シュタウフェンベルク兄弟でのお話です。
先刻のトレスコウさんとの話の続き的な感じで…
ペルを守るために突き放そうとする大佐殿を書きたくて…←
*attention*
シュタウフェンベルク兄弟のお話です
「Distance and…」の続きです
シリアスなお話です
ペルを守るために、と思う大佐殿を書きたくて…
互いの思考がすれ違うのって萌えるなって(^q^)
弟たちを心配するお兄さんたちもいいかなと
相変わらずの妄想クオリティ
ナハトさん、本当にすみませんでした…!
以上がOKという方は追記からどうぞ!
静かな、夜。
クラウスはいつものようにペルと一緒にベッドに入っていた。
しかし、いつもと違って眠る事は出来そうにない。
それは、昼にあったトレスコウとのやり取りが故。
ペルを想うなら距離をとれ。
それが彼のためだ。
自分の立場をわきまえろ。
「……わかって、居る」
クラウスは小さく呟く。
しかし自分のその声が、言葉が、全て嘘くさく聞こえた。
本当はわかってなんか、いない。
否、わかっているけれど……
彼に出会ってから、色々変わった。
昔は、何ら迷いはなかった。
命を失う事にも、何にも。
しかし、今は違う。
自分が死んだら……
ペルは、一体どうなってしまうだろう。
否、死ななかったとしても……
逮捕されたら、彼は……彼も、巻き込まれてしまうかもしれない。
そう考えるだけで、胸が苦しくなる。
彼のことが、心配になる。
と、その時。
「ん……パーパ……マーマ……」
小さな声が、聞こえた。
クラウスは視線をそちらへ向ける。
今のは、ペルの寝言。
それを聞いて、クラウスは顔を歪めた。
「やはり、あの時……」
あのとき。
彼が、彼の父親と会ったとき……
彼を、帰らせるべきだっただろうか。
クラウスはそう思いながら、溜め息を一つ。
探しにいこうか。
そう思ったけれど……
今更、だ。
彼の父親が何処に居るかは、わからない。
手がかりもなしに探しにいくのは難しすぎるだろう。
だとしたら……――
どうしてやることが、ペルには……
「ペル……
私の傍に、居ては……」
小さくつぶやきながら、クラウスはそっとペルの額を撫でてやったのだった。
***
そんな、次の日。
クラウスは、ペルに声をかけた。
不思議そうに振り向く彼に少し怯んだが……クラウスは小さく息を呑んで、言った。
「……ペル」
「?なぁに?シュタウフェンベルク。
今から、帰るんだよね?」
そう問いかけるペル。
そう。
今日は、今からディアロ城に帰る。
ぺルもしっかりと帰る支度をしてあった。
クラウスはそんな彼をじっと見つめる。
それから、静かな声で言った。
「ペルは、アレクサンダー兄さんと一緒に、残れ」
「え……?」
思わぬ言葉にペルは固まる。
どういうこと?と問いかける彼の表情は、強張っている。
クラウスはそんな彼の頭をそっと撫でてやりながら、言った。
「……残れ。
大丈夫だから……」
「え……」
詳しい理由は言わない、クラウス。
どうして、と言いながら縋ろうとするペルの手を解きながら、クラウスは言った。
「アレクサンダー兄さんも忙しいから、ずっと一緒にはいられないかもしれないが……
必ず誰かしら、使用人は此処に居るようにするから」
そういうと、クラウスはそのまま部屋を出て行った。
その姿を、ペルは追いかけようとした。
しかし、その前にドアが閉まる。
―― "どうして"
そう問いかけるペルの声が、ドアの向こうで聞こえた気がした……
***
クラウスはベルトルトと一緒に、カルフィナの仕事場に向かっていた。
少し、そこに顔を出してからでないといけない。
シュヴァイツァーが運転する馬車に揺られながら、二人は仕事に向かう。
「……クラウス」
ベルトルトは弟に声をかける。
クラウスは兄の方を向いて、首を傾げた。
「どうした、兄さん?」
そう問いかける彼に、ベルトルトは眉を寄せる。
それから、小さく呟くような声で言った。
「……いきなり、どうしたの。
ペルをあんな風に……」
ベルトルトの問いかけにクラウスは目を伏せる。
それから、小さく溜め息を吐き出しながら、言った。
「私だって、こんなことしたくない……
けれど、叛逆者の弟として見られるくらいなら……」
クラウスはそういう。
ベルトルトはそんな弟を見つめて、眉を下げた。
彼の気持ちは、わからないでもない。
自分をまきこむことさえ、恐れている彼なのに……
本来血の繋がりもないペルを巻き添えにするのではないかと不安になるのは仕方ない。
けれど……
「良かったの?」
ベルトルトはそう問いかける。
それで本当に良かったのか、と。
クラウスはその言葉に顔を歪めて、小さく呟くような声で言った。
「……私にも、よくわからない。
いったい何が正解であるかが……」
こうしてペルをアレクサンダーに預けて来てしまったこと。
突き放すようにして一人にしてしまったこと。
その理由さえ、説明してはやれなかった事……――
シュタウフェンベルクは小さく首を振った。
これで良かったのだと、自分に言い聞かせるように……――
***
―― 一方で。
ペルは、アレクサンダーと一緒に、田舎の城にやってきていた。
仕事で忙しいこともあるアレクサンダーだが、なるべくちゃんと一緒に居られるように……
「此処なら手伝いの人たちも居るから、な?」
アレクサンダーはペルの頭を撫でながらそういう。
しかし彼はぷいとそっぽを向いてしまった。
その瞳は微かに潤んでいる。
先程からずっと、この調子だ。
やはりクラウスに置いて行かれたのが効いているのだろうか。
そう思いながら、アレクサンダーはそんな彼の頭を優しく撫でてやった。
「……大丈夫だよ、ペル」
クラウスは、君を嫌いになったわけじゃないはずだよ。
大丈夫、大丈夫。
アレクサンダーはそうペルを慰める。
しかしペルは顔をあげようとしなかった。
「……とりあえず、ごはんにしようか」
気を取り直したように、アレクサンダーはペルにいう。
しかしペルはぷいっと他所を向いて、歩き出した。
「あ、ペル……?」
「ご飯、いらない……寝る」
そういってペルはとぼとぼと部屋に向かっていく。
そんな彼の様子を見てアレクサンダーは小さく息を吐き出した。
「……あんなに落ち込んじゃって」
クラウスは何を考えているんだろうなぁ、と小さく呟くアレクサンダー。
それでもペルに何かしら食べさせなければならないと思ったのだった。
―― 理解出来ない思考 ――
(許してほしい。
お前を傷つけるためにこんなことをしているわけではないんだ)
(一体どうして?
僕には、理解が出来ないよ…)