だろうが、堕天使の魔力だろうが、彼には関係ない。
悪を、穢れを、祓うことが出来るのが彼の魔力だ。
そう自分で考えたところで何だか酷く悲しくなって、シュタウフェンベルクは息を吐き出す。
じくりとした痛みが、胸にあった。
特殊な、魔力。
伝説とも呼ぶべきその魔力を持つ人間は、シュタウフェンベルクが知る限り他にはいない。
悪魔とも天使とも、はたまた半端者とされる堕天使や死神の魔力といったものとも違う、特別な魔力……――
それは重宝される一方で、恐れられる力でもあった。
強すぎる魔力。
人とは違う魔力。
それを持つ彼を恐れる人間も、確かにいるのだ。
"彼は何かをしでかす人間だ"と。
……もっとも。
「確かに、しでかすつもりではいるのだけれど」
そう呟いてから彼は目を閉じる。
そうして頭に浮かべるのは、自分のオリジナルの記憶だった。
かつて失敗した暗殺計画。
今度は、成功させてみせる。
悪魔が、図らずも仲間に牙を剥くことになる前に、あるいはそうなってしまったら。
例え自分は犠牲になっても、戦う覚悟はしていた。
そのために、授けられた魔力だ。
そうおもうようにしていた。
しかし。
「相変わらず君はバカだね」
不意に聞こえた声にシュタウフェンベルクははっとする。
ぼうっとしていた。
気配を、探るのを忘れていた。
そう思うと同時、後ろから抱きすくめられる。
びくりと体を強張らせれば、その犯人はするりとシュタウフェンベルクの腰を撫でつつ、耳元で"チェックメイト"と囁いた。
「僕が君を殺すつもりだったら君はもう死んでるね」
「っ、離れろフォルっ」
そういいつつ魔力を向ければ、犯人……もといフォルはあっさりと離れた。
しかし彼は面白がるような顔をしたままだ。
「なにむきになってるのさ。僕は事実を述べたまでだよ?」
君があの状況なら死ぬって事実だろう?
そういいながらフォルは首をかしげる。
シュタウフェンベルクは彼の言葉にきっと表情を険しくしたが、それ以上は何も言わなかった。
……わかっている。
フォルのいう通りなのだ。
今くらいぼうっとしていたら、平気で狙われる。
それがわかっているから、フォルに言い返すことができなかったのである。
しかし、それとは別に言い返したいことがある。
「……貴様に馬鹿等と言われる筋合いはないな」
「馬鹿じゃないか。自分をなげうってでもこの世界を守る、なんて」
そういってフォルは肩を竦める。
そしてシュタウフェンベルクが反撃するより先に、いった。
「だってそうじゃないか。君にとって、この世界はそんなに価値があるものかい?」
「当たり前だ」
シュタウフェンベルクはそう即答する。
フォルは苦笑を漏らして、"そうやってすぐに返事をする辺りがバカだっていってるんだよ"といった。
そして、ずいっとシュタウフェンベルクに顔を近づけつつ、いった。
「君がこの世界を守ったところで君は救われない。
魔術の代償に死ぬか、生きたとしても"ヒトゴロシ"として、残りを生きるしかないんだよ」
君にとって利点は皆無じゃない。
フォルはそういう。
シュタウフェンベルクの言葉に眉を寄せた。
それから、小さく息を吐き出して、いう。
「私はそれでも構わない。それを、望んでいるんだ……」
シュタウフェンベルクはそういう。
フォルは彼の返答に口角をあげた。
"君らしい反応だなぁ、でも面白くないよ"という。
「本音を口に出してみたらどうなんだい?
死にたくない、って、誰にも嫌われたくなんかない、ってさ」
フォルはシュタウフェンベルクにそういう。
シュタウフェンベルクは眉を寄せて彼に反論しようとしたが、それより先にフォルは言葉を紡いでいった。
「英雄になりたいとは確かに思ってないだろう、でも君は確かに思ってる。
死にたくなんかないし、愛しい副官君や仲間、弟と慕ってくるあの子にだって、嫌われたりしたくない。
まして、悲しませたりなんかしたくない……そうだろう?」
そういうフォル。
シュタウフェンベルクはぐっと唇を噛み締めた。
―― この堕天使は、どうして……
どうしてこうも、自分の神経を逆撫でするようなことをいうのが上手いのか。
シュタウフェンベルクはそう思う。
……それは、図星だった。
人間として、当然だろう。
嫌われたくなんか、ない。
死んで悲しませるのも嫌だし、自分だってそんな彼らと別れるのは嫌で……
「……それ、でも」
シュタウフェンベルクは掠れた声をあげる。
フォルは口を挟まず、そんな彼の言葉を待った。
「それでも、私はやらなくてはならない……
私は、そのためにこの魔力を持ったのだから……」
シュタウフェンベルクはそう呟く。
フォルはそれを聞いて興味なさげに"ふぅん"と声をあげた。
それから、シュタウフェンベルクの顔を覗きこみながら、いう。
「ねぇ、大佐殿?君がそう思わなければならないほど、この世界は守るべきものかな?」
そう問いかけるフォル。
シュタウフェンベルクは"どういう意味だ"と問いかける。
フォルは目を細めつつ、そんな彼にいった。
「そのまんまの意味だよ。君がそうして躍起になって悪魔を殺したところで、またどうせ新しい悪魔が出てくる。
それなのに君は、自分をなげうってこの世界を守るの?君の行動が君の、この世界の未来を変えるとも限らないのに?」
追い詰めるようにそういうフォル。
シュタウフェンベルクは言いかえそうとしたが……上手い言葉が出てこない。
「……っ」
「ほら、そんな価値ないじゃないか。
……君には、そんな状況を打開する力があるのに勿体ないねぇ」
愉快そうにそういってフォルは笑う。
シュタウフェンベルクはその言葉の意味を読み取りきれず怪訝そうな顔をしたが……
フォルは面白そうに笑って、"こっちの話だよ"と笑った。
―― 君なら、この世界の秩序を組み替えることが出来るのに。
フォルはそう思いつつ笑みをうかべていた。
シュタウフェンベルクが持つ魔力。
それは使い方次第では、この世界の秩序さえも変えてしまえる。
堕天使の魔力の持ち主であるフォルが絡めば、それこそ自由自在に……
「こんな世界、壊しちゃえばいいんだよ……君は新しい世界をつくれるのだから」
「五月蝿いっ」
シュタウフェンベルクはそういって、フォルに向かってます毛っとの引き金を引いた。
フォルはひらりとその攻撃を避けて、楽しそうに笑った。
「あははは、今は冷静になれないかぁ。いいよ、待っててあげる……」
―― 君が望んだらいつでも叶えて挙げるよ。
そういってフォルは笑いながら姿を消す。
シュタウフェンベルクはフォルがいた場所を睨み付ける。
そして、小さく息を吐き出したのだった……――
―― 望まぬ魔力と世界改変 ――
(望んで持った力ではない。
けれどこの魔力は、確かにこの世界に必要だから…)
(君がその気になれば、世界を変えることさえ出来る。
それなのにどうして君はこの世界に拘るんだい?)