「Special lesson」の続きなお話です。
大騒ぎな海辺が書きたかった…
多分あとちょっと続きます(笑)
*attention*
大人数の話です
メインは多分赤髪金髪コラボとワルキューレコンビ&ペル?
ほのぼのなお話です
「Special lesson!」の続き
多分被害者は主にアネット
冗談で済まさないライニさん
ラストでちょっとデレた
冗談が通じない大佐殿
弟可愛い可愛いな大佐殿が可愛い
相変わらずの妄想クオリティ
ナハトさん、本当にすみませんでした!
以上がOKという方は追記からどうぞ!
強い陽射しを受けて、赤髪の少年……アネットは砂浜にぐたりと潰れた。
はぁはぁと走り続けていた犬のような息が漏れる。
「つ、つかれた……腕いてぇえ……」
アネットはそういいながら自分の脇に転がったボールを弾く。
ころころと転がってきたそれを拾い上げたベーメは小さく息を吐き出して、いった。
「しょうがないなぁ……
ま、残り二人も潰れてるし休憩にしよっかぁ」
「そうだねえ。これで続けても意味ないか」
そう同意したダリューゲが視線を向ける先には、既に屍と化しているヒムラーとアイヒマン。
ただでさえ運動は苦手なのに散々しごかれたから、瀕死状態である。
元々彼らのためにしている訓練なのに当人たちがつぶれているのではどうしようもない。
休憩を言い渡されたアネットはぐったりと潰れた。
そんな彼の傍には隻眼の少年……シュタウフェンベルクとその副官であるヘフテン、そして二人の友人でもあるカナリスがいた。
さっき合流した彼らはしごき倒されているアネットたちを見ながらクーデターが云々と話をしていた。
この状況を打開してくれるならクーデタでも何でも構わない。
そう思いながらアネットは彼らを見上げて、いった。
「ヴィルー、シュタウフェンベルクさんー……
クーデターするなら早くしてくださいよ……
まじ死ぬかと思ったんすけど……」
幾ら体力バカのアネットとはいえ、しんどい。
固い革ボールをぶつけられまくって全身ぼろぼろだ。
挙句、慰めてほしい恋人がその中心ときたものだから精神的にもボロボロである。
助けてくれ、という視線を送るアネット。
しかし彼らが応えるより先に、ひくり、と表情をひきつらせたのは金髪の少年……ハイドリヒで。
「……誰がいつ、クーデターを?」
低い声で、彼はいう。
それを聞いてアネットはぱちり、と瞬きをした。
「へ?」
何でそんな怖い声?
そう言いたげなアネットを見下ろして、ハイドリヒはきっぱりといい放った。
「アネットさん……貴方を国家反逆罪で逮捕します。
拷問ですね拷問、革製で済まないですよ鉄製ぐらいいきますかね」
そういいながらハイドリヒはアネットを見つめる。
彼の言葉にアネットはばっと体を起こした。
そして信じられないといわんばかりの表情を浮かべつつ、言う。
「いやそれは死ぬぞ!!」
鉄球って!と声を上げる彼。
しかし哀しいかな、ハイドリヒはひとりではない。
起き上がったアネットの両脇から彼の部下である少年たち……ベーメとダリューゲが彼の腕をむんずと掴んだ。
そんな彼らを見て、憐れそうな表情を浮かべるのはシュタウフェンベルクとヘフテン。
カナリスに至っては"僕は昼食を作りに来ただけなので"といってさっさと退散している。
「ちょ、助けて!」
憐れっぽく悲鳴を上げる彼を見て、ヘフテンは目を潤ませつつ、言う。
「頑張ってくださいね……」
「アネット、アーメン」
シュタウフェンベルクもそういって目を閉じた。
本気で祈られている。
命がないということわかった上でそんなことを言うか?!
そう思いながらアネットは彼らに叫ぶ。
「アーメンしないで!?」
「神のご加護を」
お祈りしていますよ、とヘフテンも言う。
「いくら神でも無理なものは無理だからな!!」
アネットはそう叫ぶ。
神頼みしようが何しようが、鉄球に当たれば死ぬ。
死ななくても大怪我するだろう。
アネットはそう騒ぐ。
ハイドリヒはそんな彼をやや喧しそうに見つめていた。
それから、ちらとダリューゲとベーメに視線を向ける。
すると二人はアネットをむんずと掴んで、立ち上がった。
「はいはい二回戦目行きますよ」
ハイドリヒは二人に命じてアネットを引きずらせる。
アネットはそれを聞いて悲鳴を上げた。
「やだあああああああ!!」
あぁああ、と声を上げるアネット。
シュタウフェンベルクとヘフテンはそれを見送る。
そして彼が無事に帰ってくるといいな、と思いながら目を細めていたのだった。
***
それからどれくらいの間しごかれていただろう。
しごかれるべき二人は既にダウンして日陰に放置されている。
おかげで、鬼教官三人のしごきを受けるのはアネット一人になっていた。
しかも、ハイドリヒの命令によりボールは本気で鉄球に変えられている。
投げるのも重くて面倒なんだけどぉ、などといいつつびゅんびゅん投げつけてくるベーメたちが恐ろしい。
スコルツェニーはやや不憫に思っているのか初めは遠慮していたようだが、どんどんその遠慮もなくなってくる。
アネットはそれに打ち殺されないように気をつけながら、必死に避けまわった。
回避率は大分上がった。
……そう、信じたい。
アネットはぐったりと地面に潰れる。
流石にバテてきたらしい。
そんな彼を見て、ハイドリヒは小さく息を吐き出した。
「まあ、今日のおかげで次からの任務で身軽になったことに気づくと思いますよ」
「そりゃな。それくらいなってないと……
俺、今日がんばった意味がない……
ラインハルトに虐められて……」
そういいながらアネットはじと目でハイドリヒを見る。
慰めてほしいときにこうして虐められるものだから、たまったものではない。
そう言いたげな視線を向けるアネット。
ハイドリヒはふん、と鼻を鳴らして目を逸らした。
それから、ふぅと息を吐き出す。
そしてぽつり、と呟くように言った。
「……これで血まみれ泥だらけの野犬のような帰還姿を見なくて済みそうです」
今日の訓練の成果が身についたならば。
呟くようにそういうハイドリヒ。
アネットはそれを聞いて目を輝かせた。
「ラインハルト……!」
「ほらくっつかないでください、汗臭いです」
べりっとアネットを引っぺがすハイドリヒ。
アネットはそんな彼を聞いてむぅ、とむくれたような顔をする。
「この野郎……傷心の恋人慰めるくらいしてくれたって」
ぼそぼそとアネットが呟いた、その時。
くいくい、と彼の服を誰かが引っ張った。
アネットはそちらに視線を向ける。
「……ん?」
どうした?と向けた視線の先。
そこにいたのは、長い黒髪の少年……ペル。
彼は手に何かを持ってアネットを見上げている。
「これ、お昼ご飯……提督が、作ってくれた」
そういいながら彼が差し出しているのは、皇御国の"オニギリ"という食べ物。
それを持ってきたペルをまじまじと見つめていたペルだったが……
「……っ」
「わ……」
不意にペルが悲鳴を上げた。
それは、アネットが急に彼を抱きしめたからで。
「癒しだ……」
そう呟くアネット。
彼はペルを抱きしめたまま、シュタウフェンベルクの方を見た。
「シュタウフェンベルクさん、これもらっていい?!」
そう声を上げるアネット。
癒し系なペルが、気に入ったらしい。
しかし。
そんな彼の発言に、シュタウフェンベルクは一瞬目を見開いて……やがて、すっと目を細めた。
そして無言でマスケットを構える。
「ペルはやらないぞ、アネットでも」
マスケットの引き金に指をかけつつそういうシュタウフェンベルク。
アネットはそれを見て目を見開いた。
「っ!?な、じょ、冗談、冗談っすよ!やだなあぁ!」
あはははっと笑うアネットだが、その顔には汗が流れている。
シュタウフェンベルクはそんな彼を暫し見つめていたが、やがてマスケットを下した。
そしてじっとりした目でアネットを見つめながら、いった。
「ペルがいるから撃ちはしないが……
冗談が過ぎるぞ、アネット」
「お、おう……」
アネットはちいさく頷いた。
シュタウフェンベルクの真剣さに固まりながら。
シュタウフェンベルクは小さく息を吐き出した。
それから、気を取りなおしたようにいう。
「……後、腕は冷やしておいた方が良い。
失くすことになるかもしれないからな」
「アンタが言うと洒落にならないな!」
アネットはそう叫ぶ。
シュタウフェンベルクはそんな彼の反応を他所に小さく息を吐き出しつついった。
「目はあれだが…腕は苦労するからな。
いや、目も大変だから、砂煙とか入ってるかもしれないから洗ったほうがいい」
「ほんと、おっかないことばっかいう!」
その通りにするけどな!とアネットは叫び、ガーデルマンの方へ行く。
彼ならばどうにか手当をしてくれると思って。
「……?あの人、どうしたの」
「手当してくるって」
シュタウフェンベルクはペルにそう答える。
そして遠ざかるアネットの背を見送って目を細めていたのだった。
―― Uproar ――
(大騒ぎの海辺。
その原因は絶対俺じゃないからな?!)
(思わぬ反応に驚いた。
何も、あんなに怒ることないじゃあないか…冗談なのに)