リスタとカルセという前世代組のSSです。
ちょっぴり科学者と道化師コラボを意識、ですかね…
(カルが最後に"心配かけられない人がいるから"的なこといってる←)
出番が少ないリスタさんを動かそうとした結果です…
ごめんねリスタ!お前交遊狭すぎるんだ←おい
それでも前世代組、もとい大人組も割りと好きな星蘭です(笑)
ともあれ、追記からお話です!
穏やかな陽光が降り注ぐ、冬のある日の午後……
淡水色の髪の男性はゆっくりとディアロ城の廊下を歩いていた。
まだ冬の冷たい空気が流れてはいるが、
降り注ぐ暖かい光のお陰で少し過ごしやすい。
そんな暖かな空気のなか、彼……カルセは静かに目を細めた。
こういった穏やかな気候は、好きだ。
外で遊んでいる騎士たちもたくさんいる。
そんな彼らの無邪気な表情を見ているのは癒されるし、騎士団にいた頃を思い出す。
さていこうか。
そう思って歩き出した彼だが……
廊下の曲がり角で、誰かにぶつかりかけた。
「おっと……すみませ……」
「あれ?!カル!?」
聞こえた聞きなれた声、しかし懐かしい声に、カルセは驚いたように目を見開いた。
目の前にたっているのは、銀髪に銀の瞳の青年だった。
自分より若干年下、そんな彼の姿にカルセも大きく藍色の瞳を見開く。
「リスタ!貴方も来ていたのですか」
珍しく驚いた声をあげて、カルセは目の前にいる銀髪の男性……リスタに言う。
リスタはにっと笑って、いった。
「あぁ。俺もさっき来たとこだよ……ちょっとクオの顔を見にな」
彼は弟であるクオンのことを溺愛している。
騎士団を退団した今も、こうして時おり顔を出す理由の大半は弟に会うためだ。
否、ちゃんと仕事のためにも来るのだけれど。
「相変わらずですねぇ、貴方も……」
そういって苦笑した後、カルセはすっと目を細めた。
そして、少し声のトーンをおとして、訊ねる。
「足は、大丈夫なのですか?寒いと痛むでしょう」
カルセに訊ねられて、リスタは一瞬きょとんとした。
しかしすぐにその問いかけの意味を理解すると、明るく笑う。
そして、傷を負った方の足を軽く撫でて言った。
「平気平気。
まぁたしかに寒いときはちょっと痛いけど、
歩けないわけじゃないし、走れないこともない。
ただ、あんまり激しい運動すると足が使い物にならなくなる、ってのは聞いてるよ」
ジェイドからな、とリスタは言う。
以前、任務中に酷い傷を負ったその足で無茶をすれば、
今度こそは走るどころか歩くことさえままならなくなる、と言われている。
それが脅しでないことは、誰よりリスタがよく知っている。
あと少し、この騎士団の医術が及ばなければ、
この右足は切り落とすことになったと言うから。
カルセはその言葉に小さく頷いた。
「……なるほど。でも、痛々しいですねぇ……
私たちの中で一番足が速くて身軽だった貴方がこうなるとは」
カルセはそういいつつ、ふうっと息を吐き出す。
遠い昔を思うような藍色の瞳には、悲しげな色が揺れている。
昔から彼のことを知るカルセにとって、
走ることが出来ない彼、というのは違和感がある。
かつての風隼統率官。
印象が強い分、どうしても……痛々しく感じるのだ。
カルセの表情を見て、リスタは彼を安心させようとするようににっと笑った。
そして、ぽんぽんとカルセの背中を叩く。
流石に長身の彼の頭を撫でるというのは難しい所業だから、そうしたのだろう。
少し驚いた顔をするカルセに、彼はいった。
「そんな顔すんなって。
お前の可愛い教え子のお陰で俺は今こうして一応五体満足でいられるんだからさ」
「ふふ、それは良かったというべきか……
まぁ、ジェイドの医療技術がそこまで追い付いていて良かった、というのが、
私としては喜ばしいところではありますけれど」
カルセはそういうと、小さく肩を竦めた。
少しだけ表情は緩んでいるが、それでもやや心配そうな表情は変わらない。
リスタが任務中に傷を負って騎士団を退団したのが、
カルセがいなくなった後だったため、詳しい事情を知らないためだろうか。
リスタはふう、と溜め息を吐き出すと、少し背伸びをしてカルセの額を小突いた。
再び驚いた顔をする彼を見つめ少しおどけたように言う。
「もー、カルは心配性だなっ!
俺は元気だし、大丈夫だっての!
心配要らない大丈夫!」
「あのねぇ、リスタ……
普通に考えたら、心配もしますよ……
貴方がおとなしく家にいたり、研究室にこもっているのならばいざ知らず、
幾度か無茶をしたらしいという話も聞きましたしねぇ……」
そういいつつ、カルセはちらとリスタの銀の瞳を見る。
そこに動揺の色が揺れた。
カルセは呆れたように溜め息を吐き出しつつ、小さく首をかしげる。
「おや、私が知らないと思いました?
ジェイドから聞かされていますよ……」
無茶、の内容はリスタの方がよくわかっている。
う、と小さく呻いて視線を逸らした。
カルセはそんな彼を暫し見つめていたが、やがて小さく溜め息を吐き出した。
「……頼みますからあんまり無茶苦茶をやらないでくださいよ」
「わかってる、気を付けるよ……」
リスタは観念したようにひらり、と手を振った。
心配される理由はよくわかっているし、
本当にカルセが心配していることもわかっている。
でも、といってリスタは顔をあげる。
そして、カルセの藍の瞳を見据え、いった。
「でも、それはカルもだぜ?」
「私も?」
虚を突かれた顔をする彼に、リスタは大真面目に頷いた。
そして、苦笑を滲ませながら言う。
「カルは任務或いは研究のためなら自分の限界越えててもいく奴だっただろ。
ばれてないと思ってんなら大間違いだぜ?」
「……わかっていますよ、ほどほどにしておきます」
そういってカルセは軽く手を振った。
彼も、幾分思い当たる節があるのだろう。
「ったく、人のこと言えないんじゃないか」
「ふふ、大丈夫ですよ……
心配させられない相手もいますからね」
意味ありげにそういって微笑むと、カルセは時計を見た。
「思いの外長く話し込んでしまいましたね。すみません、リスタ」
「いいや、構わないよ。久しぶりに話せてよかった!」
じゃあな、といって歩いていく彼をカルセは見送る。
右足を若干引きずるような歩き方に目を細めると、カルセもゆっくり歩いていった。
―― Worry… ――
(古くからの友人であるからこそ心配するのです
医者として、友人として…貴方が困った時に側で支えてくれる人がいるといいのですが)
(自由が利かなくなった俺をお前は心配するけれど
心配なのはお互い様だ。お前の性格は俺だってよくわかってるんだから)