本日はチャーチルさんのお誕生日、ということで…
フォルスタ&チャーチルさん&ド・ゴールさんでお誕生日ネタなSSを書いてきてしまいました…!
いつもフォルスタ絡みでお世話になっているチャーチルさんに
こういうサプライズ的なことをするのとか、いいなと思って…!
フォルスタは勿論、何気ド・ゴールさんとチャーチルさん、
チャーチルさんとスターリンさんとの絡みも大好きなので
色々混ぜさせていただきました←おい
ともあれ、チャーチルさんお誕生日おめでとうございます!
では、追記からどうぞ!
―― 夕日が差し込む、静かな生徒会室。
そこで一人書類に目を通しているのは茶髪の少年。
「ふぅ……」
少し下がっていた眼鏡を直して、小さく息を吐きだした。
遠くに聞こえる部活動をしている生徒たちの声。
時計を見れば、結構な時間が経過している。
どうにかあと少しで仕事も片付きそうだ。
「静か、ですね……」
茶髪の彼……チャーチルは小さく呟いた。
誰もいない生徒会室は酷く静かに感じる。
会長は委員会会議で不在。
副会長である自分以外の役員は先に仕事を終えて生徒会室を出ている。
先程までは書記担当の浅緑の髪の少年が残って手伝ってくれていたのだが、
"他校の彼"から連絡があって出ていった。
もっとも、彼……スターリンは残って仕事を手伝うといったのだが、
チャーチルが早く彼のところにいってやるように言ったのである。
わざわざ他校からこうして迎えに来てくれている彼を、
この寒空に長く待たせてもなんでしょう、と。
どっちにしても自分でこなさなければならない仕事は終えていたのだから、
彼が残る義理はなかったし。
そろそろ薄暗くなってきたし電気をつけようか、と思った時。
デスクの上にのせていたチャーチルの携帯が振動した。
何かと思って画面を確認してみて……
チャーチルは怪訝そうな顔をした。
「スターリン?」
画面に表示される発信者の名前は先程まで一緒にいた書記の彼。
いったいどうしたのだろうか、と思いながら通話状態にする。
「もしもし、スターリン?忘れ物でもしたのですか?」
考えられる要因とすればそれくらいか、とチャーチルは問いかける。
すると電話の向こうでスターリンが笑った。
『いや、そういうわけじゃあないのだよ……』
「?ならば、どうして?」
『え、っと……あー……
チャーチル、あとどれくらいで仕事終わりそうだ?』
唐突な彼の問いかけにチャーチルはきょとんとした。
一体どうしたというのだろう?
「え、あ……そこまで遅くまではかからないと思いますが……
どうかしましたか?」
『いや、仕事片付いたら図書館に来てほしいのだよ』
「図書館に?」
スターリンからのよくわからない呼び出し。
そもそも、彼を呼びつけたであろう亜麻色の髪の彼はどうしたのだろう?
様々なことが疑問のままに、
チャーチルは怪訝そうな顔をしつつ"構いませんが……"と返した。
特に用事があるわけではないし、
そもそも先に仕事を終えたド・ゴールには
図書館で待っててくれるように最初からいってある。
一緒に帰ろう、と約束をしてあるのだから、
どっちにしろそこにいくし……と返せば、
電話の向こうの彼はほっとして息を吐いたようだった。
『じゃあ、図書館で待ってるのだよー』
そういってスターリンは電話を切った。
「……?一体何なのでしょう」
小さく呟く。
一切事情がわからない。
とはいえ、いくと返事をした手前、急いでいった方がいいだろう。
チャーチルは少し不思議そうな顔をしつつ、残った作業を片付け始めた。
***
チャーチルが仕事を終えたのは、それから二十分ほどしてからだった。
図書館の閉館時間も迫っていたために急いでいったのだが……
図書館の前に立っているスターリンとド・ゴール、そして亜麻色の髪の他校生。
チャーチルは少し驚いた顔をして、大きく目を見開いた。
「え、どうしたんですか。皆揃って……」
寒いなか何故外に?とチャーチルがいうと同時。
響いたのはパン!と軽い破裂音。
そしてチャーチルの頭にかかる、色とりどりのテープ……
唐突なそんな出来事にチャーチルは大きく目を見開いた。
「な……!?」
「ふふ、びっくりした?」
くすくす、と笑っているのは亜麻色の髪の少年……フォル。
彼の手には小さな筒上のものがある。
ヒラヒラと舞ったテープと破裂音から、それがクラッカーであったことを悟った。
現に、スターリンとド・ゴールも自分の方にクラッカーを向けている。
「誕生日おめでと!」
「おめでとう、なのだよ」
「……おめでとう」
上から順に、フォル、スターリン、ド・ゴールである。
チャーチルは幾度もまばたきをしてから……
嬉しそうに表情を綻ばせた。
―― そう。
今日……十一月三十日はチャーチルの誕生日で。
オリジナルとフラグメントの誕生日は同じなのだ。
そんなときに仕事山積みというのは少々切ないものがあるな、と、
内心思ってはいたのだけれど。
スターリンはそんなチャーチルにすまなそうに笑いかけた。
「悪いな。ほんとは仕事ちゃんと片付けて、
手伝ってから一緒にこっちに来ようと思ってたんだけど……」
「だってそうしたら書記長様は一緒にクラッカー鳴らせないだろう?
僕、皆で同時にお祝いした方が絶対ビックリすると思ったからさぁ」
フォルはそういって唇を尖らせる。
どうやら、これは彼の作戦らしい。
自分から誕生日を教えた記憶はないからスターリンに聞いたか、
自分で調べたか……どちらかだろう。
確かにスターリンやド・ゴールがこんなことをしようと言い出すとは考えにくい。
ド・ゴールはといえば"俺まで参加することになってるし"と小さくぼやく。
"そういうわりに君もちゃんと乗ってくれたじゃないか"とフォルに言われて、
顔を赤くしつつ"一緒に帰る相手に俺だけ言わないのも変だろう!"と言い返す。
そんな彼らのやり取りを見て、チャーチルは嬉しそうな顔をする。
「ありがとうございます……嬉しいですよ」
"少しびっくりしましたけれど"といって、チャーチルは笑う。
そのリアクションに、スターリンと何やらいいあいをしていたフォルが向き直り、
人懐っこい笑顔を浮かべた。
「喜んでもらえたならよかったよ。
いつもお世話になってる君の誕生日、お祝いしたかったからね」
そういってフォルはひとつウインクした。
直接チャーチルと何かをするようなことはあまりなかった彼だが、
彼が愛おしいと思っている少年……スターリンの共通の友人で、
自分が傍にいられないときには彼を支えてくれている人、という認識で、
偶然図書館で顔を合わせたときから親しくなった。
そんなチャーチルに少なからずフォルも感謝しているのだ。
「ふふ。わざわざクラッカーまで鳴らしてくれるとはちょっと予想外でした」
「クラッカー(コレ)はフォルが自前で持ってきたのだよ。
それをド・ゴールと俺にも渡して……」
「お前が来たら鳴らせ、と言われたんだ」
ド・ゴールがそうくくる。
そうでしたか、といってチャーチルはもう一度三人に礼を言う。
すると、フォルは微笑みながら、チャーチルにいった。
「じゃ、今から場所移動。一緒にお菓子屋さんいこう?
僕の妹のバイト先だけど……
ケーキ、作っといてくれるように頼んであるんだ」
「本当に用意周到だな、フォル」
スターリンが驚いたような、半ば呆れたような声で言う。
フォルはにこにこと笑いながら先に歩き出した。
「ほら、早くおいでよ!」
先にたって歩き出す、亜麻色の髪の少年。
彼が一人でさっさといかないように抑えにいく、浅緑の髪の彼。
「せっかくですし、いかせていただきましょうか。
ド・ゴールも、行けるでしょう?」
隣に立つ薔薇の髪の少年にチャーチルはそう問いかける。
彼は小さく頷いて、"お前の誕生日だろう"とそっけなく返した。
チャーチルはそんな彼に小さく笑みをこぼしつつ、
先に歩き出したフォルとスターリンを追いかける。
暗くなった空には美しい星が輝き始めていて、
灯った街灯が四人の影を長く地面に落としていた。
―― Surprise! ――
(誕生日おめでとう、と明るく笑う友人たちの声。
寒い風のなかでも確かに心は暖かくって)
(嬉しそうに礼を言う主役の表情。
それを見ているだけでやってよかったな、と思えて……)