アドリアーノさんとアクロのお話です。
アクロは自分の目の色があまり好きではなかったのよ、という話で…
ひさびさなペアも、楽しいです…
*attention*
アドリアーノさんとアクロのお話です
ほのぼの?なお話です
時々ちらっとシリアス
アクロは冗談混じりに話す癖があります
アドリアーノさんもそれにからかわれるのに慣れてきてたら可愛いかなとか…
二人の目の色は少しにてるので…
相変わらずの妄想クオリティ
ナハトさん、本当にすみませんでした…!
以上がOKという方は追記からどうぞ!
明かりを抑えた、騎士の棟の一角にある部屋。
そのシャワールームで、プラチナブロンドの少年……アクロはシャワーを浴びていた。
寝起きの頭を冷やし、目覚めさせていく冷たいシャワー。
コックをひねって流れる水を止めると、彼はふるふるっと頭を振った。
濡れた髪が背中に流れる。
いつもはくるくると立て巻になっている彼の髪も、濡れている今ではただ背に流れて、ストレートになっている。
どうにもこれは見慣れないな、と思いながら苦笑して、彼はシャワールームの外に出た。
タオルで髪を拭いて、長い髪をタオルで拭う。
そして、そのタオルを肩にかけながら、彼は部屋に戻った。
「あれ、もう来てたのか」
アクロは部屋に戻ると、目を丸くした。
というのも、いつも一人きりの薄暗い部屋に、もう一つの影があったから。
鮮やかな赤色の髪の青年……アドリアーノの姿が。
「もうって……もうすぐ日暮れだぞ?」
そういいながら、アドリアーノは窓の外に視線を向ける。
そんな彼の言葉にアクロは視線を窓の方へ向ける。
すると、アドリアーノの言葉通り、既に陽は暮れはじめていた。
「うわ、本当だ……」
びっくりした、とアクロは言う。
いつも通りに目を覚まして、いつも通りにシャワーを浴びに行った。
そのつもりだったのだけれど……
「いつの間にか、こんなに日が暮れるの早くなってたんだな……」
「おいおい、気づけよな」
アドリアーノはそういって笑う。
お前にとって日没時間は大事だろう、と。
彼の言う通り。
アクロは日光に弱いために、昼間外に出られない。
夜にならないと、外に出ることが出来ない。
そんな彼にとって、日没の時間というのは重要で、夏が終わり、秋が来れば、もっと早く日が暮れるようになる。
それは、彼にとって好ましいことだった。
「それで……アドリアーノはこんなに早く俺のところに来てくれたのか?」
アクロは髪を拭きながら、アドリアーノに首を傾げて見せる。
すると彼はぼっと顔を赤くして、視線を揺らした。
「……俺だって、一人でいるのは退屈なんだよ!
挙句、外に一人で出るなっていわれるしさ……」
アドリアーノはそうぼやく。
それを聞いて、アクロはくっくっと笑った。
「あぁ、そうだったな。
お前が一人で外に出掛けると、色々危なっかしいから」
そういいながら、アクロはアドリアーノの方へ歩み寄る。
ぎゅ、と後ろから抱き付けば、彼は小さく声を上げる。
「い、いきなり何す……っていうか、髪乾かせよ!」
風邪ひくだろ!とアドリアーノは声を上げる。
照れを含んだその声にアクロが笑うと、アドリアーノは更に拗ねたような顔をする。
アクロは"はいはいわかったよ"と返事をしながら、彼から離れた。
そして、ドライヤーで髪の毛を乾かす。
櫛で漉いていけば、いつも通りに髪がくるんと巻かれた。
「お前のその髪……」
アドリアーノはぽつりとつぶやく。
それを聞いてアクロはドライヤーを止める。
ある程度髪が乾いたところで、彼のところに戻りながら、首をかしげた。
「俺の髪がどうした?」
「や……さっきの、まっすぐだったのがちょっと違和感で」
アドリアーノは頬を引っ掻きながらそういう。
それを聞いて、アクロは小さく笑いながら、言った。
「はは、それは俺もさっきシャワールームで思ってた。
いつもこんな調子だからな……」
そういいながらアクロは乾いた髪を指先で弄る。
カーラーをあてて巻いた髪のようにくるんとなった髪。
まるで女性のようなそれ。
アドリアーノはそんな彼を見ながら、首をかしげた。
「生まれつきか?」
そういいながらアドリアーノはそっと彼の髪に触れる。
そのまま指先で彼の髪を漉けば、癖のある髪がつるりと滑った。
アクロはそんな彼の行動にくすり、と笑う。
そして、自分の髪に触れるアドリアーノに仕返しのように触れた。
「俺もアドリアーノくらい短くしたら、こうはならないかもしれないけどな」
そういいながら、アクロはアドリアーノの髪を撫でる。
柔らかな、赤色の髪。
それを指先で撫でていけば、アドリアーノは擽ったそうに首を竦める。
「何だ、んな風に撫でんな……」
アドリアーノは小さく笑いながらそういう。
それを聞いて、アクロは小さく笑って、首をかしげた。
「ん?そういうアドリアーノの反応が面白いからだよ」
そういいながら、アクロはアドリアーノの髪を撫でつけ続ける。
そして、それだけには飽きないかのように、もう一方の手でアドリアーノの頬を撫でた。
色の白い肌。
それを撫でつけながら、アクロは目を細める。
アドリアーノはといえば、彼の反応に瞬きを繰り返す。
それから、小さく息を吐き出しながら、言った。
「面白がってやるなって……んっ」
くすぐったさに思わず首を竦めれば、アクロはくつくつと笑った。
そして紅色の瞳を細めながら、言う。
「あんまり可愛い声上げると、このまま襲うぞ?」
そういいながら、アクロはアドリアーノの華奢な体をベッドに倒した。
彼の行動にアドリアーノは目を見開いた。
紫っぽい瞳が、困惑したように、照れたように、揺れた。
アクロはそんな彼を見てふっと笑った。
そして"冗談だよ"といいながら、彼はアクロの頬を撫でながら、いう。
「大丈夫だよ。
俺も寝起きだし、流石に襲ったりはしないさ」
そういってアクロは微笑んだ。
しかし、それでもアドリアーノの傍から離れようとはしない。
彼の様子に、アドリアーノは首をかしげた。
「……どうしたんだよ、アクロ」
何だか、いつもと雰囲気が違う気がする。
アドリアーノがそういうと、アクロはふっと微笑む。
それから、そっと自分の目元に触れた。
「……俺さ」
呟くように言うアクロの声は、やはりいつもと少し雰囲気が違っていた。
寂しそう、というのか、悲しそう、というのか……
とにかく、いつもの明るい雰囲気とは明らかに違う表情と、声色。
それを感じ取って、アドリアーノはすっと目を細めて、彼を見つめる。
アクロはそんな彼を見て微笑んだ。
そして、目を閉じながら呟くような声で、言う。
「……俺、この目嫌いだったんだ」
アクロが言ったのは、そんなこと。
彼の指が触れているのは、彼自身の瞼だった。
彼の瞳。
それは、鮮やかな赤色だった。
それは、アルビノという特殊な体質の彼特有の色でもある。
蒼などの薄い色になることもあるらしいのだが、アクロはまったくといっていいほどメラニン色素が無い性質らしく、瞳は血管が透けて見える鮮やかな赤色なのだという。
それが嫌いだったと、アクロはいった。
どうしてだ、とアドリアーノが問いかければ、彼は少し困ったような顔をしながら、言った。
「俺が幽霊っていわれる由縁だし……
やっぱり、ちょっと不気味に見えるだろ?」
だから、嫌なんだ。
事実、顔見たやつに怯えられたりもしたし。
アクロはそういった。
アドリアーノはなるほどな、と小さく呟く。
確かに……見た目でいくなら、少し不気味に見えるかもしれない。
……アドリアーノ自身はそうは思わないけれど。
彼が照れつつそういってやると、アクロは照れくさそうに笑った。
それから、アドリアーノの頬に、瞼に、そっと触れながら、言う。
「お前がそういってくれるのは嬉しいんだ。
それに……俺、お前にあってからこの色も好きになったよ。
だって……」
―― お前の目や髪の色に似てるから。
「お前の目の色も髪の色も、俺大好きだよ」
そういって、アクロは微笑む。
その表情は本当に嬉しそうだった。
アドリアーノは彼の思わぬ言葉に幾度か彼が好きだといった瞳を瞬かせる。
そして、ふっと息を吐き出しながら、言った。
「そうかよ……そりゃ、良かった」
「あぁ。好きだよ……お前が好きだから、俺も自分の目が好きになれる」
アクロはそういって微笑むと、アドリアーノをぎゅっと抱きしめながら、ベッドに転がった。
アドリアーノは彼の取り留めもない行動に瞬きをしつつ、彼を見た。
「……眠いのか?アクロ」
「ん。……いや、眠いわけじゃないけど……お前ともっとこうしてたいんだよ」
ダメ?
そう問いかけるアクロにアドリアーノは瞬きをする。
それから、ふっと息を吐き出しながら、"仕方ねぇな"と呟いたのだった。
―― 嫌うものと、好くものと ――
(俺は、俺自身のこの瞳が嫌いだ。
でも、お前のその瞳とよく似ているから俺はそれさえも好きになれるよ)
(俺を抱きしめる、細い白い腕。俺を見つめる赤い瞳。
俺も、それは嫌いではないから…)