西さんと大佐殿のお話です。
ペルの乗馬を教えている西さんと、それを依頼した大佐殿の会話を書きたくて…←
*attention*
西さんと大佐殿の話です
ペルに乗馬を教える西さんとそれを依頼した大佐殿のお話です
ほのぼのなお話です
この二人のやり取りを書きたくて…←
ペルという人物が良く分かってない西さんを書いてみたかったのです(^q^)
そういえば大佐殿とペルの接点って…ペルの本名がちょっと大佐殿に関係してるような、なだけか←おい
何だかんだでこういう気質だったら萌えるかな、という妄想でしたすみません←
相変わらずの妄想クオリティ
ナハトさん、本当にすみませんでした…!
以上がOKという方は追記からどうぞ!
「ふぅ……」
中庭のベンチに腰掛ける、短い黒髪の青年。
七三に分けた髪をそっと押さえつつ、彼は小さく息を吐き出す。
空を見上げる彼……西はそっと目を細める。
蒼い蒼い空。
白い雲が薄く刷毛ではいたように流れている。
穏やかな空気。
降り注ぐ陽射し。
それが心地よい。
髪が吹き抜けた風に少し揺れた。
そんな彼に鼻先を近づける馬。
その鼻面を撫でてやりながら、西は微笑んだ。
さっきまで、ある少年の乗馬の練習を見てやっていた。
此方に滞在している間だけでいいから彼……ペルに乗馬を教えてやってくれと、
同じ伯爵家の人間であるシュタウフェンベルクに頼まれたのである。
人付き合いはお世辞にも得意とは言えないし、他者に愛想よく振る舞うのも苦手だから、
まだ子供と思われる年齢の人間の面倒を見るのも苦手。
しかし聞き分けは良いタイプの子らしいペルは熱心に西の説明を聞いては、
その通りに動いて、どうにか最近では馬の上でバランスをとれるようにもなってきた。
「まぁ、成長は早いんだろうけどなぁ……」
そういいつつ西は愛馬をそっと撫でる。
ペルの成長は早いと思う。
聞き分けは良いし、理解力もある。
世間知らずな方らしく時々言葉が通じないことはあるものの、
わかりやすいように説明してやれば理解してくれる。
シュタウフェンベルクもいっていた通り、かなり勉強熱心な気質であるらしい。
それは、良い。
教える側からしても助かる話だけれど……
「あの表情がなぁ……」
そう呟いて彼は小さく溜め息を吐き出した。
気にかかることが、ひとつ。
それは、ペルの表情だった。
自分をじっと見つめる漆黒の瞳。
マフラーに埋めたままの口元。
そこから彼の感情を読み取ることは出来ない。
それが西には気がかりだった。
彼に依頼してきたシュタウフェンベルクも表情豊かな方ではないけれど、
ペルの表情のなさはそれとは明らかに違う。
無表情。
ずっとぼうっとしているような…
それでいて自分をしっかり見ている感じが何とも複雑なのだ。
それが気にかかるというか、何というか……――
「バロン西」
不意に聞こえた声。
それに西は視線を上げる。
自分のことはそう呼ぶように言ったペルかと思ったが、彼の声とは違う。
「シュタウフェンベルク伯爵」
そう。
彼に声をかけてきたのは隻腕隻眼の少年……シュタウフェンベルクだった。
「休憩、か?」
「あぁ。ずっとやりっぱなしも疲れるだろうしな……
俺はともかく、練習したい当人が」
不慣れなことをしては疲れるだろう。
疲れた上で行動すれば、怪我をしかねない。
そう考えた西なりの思いやりだった。
シュタウフェンベルクはそんな彼の言葉に小さく頷く。
そうか、ありがとう、という彼を見つめ、西は少し考え込む顔をした。
「……あのさ」
「?何だ?」
不思議そうに首を傾げるシュタウフェンベルク。
それを見つめて、西は暫し口を噤む。
しかしすぐに口を開いた。
「彼……ペルとは、何処で知り合ったんだ?
別に大きな家の子でもないようだし、この国の騎士でもないだろ?」
気になったのはそのことだった。
シュタウフェンベルクやヘフテンと、あの黒髪の少年……ペルが出会ったのは何処?
一体どういう要因で?
それがふと気になったのだ。
もしも大きな家の子供であれば社交界で出会うということがありうる。
愛想は良いとは言えずとも面倒見の良いシュタウフェンベルクが彼の面倒を見た、とか。
しかしペルに名前を聞いてもファミリーネームはないと言っていたし、
何より爵位などの理解の仕方があまり深いものではなかった。
その点からそこは否定出来る。
この騎士団の騎士であれば交流機会もあると思うけれど……
彼が着ている服は明らかにこの国の騎士の制服ではないし、騎士である風でもない。
騎士であれば乗馬くらい出来るだろう。
それならば、彼らの接点は何?
それが純粋に気になったのである。
シュタウフェンベルクはその言葉を聞いて小さく頷いた。
そしてある程度の事情を説明する。
元々は自分たちに懐いていたわけでない事。
この城の、夜鷲の騎士……シュペーアに懐いていて、彼に文字の勉強を教えてもらっていたこと。
そこからの因果で話をしたりしているうちに懐いた彼が声をかけてくるようになったこと。
「まぁ……偶然といえば、偶然、か?」
自分でも思い返せばよく分からない。
何だそれは、といって西は苦笑する。
「まぁ、懐かれた以上放っておけないって感じか……
納得といえば、まぁ……納得だな」
らしいというかなんというか。
そういいつつ西は立ち上がってぐっと伸びをした。
シュタウフェンベルクはそんな彼に訊ねた。
「何か、あったか?彼……」
「いや、飲み込みも早いし教えるのに苦はないんだが……
まぁ、なんだ……やっぱりあんまりああいうのは得意ではないな」
そういって顔を顰めつつ、西は頭を掻く。
それを見てシュタウフェンベルクは苦笑を洩らした。
「そうか……
でも、だいぶ乗れているようで、良かった」
「え?」
彼の言葉に西はきょとんとする。
シュタウフェンベルクはあれ?という顔をしつつ、言った。
「さっき、中庭の方で練習していたと思うんだが……
馬の背に乗ることさえできなかった時に比べれば随分な進歩だったし……」
シュタウフェンベルクはそういいながら、先程見た光景を思い出す。
ディアロ城の馬。
それに乗っているペル。
まだ若干ぐらつきはあるようだったけれど、それでもだいぶちゃんと乗れていた。
彼がそういうと西は少し驚いた顔をした。
目を瞬かせつつ、彼はシュタウフェンベルクに問いかける。
「え?それ見たの、いつだ?」
「ついさっきだが……」
此処に来る前だ、とシュタウフェンベルクは答える。
それを聞いて西は更に瞬きをする。
「もう今日は練習は終わりにしようって言ったんだけどな……」
「え?そうだったのか」
シュタウフェンベルクも驚いたような顔をする。
それはつまり……
「自主的に練習してる、ってことか」
西はそう呟いて小さく息を吐き出した。
そして、呟くように言う。
「やれやれ……一人でやって落っこちたらどうするつもりだよ」
世話の焼ける、といって彼は溜め息を吐き出していた。
それでいて"何処に居た?"と訊くあたり……彼も大概人が良い。
シュタウフェンベルクがペルが何処にいたかを教えれば、
もう少し見てやるかと呟きつつ彼はペルがいると言った方へ向かう。
―― 彼も何だかんだでペルを放っておけないのだろうな。
シュタウフェンベルクはそう思いながら、ふっと笑みを漏らしたのだった。
―― Softhearted ――
(何だかんだでお人よしなのは同じ、なのだろうか。
一人頑張っている様子の幼い少年は放っておけないようで)
(読めない、読めない性格。
でも多分、頑張り屋なのに違いはないんだろうな)