フィアとシストのSSです。
パートナーとしてつらい決断を迫られた時、
シストはどうするだろうな、と思って書いてみました。
多分、シストはこうするだろうし、
立場が逆でもきっとこうなるだろうな、と思いつつ…
*attention*
・フィアとシストのSSです。
・シリアスです
・流血描写有です
・相変わらずの星蘭クオリティです。
・無駄に長いです
以上が大丈夫な方は、追記からどうぞ!
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主に創作について語ります。 バトンをやったり、 親馬鹿トークを繰り広げたりします。 苦手な方は、どうぞ戻ってやってくださいませ! (私のサイト「Pure Rain Drop」) → http://id35.fm-p.jp/198/guardian727/
フィアとシストのSSです。
パートナーとしてつらい決断を迫られた時、
シストはどうするだろうな、と思って書いてみました。
多分、シストはこうするだろうし、
立場が逆でもきっとこうなるだろうな、と思いつつ…
*attention*
・フィアとシストのSSです。
・シリアスです
・流血描写有です
・相変わらずの星蘭クオリティです。
・無駄に長いです
以上が大丈夫な方は、追記からどうぞ!
―― 強い、風が吹く。
紫髪の少年が剣を向けているのは、亜麻色の髪の少年。
アメジストの瞳に宿るのは、苦痛の色。
対する亜麻色の髪の少年の青い瞳には、何も灯っていない。
「フィア」
紫の髪の少年は、小さく相手の名を呼んだ。
目の前に立つ、パートナーの名を……
***
―― さかのぼること、数十分前。
フィアとシストはある任務に赴いていた。
魔獣の調査チームから入った連絡。
普通の魔獣ではない。危険な魔獣の討伐の任務。
魔術にたけたタイプの魔獣で、人の精神を支配し、
仲間内で殺し合わせる、という危険な種らしい。
そんなものが野生でいるはずがない。
大方、どこかで作り出された合成魔獣が逃げたか、棄てられたかしたのだろう。
そのような見解らしいが、ともあれ放っておくわけにはいかない。
まだ今のところは森の中にいるらしいため、被害は出ていないが、
放っておいて街に行こうものならば……恐ろしいことになる。
そこで任務を命じられたのは、雪狼の騎士の派遣。
炎豹の騎士では万が一魔力を食らった時に周りに甚大な被害を及ぼすし、
戦いが得意でない草鹿の騎士を連れて行くのは危険すぎる。
万が一炎豹の騎士が魔術を受けて相手を攻撃し始めた場合に不利過ぎるからだ。
攻守ともに優れている雪狼の騎士ならば、ということで入った任務に、
フィアとシストが向かうことになった。
彼らのコンビネーションは誰が見ても明らかであったし、
魔術剣術共に申し訳ない実力を持っている二人だ。
しかし、ルカは浮かない顔だった。
無論、そうだろう。どこの部隊長でも、躊躇う。
万が一のケースを考えると……
しかし、一番可能性が高いのならば、と彼らに任務指令を出した。
―― 十分に、気をつけろよ。
真剣な顔で、ルカは言っていた。
任務に来たフィアもシストも十分気を付けていた。
放たれる魔術はすべて障壁で防ぎ、少しずつ、着実に魔獣を追い詰めていった。
最後の一太刀をシストが浴びせようとした、その瞬間。
魔獣のうなり声と同時に放たれた、青い光。
フィアは障壁を張った。パートナー、シストの前に。
……自分の周りには、張らず。
「!」
シストは気づいた。賢い魔獣の、"本当の狙い"に。
「フィア!俺じゃない!狙われてんのは……ッ!」
―― お前だ!
シストの声が届くのと、魔術がフィアにあたるのは同時で。
フィアが苦しげに表情を歪めた。
シストは舌打ちして魔獣にとどめを刺す。
断末魔の叫びをあげて息絶えたそれを放置し、フィアに駆け寄った。
「フィア!大丈夫か!?」
「あ、あぁ……当たった瞬間は痛みがあったが、今は、何ともない」
そう返答するフィアは至って普通。
しかし、フィアの性格上、それが事実とは限らない。
シストは険しい表情のまま問いかけた。
「本当か?無理して、ないか?」
「本当だよ。今嘘をついてもしょうがないだろう?」
心配そうに尋ねるシストに苦笑を漏らし、フィアは返答する。
"お前に迷惑をかけるだけだろうが"という表情はいつも通りのフィアのそれ。
シストはようやく表情を緩めた。
「大丈夫なら、良いんだ……よかった」
「あぁ、心配させてすまないな。
多分、何か違う魔術だったのだろう。痛かっただけで、何ともない」
ふっと笑って頷いたフィアはシストに向かって手を差し出した。
きょとんとするシストに"ハイタッチ"という。
「……いつもはお前からしてくるだろうが」
少しすねたような口調のフィアにシストは暫し驚いた顔をして……
その手に自分の手を当てた。
「お疲れ」
「あぁ、お疲れ、シスト」
何時ものように笑い合って。城に向かう道を歩き出した。
***
「あ」
フィアが声を漏らす。
どうした?と振り向くシストに"先にいっててくれ"という。
「紐が解けた」
自分のブーツの足元を指差しながら言う。
シストは納得した顔をして頷いた。
そのまま歩いていて、急に魔獣に襲われたりしたら、シャレにならない。
「すぐ追いつくから」
「あぁ」
シストはフィアに背を向けて歩き出した。
ゆっくり歩く。
「フィアも意外と抜けてるとこあるよな」
靴紐くらいしっかり結んどけよな、と呟きながら苦笑した。
―― その刹那。
向けられた殺気。
シストは反射的に剣を抜きながら振り向いた。
キンッと高い金属音。
辛うじてその攻撃を防いだものの、"相手"の顔を見て、シストは目を見開いた。
亜麻色の髪。サファイアブルーの瞳。
「フィア、お前……っ」
剣を向けているのは、殺気を向けているのは、紛れもなく自らのパートナーで。
蒼い瞳が、残酷な光り方をした。
「時差式の、魔術か……?!」
やはり、さっきの魔術は……そう悟った。
背に、冷たいものが伝う。くっと小さく息をのみ、強く剣を握った。
フィアは容赦なくシストに切りかかる。
鋭い剣が掠めるたび、シストの身体に増える傷。
「フィア……!」
名を、呼んだ。祈るように。
しかし、フィアの意識は戻らない。
―― 覚悟を、しなきゃならないのか……?
フィアの剣を防ぎつつ、シストは思う。
相手を見据えれば、帰ってくるのは虚ろな蒼の視線。
それは、"普段のフィア"のそれではなくて。
思い出すのは、自分の過去を初めて明かした"あの日"のフィアの言葉。
―― 俺は……操られて、自分の仲間を殺めてしまうくらいなら……
"お前に殺されたい"と、フィアはそう言っていた。
心のどこかで、思い込んでいた。"そんなのは、あくまでも最悪の仮定"だと。
本当に起こり得るとは、思っていなかった。
しかし、それは違っていた。
「ぐ……っ」
氷の魔術が襲い掛かる。
鋭い氷柱に肩を裂かれ、シストは痛みに呻く。
魔獣の魔術に意識を奪われたフィアは浅く笑いながら、冷たい魔力を放ち続ける。
フィアの魔力が尽きるまで防ぎ続けようかとも思ったが、
フィアは人並み外れた量の魔力を有している。それを防ぎきるのは不可能だろう。
それに……普段のフィアより荒い戦い方とはいえ、
魔力の質は、剣術の強さはいつものフィアと同じ。
一回一回の攻撃で与えられる傷の深さは、魔獣に負わされるそれの比ではない。
―― このままだったら、本気で死ぬな……
冷静に、考えた。
白い騎士服に滲んでいく赤い血液。
次第に体が重く、冷たくなっていくことが、傷の深さを、出血量の多さを物語っている。
このまま戦い続ければ、間違いなく命に係わる。
そう……フィアに、殺される。
フィアが一番恐れたことが現実になるのは時間の問題で……
シストは目を閉じて、すっと息を吸った。
そして、しっかりと剣を構え、切りかかる。
勢いよくそれを振り下ろせば、フィアが驚いた顔をした。
「悪いな、フィア……」
小さく呟いて、剣を振るった。
さっきまでの防ぐだけの剣術ではなく、敵に切りかかるときの剣術に、切り替えて……
***
何度も、剣をぶつけ合った。
フィアも、意識こそ魔獣に奪われているとはいえ強さはフィアそのもの。
しかし、シストだって本気で。
「!」
フィアが、その場で転んだ。怯えた顔をするフィア。
シストはくっと息をのんで、剣をフィアの方へ突き出す。
フィアも応戦するように剣を抜いた。
―― 一瞬、その場を包む静寂。
シストは……剣を、握っておらず。
その脇腹には深々とフィアの剣が刺さっている。
「……悪ィ、フィア」
「…………」
「俺、やっぱり……」
―― お前を殺すなんて、出来ないよ。
笑いながら、そう呟く。
嫌だった。
一度ならず、二度までも自らのパートナーを失うこと。
それも、自分の手で命を奪うことなんて、出来るはずがなくて……
「……ごめん」
どちらが正解か、わからない。
「出来れば、元の、フィアに……」
戻って、くれと。
静かにフィアを抱きしめてシストは笑う。
―― やばいな……
意識が揺らぎ始めて、シストはその場に膝をついた。
その時。
「……し、すと……?」
弱い声が、聞こえて。
ぼんやりと目をあけて見上げれば、見開かれた蒼の瞳。
先刻までの虚ろな目ではない。
光の灯った蒼の瞳。
しっかりとした声で、パートナーの名を呼ぶ。
「シスト……っ!」
「フィア……?魔術……魔術が、切れた……のか?」
ちゃんと魔獣を仕留めた。
だから、残っていた魔獣の魔力が消えたために魔術が解けたのだろう。
シストは推測した。
しかし、それはあくまで"推測"の域を出なくて。
「よか……」
ふわり、と微笑んで。
良かった、と呟くように言うのと同時にその場に崩れ落ちるシスト。
フィアはそれを抱き上げる。
「シスト……!シスト、しっかりしろ!」
シストを抱き上げ、フィアは叫ぶ。
彼の体中に、深い傷。騎士服を染める紅い血。
自らが負わせた傷と、フィアも理解していて。
―― 嫌だ……!
***
―― 白い、光。
「……ん」
ぼんやりと、開かれたアメジストの瞳。
それに映ったのは風に揺れる、亜麻色の髪。
「フィア……?」
小さな声で呼ばれて、はっとしたように振り返るフィア。
「!シスト……っ!」
ベッドの上で体を起こせば全身が痛んで思わず声を漏らす。
仕方なくベッドに体を横たえなおすのと同時に、フィアはシストを覗き込んだ。
「よかった……」
「フィア、お前は大丈夫か……?」
心配そうに問うシストを見て、フィアは目を見開く。
そして、そのまま怒鳴った。
「馬鹿!俺の心配してる場合か!」
「や、だって……魔術くらったのは、お前だろうが」
「その所為で怪我をしたのは……死にかけたのはお前だ……っ
自覚しろ馬鹿!」
「バカバカ言うなよ……生きてるんだからいいだろ」
「そういう、問題じゃ……っ」
声が震えて、フィアは俯く。
シストはその様子を見て、驚いた顔をした。
「フィア、お前……泣いてる、のか?」
「泣いてないっ」
そう叫ぶフィアだが、その瞳は確かに潤んでいて。
シストは驚いたままに、パートナーを見つめる。
彼に見つめられていることに気づいたのか、フィアはさらに深く俯いた。
どうしたものか、と悩むシストの耳に入ってきたのは、弱弱しい声。
「……俺の、気持ちがわかるか」
「ん……?」
「仲間を、パートナーを……お前を、殺しかけた俺の気持ちが、わかるか?!
言ったよな、俺は……っ」
「"仲間を殺めるくらいならお前の手で殺されたい"だったよな……覚えてるよ」
「だったら……!」
「それは、俺だって同じだ。
……俺の手でお前を殺すくらいなら、お前に殺されたい……」
悲鳴にもよく似た声で叫ぶフィアの言葉を静かな声で遮って、シストは笑う。
ふっと真剣な顔をすると、泣き顔のパートナーの頬に手を伸ばした。
その手に確かに伝う暖かな涙。
「でも、たぶん間違った選択だろうな。
お前を……精神を失ったお前を放っておけば、周りに被害が行くことは、確かだから。
それも、わかってた……でも、出来なかった」
「お前は、本当に……っ」
「俺は弱虫だよ。わかってる」
「違う……大馬鹿で、間抜けで、考えなしで……
底なしの、お人よしだって、言おうと思ったんだっ」
「あはは……そうかよ。……とりあえず、泣くな。俺は生きてる」
な?と宥めるように言えば、フィアは恨みがましそうな目でシストを見つめる。
涙に潤んだままのサファイア色の瞳を見つめ、穏やかに微笑んで。
フィアは再び俯いて、詫びた。
「……ごめん」
「なんで謝るんだよ」
「俺が、お前を……」
「気にすんなよ。正気じゃなかったんだから」
「でも、俺が魔術……」
「諄いぞ。平気だって言ってるだろ。
この騎士団の医療部隊の実力は確かだし、何とかなるって」
シストの言葉に、フィアはようやく頷いた。
そして静かな声でいいう。
「本当に、怖かった」
「うん」
「お前を……失うのが、怖かった。この手で、殺してしまうのかと思ったら、怖かった」
そう、怖かった。
意識を取り戻した瞬間、目に飛び込んできたのは傷ついたパートナー。
良かった、と微笑む彼が倒れる姿。
彼の服を、自分の服を染める、真紅の血液。
冷たい体も、弱い呼吸も。
慌てて医療棟に駆け込んで、それ以降の記憶が酷く曖昧。
それは、きっとフィアが相当混乱していたためなのだろう。
自分自身が、理解していた。
「あぁ、わかってる」
シストとて、わかっていた。
仲間を、パートナーを失う辛さは、誰よりよく知っている。
それに、フィアが一番恐れていたことを知っていたから。
本当はフィアを止めるべきだった。
命を、奪ってでも。
それが、フィアに対する一番の思いやりであり、最善の策だったはず。
しかし、それが出来なかった。
―― でも、良いよな……?
こうして、生きているのだから。
「フィア、手を貸してくれ」
「起きるのか?無理は……」
違うよ、と言ってシストはフィアの手を握る。
突然のその行為に、フィアは驚いた顔をした。
"なんだよ?"と呟くフィアに、シストは言う。
「ほら、俺は生きてるから……」
だから、心配するなとそういえば、
フィアはもう一度だけ"馬鹿"と呟いた。
―― 温もりを、感じて ――
(最善の策なんて、誰もわからない。
でも今この場で生きている。だから、問題はないのだろう)
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性 別 | 女性 |
年 齢 | 29 |
誕生日 | 7月27日 |
地 域 | 静岡県 |
系 統 | おとなしめ系 |
職 業 | サービス |
血液型 | AB型 |