ワルキューレコンビでのお話です。
ナハトさんの素敵な小説通称「魔の手シリーズ(そう呼んでてすみません;;)」の裏話、的な…
大佐殿とヘフテンさんのこういう絡みを書きたかったのでしたすみません…!
*attention*
ワルキューレコンビのお話です
ほのぼの時々ちらっとシリアス?なお話です
ナハトさんの素敵な小説の裏話的なお話です
時間軸的には「Ich bin schwach.」の後くらいです
破魔の魔力を持つことをヘフテンさんに話す大佐殿を書きたくて…←
ヘフテンさんのこういうリアクションかわいいと思います(^q^)
相変わらずの妄想クオリティ
ナハトさん、本当にすみませんでした…!
以上がOKというかたは追記からどうぞ!
寒い。
その感覚に、金髪の少年……ヘフテンは体を震わせた。
今日は日も出ていて暖かかったはず。
確かに秋口になって大分涼しくなってきてはいたけれど、
こんなに寒く感じはしなかったはずなのに……
そう思いながら少し身を縮めると、優しく肩まで毛布が引き上げられるのを感じた。
そのまま、そうして毛布をかけてくれたであろう人物がそっと頬に触れる。
その手はとても暖かく感じた。
あぁ、慣れた手だ。
そう思って少しほっとする。
それと同時に、意識が浮上した。
***
「ん……」
小さく息が漏れた。
瞬く瞳。
そこに映ったのは心配そうに自分を覗き込む、隻眼の少年の顔だった。
「た、いさ……?」
彼を呼ぶが、その声に覇気はない。
何だろう、すごく体が怠い。
今までずっと眠っていたようなのに、どうして?
そうだ。
ずっと寝ていたんだ。
起きないと。
所々で繋がった記憶。
起きないとと思ったヘフテンは慌てて体を起こそうとしたが、
それより先に彼に……シュタウフェンベルクに体を押されて、ベッドに戻る結果になった。
「無理をして起きなくて良い」
そういう彼。
ヘフテンはまばたきをして彼を見上げた。
「どうして……?というか、僕……」
そう声をあげたヘフテンは周囲を見渡した。
匂いで気づいた。
此処は医療棟らしい。
どうやら、大きめな複数患者収容のための病室らしいけれど。
真っ白い天井と壁。
カーテンでしきられているようだけれど、微かに外部から魔力を感じる。
それに外は少し騒がしかった。
「大佐、何が起きて……」
何が起きているんですか?とヘフテンはシュタウフェンベルクに訊ねる。
まだ若干意識がはっきりしていない様子のヘフテンを見て眉を下げた後、
シュタウフェンベルクは彼にいった。
「覚えていないか、あの不気味な手を……
お前がいきなり駆け出して近づいていくから、驚いたし心配したんだぞ」
ヘフテンは彼の言葉に幾度か瞬いた。
そして、思い出す。
唐突に現れた、不気味な手。
それに驚き、興味を抱いたヘフテンはそれに近づいて……
そこから先の記憶は曖昧だ。
体から力が抜けていく感じだけ覚えている。
確か、あの手に捕まったんだっけ。
それで、魔力が薄れていったからたぶん、魔力を吸いとられたのだろう。
覚えているのは薄れていく意識のなかで聞こえたシュタウフェンベルクの声。
大佐、逃げて。
危ないから、逃げて。
貴方までこんな目に遭ってほしくない。
そう思った。
そこまで思い出したところでヘフテンははっとしたようにシュタウフェンベルクを見た。
そしてやや慌てたようにいう。
「大佐、大佐は……っ、大丈夫、でしたか……」
まだ声は弱いけれど、必死にそう問いかける彼。
シュタウフェンベルクはこくりと頷いて、そっと彼の額を撫でた。
「私は大丈夫だ。襲われなかった、というか……」
返り討ちにしたというか、と呟くようにいう声は、少し弱い。
そのことを少し不思議に思って、ヘフテンは首を傾げた。
「大佐……?どうしたのですか?」
貴方が無事だったことにほっとした。
寧ろ、あの抗えない手に打ち勝った彼を尊敬さえする。
なのにどうして貴方はそんな顔をするのですか?
そうヘフテンが問いかけると、シュタウフェンベルクは少し躊躇うように視線を彷徨わせた。
そして小さく息を吐き出して、いう。
「ヘフテンにも、話していなかったんだが……
私は、破魔の魔力を持っているようなんだ」
「え?」
そんな彼の言葉にヘフテンは大きく目を見開く。
シュタウフェンベルクは彼に、自分が無事だった経緯を、
ヘフテンを助け出した経緯を説明した。
自分にちょっかいをだしに来た堕天使と接触したときに知った自分の特殊な力。
それは悪魔に強く作用し、拒み退ける力だ。
先程ヘフテンを襲ったあの魔の手がどういう類いのものかはわからないが、
少なくとも異形であるためにか、シュタウフェンベルクの魔力で霧散したのだ。
「……話せずにいて、すまない。
私のなかでもまだ、整理がついていなくて……」
説明することも打ち明けることも出来ずにいる間に、こんな事態に巻き込まれて。
そういいながらシュタウフェンベルクは俯いた。
話せなかった。
話せずにいた。
まだ自分のなかでも満足に整理がつかなくて。
もし話せていたら、結果は変わったかもしれないのに。
受け入れて、もっと早く動けていたら……――
シュタウフェンベルクがそう思うと同時、そっと手を重ねられた。
魔力を吸いとられた所為かまだ冷たい、ヘフテンの手だ。
シュタウフェンベルクがそっと視線をあげると、彼は少しだけ拗ねたような顔をしていた。
しかしすぐにふっと表情を緩めて、いう。
「もう……大佐はそういう大事なこと、自分一人で抱えちゃうんだから」
困った人ですねえ、とヘフテンはいう。
すまない、と詫びながら再びうつむくシュタウフェンベルクの手を握って、
ヘフテンは柔らかく、でもきっぱりとした声でいった。
「大佐は大佐ですよ。
それに……守ってくれて、話してくれて、ありがとうございます」
嬉しいです、といってヘフテンは微笑む。
シュタウフェンベルクはそんな彼を見つめて……ふっと、表情を緩めた。
「ありがとう……ヘフテン」
彼の声で、言葉で、重荷がふっと消えるのを感じた。
あぁ、大切な相手の言葉というのはこんなにも暖かなものなのだな、と思う。
照れ臭くて、思いを伝えることはなかなか出来ないけれど。
と、ヘフテンが小さく息を吐き出した。
どうやら、まだ魔力は回復しきっていないらしい。
「無理しないで、休んでいろ」
「はぁい……無理しても大佐に迷惑かけちゃいますしね」
そういってヘフテンは苦笑を漏らす。
シュタウフェンベルクはそんな彼を優しく撫でてやりながら、いった。
「……傍に、いるから」
ゆっくり休んでくれ、と彼はいう。
さっきとは逆で握られた手から、暖かい彼の魔力が伝わってくる。
ヘフテンはそれを感じて、ふわりと微笑んだ。
ありがとうございます、大佐、という彼は嬉しそうだ。
しかし寝ろと言われてもすぐに寝付ける訳ではないようで、
彼は少しだけ首を動かして、シュタウフェンベルクにいった。
「此処、病室、ですよね……僕以外にも……?」
あの手の被害にあった人間がいるのだろうと、推測がついた。
大分落ち着いた今ならわかる。
他にも数人、自分のように魔力が薄れている人間がいる。
そしてその傍についている人間の魔力も感じた。
ヘフテンの問いかけにシュタウフェンベルクは頷く。
「あぁ……
さっき、私も外でアルとパベリッチが襲われているのが見えて助けにいった。
パベリッチと……あと、ヘフテンが襲われるより前に、メンゲレも襲われたらしい」
皆眠っているだけのようだけれど、と言いつつ、
シュタウフェンベルクはふと思い出したようにヘフテンに訊ねた。
「何か、体に異常はないか?」
「え?えぇ……ちょっと気だるいだけです」
それはたぶん魔力不足のせいですよね、とヘフテンはいった。
シュタウフェンベルクは少しほっとしたように頷く。
「それだけだな?もし他に何かあったら……」
「ちゃんと言いますよ。大丈夫です」
いつも以上に過保護な彼。
それが何だかおかしくて、でも嬉しくて、笑みがこぼれる。
「……何を笑ってるんだ」
少し不機嫌そうになるシュタウフェンベルク。
ヘフテンはそれを見て微笑みながら"何でもないですよ"と笑う。
シュタウフェンベルクはそんな彼を優しく撫で付けて、休めという。
恐らくそれは、半分以上照れ隠しだろう。
そう思いながらヘフテンは目を閉じる。
流石にまだ回復していないせいで、眠い。
そう思うと同時に聞こえたのは……
優しく自分を撫でていたシュタウフェンベルクの"おやすみ"という声。
心配をかけてしまったのは申し訳ないけれど、
それでもこうして心配してもらえるのは嬉しいな、と思いつつ、
ヘフテンはゆっくりと眠りについたのだった。
―― 愛しい君の… ――
(悩み続けていた自分の能力
やっとそれを話すことが出来た)
(そうして大事な、重たいことを一人で抱えてしまう貴方
頼りないかもしれないけれど僕がちゃんと寄り添って支えるから…)