聖女&堕天使パロなフォルスタでのお話です。
隠していたものを強引にみられる、というシチュがやりたくて…
ごめんなさいスターリンさん←おい
*attention*
フォルスタのお話です。
元聖女と堕天使パロなお話です
シリアス&甘め?なお話です
顔に傷が残っている美人さん、大好きなのです…←おい
その傷を隠しているのに無理やり見られるようなシチュが好きで(こら)
フォルは本編時より尚過保護になるんじゃないかな、と思いました…主に独占欲から←おい
相変わらずの妄想クオリティ
ナハトさん、本当にすみませんでした…!
以上がOKという方は追記からどうぞ!
良く晴れた、春の日の午後……――
広い広い青空のした。
季節には少し不似合いな黒服の二人組が歩いていた。
亜麻色の髪の青年、フォルと、琥珀色の瞳の"少年"……スターリン。
彼らは久しぶりに、二人で街の中に出かけてきていた。
こうしてフォルと一緒に街中に出かけてきているため、
スターリンは黒いフードですっぽりと自分の顔を覆い隠していた。
彼がそんな恰好をしている理由は、ただ一つ。
彼の白い頬に残る、大きな火傷の痕だ。
彼は、住んでいた村で聖女として村を守り続けていた。
しかし、男であることがバレたため、魔女として火刑に処されたのだ。
そんな炎の中から彼にひそかに思いを寄せていた堕天使、フォルが助けだし、
ある程度の火傷の痕は、治したのだ。
しかし彼の力にも限界はあったようで、
頬に残ってしまった火傷だけは治すことが出来なかったのだと、
フォルはすまなそうに話していた。
一応フードを被れば隠せるし、フォルはその火傷を見てどうこう言ったりしない。
寧ろ、スターリンがあまり見られたくないからと隠そうとしても、
フォルは敢えてその頬の上にキスを落としたりするのだ。
仕方なしに、フォルと二人で屋敷にいる間はその火傷の痕も隠さないでいる。
ともあれ、街中を歩くときにはそういうわけにもいかない。
風でフードが外れてしまうことがないように気を付けつつ、
スターリンはフォルと一緒に歩いていた。
何か特別な用事があった、というわけではない。
ただ、"気分転換がてら、一緒に出掛けない?"とフォルが誘ってきただけである。
フォルは、スターリンが何もせずに部屋にいるとき、
ぼんやりと何か考えているような顔をしているのに気が付いていた。
きっと、村でのことを思い出しているのだろう。
かつて守り、支えようとしていた人々のこと。
その人たちに殺されかけたこと。
それを、辛いと感じていることにフォルは気が付いていたから……
少しでも気がまぎれるのなら。
フォルはそう思って、スターリンを街に連れ出したのである。
フォルがスターリンと一緒に暮らしているのは、
スターリンが元々いた村からは遠く離れた土地。
スターリンが生きていることがうっかりばれたら大変なことになるのは想像できている。
そう思って、フォルは此処に彼を連れてきたのだけれど……
一緒に街を歩いている途中、スターリンは小さく溜め息を吐き出して、呟いた。
「暑い……のだよ」
一応、今も女性としてふるまっている、彼。
外には声が聞こえないように、小さな声でつぶやいているのだが、
フォルにはしっかりその声が聞こえていた。
「え?そうかな……」
そんなに暑くないと思うんだけど、とフォルは呟く。
スターリンはそんな彼の言葉に苦笑を洩らして、言った。
「フォルとは、出身地が、違うのだよ……」
お前にとっては暑くなくても俺にとっては暑いのだよ、とスターリンは呟く。
そんな彼の言葉に、フォルは納得したように頷いた。
「あぁ。そっか。君の住んでたとこは寒かったもんねぇ……」
それは確かに暑く感じるか、とフォルは呟いた。
フォルも長く、スターリンがいた村に留まっていた。
その土地で聖女として奉られる彼のことを見つめるために。
その時に、その土地が酷く寒いことはよくよく感じていた。
元々寒いのは苦手なフォルだから、
今住んでいるこの土地のほうが体質に合っていると思っている。
しかし、今度は逆にスターリンがこの気候に苦心している様子だった。
歩きつつ、スターリンははぁと息を吐き出す。
少し、辛そうだ。
「大丈夫?聖女様」
フォルは心配そうに隣を歩いている彼に声をかけた。
先程から、少し彼は遅れ気味だ。
疲れているのだろうかと思っていたが、
どちらかといえば暑い所為か、とフォルも気がついた。
少し休む?と彼に声をかけようとしたとき。
「……っ」
ふらっと、スターリンの身体がふらついた。
フォルはそれに気が付いて、慌てて彼を支える。
そして、すまなそうな顔をした。
「ごめん、やっぱり少し休もうか」
「っ、ごめ……」
少し顔色が悪いスターリン。
暑さのために眩暈がしたらしい。
大丈夫だよ、と彼に微笑みかけると、フォルはスターリンの体を支えつつ、
近くのベンチに彼を座らせた。
漸く一息吐けて、スターリンはふぅっと息を吐き出す。
黒い服は日光を良く吸収する。
だから、余計に暑く感じてしまうのだろう。
出来ることならフードを外したいが、流石に今は人通りも多い、通り沿いの道。
まさかフードを外して、火傷のある顔を露わにするわけにもいかない。
フォルはそんな彼の顔を覗き込みながら、"大丈夫?"と問いかけた。
「少し座ってたら、大丈夫……」
心配かけてごめんな、とスターリンがフォルに詫びようとした、その時。
「おや、大丈夫かい?」
不意に聞こえた声に、スターリンははっとして口を噤む。
そして慌てて深く俯いた。
フォルは顔を上げて、その相手を見る。
よく街中で出会う、商人の一人だった。
フォルはそんな彼に愛想笑いを向けて、いった。
「ん、平気だと思うよ。
ちょっと、僕の連れのこの子が体調悪いみたいでさ」
「お、最近よく連れてる子だね?女の子?」
こんちは、といいながら、その男性はスターリンの顔を覗き込もうとする。
フォルはそれをさり気なく阻んで、言った。
「駄目だよ、その子修道女見習いでね……
下手に顔見せられないんだ」
「?あぁ、それでこんな暑いのに真っ黒い服なんだな……お前さんもだけど」
そういいつつ、商人の男性は笑った。
スターリンもだが、フォルも大概真っ黒な服装なのは、事実。
「僕のは趣味だよ、気にしないで」
フォルはそういいつつ、相手に笑いかけた。
スターリンは深く俯いたまま、そんな二人の会話を聞いていた。
座っていれば、幾分体調はマシになった。
とりあえず、日が出ている間の外出はこれから断ることにしよう……
スターリンがそんなことを思っていた時。
「顔出し駄目って言ったってお前は知ってんだろ?
俺にもちょっくら……見せておくれってな!」
「!駄目……っ」
どうやら、フォルが連れ歩いている黒服姿の"少女"の正体が気になったらしい。
その商人はやや強引にスターリンのフードを外した。
スターリンもフォルも驚いて、それを阻むことが出来なかった。
「っ!」
さらり、と長いスターリンの浅緑の髪が流れる。
フードは外れ、整ったスターリンの顔が、完全にさらされた。
スターリンは驚いて目を見開く。
そんな琥珀の瞳には、見慣れぬ男性の姿が映っていた。
驚いたように目を見開いたその男性が見つめているのは……
「え、あ……あ……」
言葉が、でないらしい。
それは、当然だろう。
興味本位で顔を見た"少女"の顔に、痛々しい火傷の痕が残っていて、
それを見て驚かない人間のほうが少ないだろう。
驚き、そして、怯えにも似た表情……
それを見て、スターリンも動揺した顔をした。
「っくそ!」
フォルはすばやくその商人の男を突き飛ばした。
そして、短く呪文を唱える。
その間、スターリンはフードを被りなおして、俯いていた。
小さく、その肩が震えている。
吐き出される呼吸は速く、浅い。
顔を、見られた。
二重の意味でそれはスターリンに恐怖を与えたはずだ。
傷ついた顔を他人に見られたという恐怖。
そして、もしかしたら自分がいた村の人間に
自分の情報が漏れるかも知れないという恐怖……――
それ故に、スターリンは胸が詰まる感覚を覚えていた。
フォルはそんな彼を見て眉を下げると、優しく彼の肩を抱いた。
「大丈夫、大丈夫だから、このまま帰ろう?」
大丈夫、大丈夫。
フォルのそんな言葉にスターリンは虚ろなままに頷いた。
何がどう大丈夫なのかはわからないけれど、今は頷くことしかできなくて……――
***
―― そして。
二人は、いつも通りにフォルの住処に戻った。
フォルはまだショック状態のスターリンをベッドに座らせていた。
ベッドの白いシーツの上に、黒いスカートの裾が広がる。
今はフードは外していたが、スターリンが俯いているため、
表情を窺うのは難しい。
フォルは、"聖女様"と優しく声をかけて、問いかけた。
「……大丈夫?落ち着いた?」
「……ん」
スターリンはフォルの言葉に小さく頷いた。
さっきほどパニックを起こした様子はない。
けれど、まだ元気はないようで、俯いたままだ。
長い浅緑の前髪が、彼の表情をかくしてしまっている。
否、敢えてスターリンはそうしているのだろう。
そう思いつつ、フォルはスターリンにいった。
「……ね、聖女様。僕の方、見て?」
「嫌、なのだよ……」
ゆっくりと首を振るスターリン。
ぽつり、と呟く様な声が聞こえた。
フォルはそんな彼の言葉に、小さく溜め息を吐き出した。
やはり、先程の出来事が効いているらしい。
まあ、当然か。
いきなりフードを外された挙句、隠していた火傷の痕を見られて。
挙句、化け物でも見るような怯えた顔をされたら……
傷つかない、はずがない。
フォルはスターリンの綺麗な浅緑の髪を撫でながら、言った。
「……聖女様、大丈夫だよ。
さっきあの場にいた人たちの記憶は消したから」
フォルも、スターリンが顔を見られるのはまずいことはよく理解している。
だから、あの場でスターリンの顔を見たであろう人間の記憶を消した。
だからもう問題はない、とフォルはスターリンにいう。
しかしスターリンの表情は晴れないままだった。
「……でも、これを見られたのは変わらないのだよ」
スターリンは自分の頬の火傷に触れながら、そう呟く。
そして、虚無的な表情を浮かべた。
「誰が見たって、あんな表情するのだよ……
だって、気味悪いもんな……」
そう呟いたスターリンの表情は悲しげで、声は小さく震えていた。
自分で言いつつ、それを否定したがっているような……そんな顔。
フォルはそんな彼を見て、小さく溜め息を吐き出す。
そして、そっとスターリンの肩に手を置きつつ、言った。
「……聖女様、こっちを見て?」
ふるふる、とスターリンは首を振る。
見られたくない、見せたくない。
そんなスターリンの反応に、フォルは眉を下げたが……
すぐに、その華奢な体を抱きしめた。
「僕は、好きだよ。
君のことが……そんな火傷があっても、なくても」
「フォル……」
でも、とスターリンは呟く。
怖かった。彼も、今は自分の容姿など気にならないといってくれるけれど、
いつか……さっきの男のような反応を、するのではないかと。
顔に傷のある自分を疎ましく思うのではないか、と……
被害妄想と知りつつも、フォルのことを大切に思い、
離れたくないと思うようになっているスターリンにとっては、それは重要事項。
フォルには、嫌われたくない……
そんな心理が先行していた。
とはいえ、それはあくまでも杞憂。
フォルは微笑みながら、彼にいう。
「ほかの人間に何言われても、気にしちゃだめだよ、聖女様……
いつでも僕だけは、君の味方だからね。
それに……
今度はもっと、君がああいう目に遭わないように気を付けておくからね」
フォルはそういうと、スターリンの唇を塞いだ。
スターリンはそのキスを受けた。
最近は、漸く少し慣れてきた。
フォルが自分を慰めようとするときにこうしてキスをしてくること。
そのキスは甘く、優しいこと。
少しだけ、甘えるようにそれに応えれば……――
「っ、ん、ぅ……」
そのキスが激しくなって、くらくらと甘く、力が抜けること。
わかってきた、いろんなことが。
フォルは激しいキスをしたまま、スターリンの体をベッドの上に倒した。
シーツに広がる、浅緑の髪。
見下ろしたスターリンの頬に残る、痛々しい火傷。
それに優しく触れながら、フォルは微笑んだ。
「は、ぁ……聖女様……
僕はね、好きじゃない人間とこんなこと、できないよ……
だから、信じて?」
そういって、フォルは首を傾げる。
スターリンは彼から視線を外そうとしたが……
優しくとはいえ、押し倒された形になっているため、うまくいかない。
「……っフォル、離し……」
「嫌だよ、可愛い聖女様の顔、もっと見たいから」
フォルはそういいながら、優しくスターリンの体を抱きしめた。
柔らかな、黒い衣服。
それに包まれた、華奢な体。
フォルはそんな愛しい人を抱きしめながら、"大好きだよ、聖女様"と囁く。
―― 守るよ、ちゃんと。
心の中では、そう呟いていた。
聖女として奉られていたあの村では彼を完全に守ることは出来なかったから……
そんな誓いのように、フォルはスターリンの首筋に口づけた。
強めにキスをして痕を残す。
スターリンはぴくりと体を強張らせた。
「ん……っ」
「ふふ、約束の証、ね?」
フォルはそういって満足そうに微笑むと、優しくスターリンの頬を撫でた。
自分だけが受け入れられる、彼の過去と辛い現実を表す、その火傷の痕を……――
―― Scar ――
(美しい君の顔に残った、火傷の痕。
ごめんね、それを消すことが出来なくて)
(こんな傷がある俺を恐れなしに見てくれる人間はそういないことだろう。
なぁ、フォル、お前はどうなのだろう…?)
2014-4-30 23:50