シストとエルド、フィアのお話。
シストの心情吐露、なお話かもしれないです。
実はシスト、ピアノが弾けるのですよね。
ロゼちゃんと一緒に習っていました。
エルドが死ぬ前は一緒に音楽室で遊んだりもしてたんじゃないかな、と思いつつ。
シスは意外と泣き虫です。
でも泣いていたことを相手に悟られないように静かに泣くのが上手い。
……ある意味可哀想だな、この子。
ともあれ、何でもOKの方は追記からどうぞ!
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主に創作について語ります。 バトンをやったり、 親馬鹿トークを繰り広げたりします。 苦手な方は、どうぞ戻ってやってくださいませ! (私のサイト「Pure Rain Drop」) → http://id35.fm-p.jp/198/guardian727/
シストとエルド、フィアのお話。
シストの心情吐露、なお話かもしれないです。
実はシスト、ピアノが弾けるのですよね。
ロゼちゃんと一緒に習っていました。
エルドが死ぬ前は一緒に音楽室で遊んだりもしてたんじゃないかな、と思いつつ。
シスは意外と泣き虫です。
でも泣いていたことを相手に悟られないように静かに泣くのが上手い。
……ある意味可哀想だな、この子。
ともあれ、何でもOKの方は追記からどうぞ!
「フィア―?どこだー?」
シストは暗い城の廊下を歩きまわっていた。
パートナーであるフィアの姿を探し始めて早数十分。
明日はオフだからちょっと付き合ってほしい、と告げたくて探し始めた。
……のだが。
何時もなら食堂か自室にいる時間帯だというのに、
どういうわけか姿が見えない。
任務かと思ってルカに訊ねたがそうでもない。
アルと一緒にいるかと思いきや草鹿の騎士は講義中。
中庭や闘技場を探しにもいったが姿はなく。
「ったく……どこ行っちまったのやら」
いい加減疲れた、と言いつつ城の中を歩き回っている間に、
シストは普段あまり来ない場所にたどり着いていた。
ディアロ城はなかなか広い。
新人騎士の中には迷子になるものも少なくないくらいだ。
あまり行かない部屋があっても不思議はない。
「ん……此処、確か……」
引き寄せられるように静かに、ドアを開ける。
月の薄明かりが差しこむ部屋の中には一台の大きなグランドピアノ。
「音楽室……いつの間にかこんなところまで来ちゃったのか」
久しぶりに来たな、と呟きつつ、シストはピアノに歩み寄った。
城のメイドたちによって綺麗にされた部屋の中で佇むピアノ。
そっとカバーを外し、鍵盤を押す。
ポーン……と、音が響いた。
綺麗に調律されたそれの音は静かな部屋に響き渡る。
「久しぶりに触ったよ」
小さく笑って、鍵盤を撫でる。
―― 昔は、よく来たっけ……エルドと一緒に。
思い出すのは、エメラルドの瞳の少年。
椅子を弾いて、座る。
シストの白い指先が奏でるのは、途切れ途切れの鎮魂歌(レクイエム)。
幼い頃に、姉と一緒に習っただけのたどたどしい演奏。
それでも昔はよく此処にきて"彼"と一緒にピアノを弾いたものだった。
「やっぱ、下手くそになってる」
あの頃よりだいぶ大きくなった手ならばきっとうまく弾けるのにな、と呟きつつ、
シストは鍵盤の上に指を滑らせる。
ゆったりと、流れるように紡がれる旋律。
時に激しく、切なく。甘く、苦く。
……それはそう、まるで記憶の如く。
懐かしい、自分と彼の声がよみがえる。
―― シストー指届いてねぇじゃん!
―― うっせー!ならエルド弾いてみろよー
―― いいよ、弾いてやるよ!
―― ……弾けてないじゃねぇか!
そんな大騒ぎをしていたあの頃を思い出す。
ダンスの練習があるから、と部屋を追い出されるまで笑いあってピアノを弾き続けた。
エルドがいなくなってから、一切触ることがなくなっていた、それ。
―― 無意識のうちに、此処に来るのを避けていたのかもしれない。
シストはそう思って、手を止めた。
エルドはとても大切な相手だった。
だからこそ、失った今……彼を思い出すのが怖くもあって。
彼の記憶につながりそうなものを、無意識的に避けていた自覚は、ある。
共に過ごした場所に近づかなくなったのも。
狼に似た魔獣の討伐に行けなくなったのも。
―― こうして月を見上げることも。
窓の外には白い月。
キラキラと輝く星は、悪戯な子供の瞳のようで。
共にそれを見た、"パートナー"を思い出す。
懐かしい、昔を思い出す。
「なぁ、エルド」
窓辺に立って、その名を紡ぐ。
大きめの窓を開ければ、吹き込んでくる雪風。
「俺は、上手く笑えているかな」
あの頃のように、と呟き、目を閉じたシストの頬に一筋涙が伝い落ちる。
―― お前はそうやって馬鹿みたいに笑ってるくらいがちょうどいいよ
シストが落ち込んでいるときは決まってそういっていた、エルド。
"馬鹿みたいにって……"とむくれつつ、元気になれていたのは事実で。
笑顔の方がいい、とパートナーが言ってくれるなら笑っていよう、
いつだってそう思っていた。
それと同時に、彼を失った時……
もう、心の底から笑うことはできないような気がしていた。
いつまでも落ち込んでいてはいけない。
そう思って笑ってはみたものの、その心の中は酷く空虚で。
罪悪感。虚無感。喪失感。
どんな言葉を使えば自分の気持ちを正しく表せるのかさえ、
酷く曖昧で、分からなくなっていた。
―― でも、今はきっと……
再び目をあけたシストは、ふっと微笑んで見せた。
泣き笑いの表情。
それは、決して無理をした笑顔ではなく。
力強く、現在を、未来を見据えたうえでの、笑顔で。
***
と、その時。
「シスト……?お前、か?今、ピアノ弾いてたの」
「!」
不意に、音楽室のドアが開いた。
聞きなれた声に一度軽く目元を拭ってから振り返る。
「フィア?」
そこに立っているのは紛れもなく探し人。
サファイア色の瞳が驚いたように見開かれている。
「音楽室から音が聞こえてきてな。誰が弾いているのかと思ったよ……
お前、ピアノなんか弾けたのか」
意外だな、と呟きつつ歩み寄ってくるフィア。
シストはふっと笑って頷いた。
「今まで、誰かの前で弾くことはあまりしなかったからな」
「そうか……なぁ、もう一度弾いてみてくれないか?」
想定外のフィアの要望に、シストは目を見開く。
ぶんぶん、と首を振って、苦笑した。
「はぁ?い、嫌だよ。下手くそだし」
「下手じゃないさ。少々つっかえ気味ではあったが」
「暗に下手って言ってるだろそれ」
ったく、と言いつつシストは椅子に座る。
アメジストの瞳をフィアに向けてふっと笑みを浮かべた。
「リクエストは?」
「何でもいいよ。お前が好きなものを」
そうかよ、と呟いてシストはもう一度鍵盤に手を置く。
そのまま、一つ息を吸って。
窓の外に一度、目をやってから。
シストは、静かに音楽を紡ぎ始めた。
―― 紡がれるのは…… ――
(途切れ途切れの旋律(メロディ)
あの頃より下手くそになったけど、聴こえてるか……?)
性 別 | 女性 |
年 齢 | 29 |
誕生日 | 7月27日 |
地 域 | 静岡県 |
系 統 | おとなしめ系 |
職 業 | サービス |
血液型 | AB型 |