久々に東条さんと帝陛下をお借りしてお話を…
お誕生日のお話を、書きたかったのです…←
このお二人の関係性が好きで、ついこんなテンションになりました(おい)
*attention*
東条さんと帝陛下のお話です。
お誕生日のお話です(時間ぎりぎりですみません;;)
ほのぼのなお話、だと思います…!
誕生日のお祝いって一番最初に祝われるのもうれしいけれど
一番最後を祝われるのも嬉しいよな、と思いついた星蘭の妄想です(ぇ)
自由人な帝陛下に戸惑いつつ傍に居られることを喜ぶ東条さんだったらいいな、と…!
東条さんと帝陛下の関係性が好きで…こんなノリに←
淡い想いを…という雰囲気が…出てたらいいなと(おい)
久々でキャラが迷子ですみません;;
相変わらずの妄想クオリティ
ナハトさん、本当にすみませんでした…!
以上がOKという方は追記からどうぞ!
四月末。
"この国"の言葉でいうのならば、卯月の末……――
柔らかな風が吹き、穏やかな日の光が降り注ぐ、そんな日……
その日、その国では国中が、祝いの雰囲気に満ちていた。
それも、当然。
この国では現神として敬われ、奉られる人物の生誕の日……
「ふむ……」
西洋のような祝いの風景とはやはり違うが、と、
黒髪に藤色の瞳の少年……東条は目を細めていた。
この国を、そしてこの国を治めるその人を守るべくして働く彼は、
自身はその人物に声をかけることは出来ぬままに、
その"特別な一日"を過ごしていた。
そんな昼間の雰囲気も賑やかさも、少し落ち着いた夜。
美しい月が、夜の闇に浮かんでいる。
春霞に少し霞んで見える星も瞬いていた。
そんな月明かりが射し込む、静かな夜の廊下……
東条は一人、その人のいる部屋の傍まで来ていた。
ただそこで、躊躇うように立ち止まっていた。
その部屋に、入りたかった。
入って、伝えたいことがあった。
―― けれど……
もう既に、時刻はかなり遅くなっている。
東条は、小さく溜め息を吐き出した。
「……やはり、お疲れであろうな……」
小さく呟いた声は低く、誰の所にも届かなかったであろう。
彼が会いたい相手は、今日は一日かなり多忙だったはず。
普通の仕事とは違うけれど、それでも疲れたはずだ。
それを思うと、こんな時間に部屋に押し掛けるのも……
そう躊躇っていたのだった。
暫し悩んだ。
入るべきか、否か。
そう悩んだ末、東条は小さく溜め息を吐き出した。
今日でなければ会えないわけではない。
彼にその言葉をかけることが出来なかったのは残念だけれど、
彼に迷惑をかけてしまうのは、本末転倒だ。
「陛下……――」
東条は、その言葉を閉じた襖に向かって、呟く。
そして、ふっと微笑んだ。
―― 自室に、帰ろうか。
そう思って東条が小さく息を吐き出した時。
「おや、東条?」
聞こえた声に、東条は驚いたように体を跳ねさせた。
そして、その声のほうを見れば、
少し驚いたように目を見開いている、
自分が会いたかった人物の姿……
東条は藤色の瞳を幾度か瞬かせて、口を開いた。
「陛下……」
「如何したのですか?
そのようなところに立ち尽くして……
風邪をひいてしまいますよ」
彼……皇尊は心配そうな顔をしながら、東条のほうへ近づいた。
そして、そっと彼の肩に手を置く。
東条はやはり驚いた様子で目を丸くした。
「そのようなところに立たずとも……中に入っては如何です?」
まだ、春の夜風は冷たいから。
皇尊はそういって、東条に微笑みかける。
柔らかく穏やかなその笑み。
東条は戸惑ったように藤色の瞳を揺らした。
外が冷えるのは事実。
自分はともかく目の前にいる彼が外で話を聞く様な状況に持ち込むことは避けたいのだけれど……
「しかし、陛下……お疲れ、では……」
今日は、彼の誕生日であったから。
国中の人々からの祝福を受け、微笑み、過ごしていたはずの彼。
公務とはまた違う……
否、国民の前に姿を見せ、
祝いの言葉を受けることもきっと、彼にとってはまた公務。
きっと、疲れているだろう。
そう思うと、下手に部屋に入るのも迷惑かと、
そう東条は躊躇っていたのである。
しかし、それはあくまで杞憂のようだった。
「大丈夫ですよ、東条。
貴方の用事を、聞きましょう」
私は疲れていませんから、とそういって微笑む彼は、
何処か何かを期待しているようにも見えた。
否、それは自惚れか……?
東条はそう思いつつ、彼に促されるまま、
彼の自室に足を踏み入れた。
畳の香り。
任務や日常の報告のために日々訪れているこの部屋ではあるけれど、
なんだか今日は緊張していた。
それは、今日が今日という日であるからだろう。
東条はそう思った。
そして東条は彼の前に膝をつき、
深々と頭を下げて、口を開いた。
「……お誕生日、おめでとうございます、陛下」
こうして伝えることが遅くなってしまったけれど。
東条がそういうと、皇尊はふわりと微笑んだ。
まるで子供のように嬉しそうに。
一番言ってほしい人間から言ってもらえたと、そう喜ぶように。
「ありがとうございます、東条……」
「申し訳御座いません、ご挨拶に参るのがこんな……」
遅くなってしまって。
申し訳なさそうに東条がそういおうとしたが、
皇尊がそれより先にゆっくりと首を振った。
そして穏やかな笑みを浮かべて、いう。
「時間など、いつでも良いのですよ……
東条も一日、ありがとうございました」
貴方たちの警備のおかげで安心して外に出られると、彼はそういう。
東条は嬉しそうな表情をして、再び頭を下げた。
―― 嗚呼、嬉しい。
ただ、彼の傍にいられること。彼を守ることが出来ること。
それが、東条にとっては喜びだった。
自分の、恩人。
とてもとても大切な人……
もっと近くに、そう願うこともあるけれど、
大概その願いは胸の深くにかくしてきた。
これで、十分。
そう、自分に言い聞かせてきた。
嗚呼、もうすぐ日付が変わってしまう。
そう思いつつ、東条は"では、私はこれで……"そう、言おうとした。
帰らなくては。
明日も、普通に公務があるはず。
流石に、迷惑だろうから……
しかし、皇尊はそんな彼を、呼び止めた。
「……東条。
せっかくですから、もう少し此処に居てはくれませんか?」
「え……」
東条は彼の言葉に大きく目を見開いた。
そんな彼の様子を見て、ふわりと微笑んだまま、小さく首を傾げた。
「東条さえ良ければ、なのですが……」
如何でしょう、と皇尊は首を傾げる。
東条はそんな彼の言葉に、幾度か瞬きをした。
「私は陛下がそう仰るならば……しかし……」
動揺したためか、少し吃る。
そんな彼を見て、皇尊はくすくすと笑った。
かわいい、とでも言いたげに目を細めて、彼はいう。
「折角ですから………――」
―― ……?
彼が囁いたその言葉に、東条は藤色の瞳を大きく見開いた。
皇尊は微笑んで、"如何でしょう?"ともう一度問いかけた。
その彼の言葉に、東条は暫し固まっていた。
けれど、その表情はすぐに、柔らかくほどける。
「……陛下が、そう仰るならば」
喜んで、と応える東条の頬は、薄く紅に染まっていた。
―― 伝えたい、言の葉 ――
(「誕生日の最後を、貴方と過ごしたいのですよ」
そんなあの御方の言葉に心が温かくなる)
(嗚呼、傍に置いていただけるだけで幸福で。
貴方がそれを望んでくださるのならば、私は喜んで……――)
2014-4-29 23:57