ワルキューレコンビのお話です。
ナハトさんが描かれたイラストがかわいらしくて、こういうシチュをやってみたくて…←
*attention*
ワルキューレコンビのお話です
ほのぼの?なお話です
時々ちらっとシリアスめも入ります
大佐殿と一緒に居たい、と願うヘフテンさんを書きたくて…
ぎゅって、無意識に相手の手を握るっていう図が好きです…←
目が覚めた時の大佐殿のリアクションが楽しみです(ぇ)
相変わらずの妄想クオリティ
ナハトさん、本当にすみませんでした…!
以上がOKという方は追記からどうぞ!
夕焼けに染まり始めた、周囲。
中庭では木々が青々とした葉を茂らせている季節……――
降り注ぐ陽射しは暑く、でも吹き抜ける風は心地よい。
そんな季節の、夕方……
「ふぅ……」
背の高い、黒髪の少年……シュタウフェンベルクは自室に戻ってきた。
小さく息を吐き出した彼の額には少しだけ、汗が滲んでいる。
森の奥での魔獣討伐の任務。
それを副官と一緒にこなしてきた彼。
彼は疲れ果てていた。
シュタウフェンベルクは少し疲れたようにベッドに腰を下ろす。
そして、ブーツを脱いだ。
今日の任務はそこまできついものではなかった。
魔獣はそこまで強くなく、地形的にもそこまでの不利はなかった。
怪我はしていないし、副官……ヘフテンも無傷だった。
けれど油断は禁物だと必死に戦った結果、
数の多い魔獣を倒すのには少々苦戦し、二人とも疲れ果てていた。
ヘフテンは一度、自分の部屋に戻っている。
シュタウフェンベルクもまた、こうして自室に戻ってきたのだった。
―― ほんの少しだけ、休もう……
シュタウフェンベルクはぼんやりと、そう思った。
任務を終えて一緒に戻り、先に自分の部屋に一度向かったヘフテンも、
シャワーを浴びたら部屋に戻ってくると話していたから、それまでの間だけだ。
彼が来たらシャワーを浴びて、報告書を完成させよう……
そう思うと同時、シュタウフェンベルクの身体はそのままベッドの上に倒れた。
柔らかな、白いシーツ。
開かれた窓からは涼しい風が吹いてくる。
陽射しはカーテンで遮られていて、室内は快適な空間だった。
そんな穏やかな空間で、疲れた体は休息を欲する。
使った魔力と体力の回復のために……
少し休むだけだ、眠るつもりはない……
そう思うけれど、自然と瞼が降りてきた。
睡魔に抗うことは出来ず、シュタウフェンベルクはそのまま眠りについた。
***
それから、暫くして……シュタウフェンベルクの部屋のドアがノックされた。
こんこん、と響く軽やかな音……――
その音を響かせた主は、ドアの向こう側から室内にいるはずのシュタウフェンベルクに声をかける。
「大佐?」
問いかける声は、ほかでもないヘフテンのそれ。
シャワーを浴びてきたためにまだ少しだけ、髪が濡れている。
ぽたり、と肩にかけたタオルに滴が落ちた。
そのまま廊下でドアをノックした彼は部屋の中から返事がないことに不思議そうな顔をした。
「?大佐?いらっしゃいますか?」
そしてもう一度ドアをノックして、声をかける。
それでもやはり返事はなかった。
居ないはずはないのだけれど……そう思ったヘフテンは小さく首を傾げつつ、ドアを開けた。
静かな、部屋の中。
そこを見渡して……ヘフテンは気が付いた。
ベッドの上に倒れこんだままに寝入っている、黒髪の少年。
布団を体にかけることもなく寝入っている、大切な上官の姿……――
それを見て、ヘフテンは目を細めた。
なるほど、寝入ってしまっていたのか。
どおりで返事がないわけだ。
そう思いつつ、ヘフテンは少しだけ眉を下げた。
「風邪ひいちゃいますよ、大佐……」
せめて布団をかけないと、風邪をひいてしまう。
ヘフテンはそう呟きつつ、彼が寝ているベッドの方へ歩み寄った。
脱ぎ捨てられた形になっているブーツ。
ベッドに倒れこんだまま寝入っている彼。
かけられていない布団……
余程疲れていたのだろうな、とヘフテンも思う。
シュタウフェンベルクの奮闘は、彼もよく見ていた。
片腕がない人間が良くあそこまで戦える……
いつも、ヘフテンはそう思っていた。
頼もしく、力強い彼。
ヘフテンが少しでもミスをした場合、そのサポートさえやってのけるのだ。
彼はいつでも自分のことを一生懸命に守ってくれた。
―― あんまり心配はかけられないな。
だから、少しでも強くなって彼の、シュタウフェンベルクのサポートを出来るようになりたい。
ヘフテンは何時でも、そう思っていた。
ともあれ……――
「どうしようかな……」
少し悩むように、ヘフテンは小さく呟いた。
本当なら、こうして来た時にシュタウフェンベルクにもシャワーを浴びてもらおうと思ったのだ。
服を脱ぐにも苦労するだろうから手伝おうと思って此処に来たのだけれど……
此処までぐっすりと寝入っている彼を叩き起こして、
シャワーを浴びさせるというのもある意味で酷な気がした。
疲れているのだろうから少し休ませるのもひとつの手段だろう。
そう思いつつ、眠っているシュタウフェンベルクの隣に、ヘフテンも寝転がる。
いつもならば速攻でシュタウフェンベルクから叱責を喰らう。
恥ずかしがった様子で怒る彼の姿が簡単に想像が出来た。
けれど今は、彼は何もしない。
一度寝入ってしまった彼はなかなか目を覚まさない。
ヘフテンが隣に寝転んでも、彼は目を覚まさなかった。
すぅすぅ、と穏やかな寝息を立てているシュタウフェンベルク。
子供のようにあどけない寝顔。
普段の冷静で大人っぽい彼とは、違う……年相応の、寝顔だ。
ほかの騎士たち……殊更、いつも彼の近くにいるヘフテンが割と童顔で幼く見えるために、
しっかり者で大人びているシュタウフェンベルクは良く実年齢より年上にみられている。
そのことを彼が気にしている様子なのも、ヘフテンは良く知っていた。
ぐっすりと寝入っている彼を見て、ヘフテンは目を細める。
そして、くすりと笑った。
―― この顔を見たら、きっと誰もそんな風には思わないんだろうな。
彼が人前でこうして無防備な姿を晒すことは、あまりない。
そのことはほかでもないヘフテンが良く知っている。
そして、それを嬉しくも思っていた。
自分だけが、こうして無防備なシュタウフェンベルクの姿を見ることが出来る……そう思って。
そのまま、寝入っているシュタウフェンベルクの掌をちらりと見る。
そこに、ヘフテンはそっと自分の手を重ねた。
暖かさを感じる、シュタウフェンベルクの手……
それを感じて、ヘフテンは微笑む。
―― ずっと、こうして……
傍で、手を重ねられる距離にありたい。
ふと、そんなことを思った。
いつまでも、こうして彼の傍にいたい。
そう、切実におもった。
それは、その実……
戦闘の度にヘフテンが思っていることだった。
任務に赴く度に願っていることだった。
騎士としての任務は決して安全なものばかりとは言えない。
命を落とす可能性が高い任務だってたくさんあるのだ。
その中で自分が、或いはシュタウフェンベルクが命を落とす可能性はゼロではない……
でも、そういった任務で傷を負おうとも、たとえ……命を落とすことになろうとも……
その時に、ちゃんと彼の傍に居られるようにしたい。
縁起でもないが、それを願わずにはいられなかった。
オリジナルの彼らは、最期の最期まで、一緒に居ることが出来た。
勿論、あんな結末は望まない。
出来ることならば、このままずっと……平穏のうちに、二人で一緒に居たい。
それを願ってよいのなら、それを望んでよいのなら、
彼と……シュタウフェンベルクとともに過ごす、未来がほしい。
ヘフテンはいつでも強く、そう願っていた。
そして、そのために強くなろうとも思った。
彼に守られるばかりではなく、自分がちゃんと彼を守れるように。
彼を、支えられるように……
「……大佐」
―― ちゃんと、傍に置いてくださいね……
いつでも、傍にいるから。
守るから。
貴方の副官として、尽くすから。
どんなことにでも全力で挑むから。
だから、どうか傍に居させて……
ヘフテンはそう願いつつ、眠ったままのシュタウフェンベルクを見つめて、微笑んだ。
そっと重ねた手……
良く彼の頭を撫でてくれる、優しくて暖かな掌……――
――と、その時。
きゅ、とシュタウフェンベルクがヘフテンの手を握った。
無意識、眠りの中での行動のようだったが、何だかそれが可愛らしくて、ヘフテンは笑う。
「まるで、子供みたいですよ、大佐……」
くすり、と笑ってヘフテンは呟く。
そう呟いても、寝入っている彼には聞こえてなどいないのだけれど……
穏やかな寝顔を晒す彼は、本当に子供のようだ。
自分と同い年の……否、それより幼い子供にさえ、見える。
ふわりと微笑んで、ぎゅっと強く彼の手を握り返しながら、
ヘフテンはシュタウフェンベルクの頭の辺りに自分の頭を寄せた。
そして、そのまま目を閉じる。
後で彼が目を覚ました時、一体どんな顔をするだろうな、と思いながら……――
―― Eternal… ――
(出来ることならば、永久の平穏を。
僕はただ、この人と一緒に過ごす穏やかな時間がほしいだけ…)
(子供のように寝入る、愛しい大佐。
いつでも彼の傍にこうして居られるのが自分であれば良いと、強くそう願うんだ)
2014-5-31 16:22