部下の(中略)コラボのSSです。
優しいヒムラーさんとそれみてほほえましく思ってるルカを書きたくて…
*attention*
部下の(中略)コラボのSSです
ほのぼのなお話です
目が不自由なマリンとも面識があって、彼女にも親切なヒムラーさんのお話
図書館でのルカとヒムラーさんのシーンを書きたかった←おい
ルカは親切なヒムラーさんのことをいいやつだなぁ、ってほっこり思ってます(何)
相変わらずの妄想クオリティ
ナハトさん、本当にすみませんでした…!
以上がOKというかたは追記からどうぞ!
昼下がりの、ディアロ城の内部にある図書館。
任務がなく暇を持て余した騎士だけがいるその部屋はしんと静まり返っている。
時折響く本のページをめくる乾いた音。
読み終わった本を片付けにいく騎士の忍ばせたような足音以外はほぼ無音だ。
そんな部屋のなか、赤紫の髪の青年はちょっとした格闘をしていた。
「ん……んー、届かない……」
ぐっと伸びをして本に腕を伸ばした彼はふう、と息を吐いた。
伸ばしっぱなしだった腕が少々痛い。
彼が先程からとろうとしているのは梯子を持ち出すまではない、
しかし小柄なヒムラーではぎりぎり届かない高さにある本。
それに手を伸ばしてとろうと格闘をはじめて早五分が経過しようとしている。
諦めて梯子を借りにいこうか、と思ったその時。
「これか?」
後ろから伸びてきた手がヒムラーがとろうとしていた本をすっと抜いた。
聞こえた声は聞きなれたもので、ヒムラーは驚いたように振り返る。
そこにたっていたのは予想通り、見慣れた黒髪の彼で。
「ルカさん……」
本を片手に自分を見ている彼の名前をヒムラーは呼ぶ。
彼はふ、と笑って本をヒムラーに差し出した。
「こんなとこにいるのは珍しいな。
ハインリヒが図書館にいるってなったらいつもの棚かと思ったんだが……
此処、小説の棚だろ?」
ルカは周囲を見渡しつつそう呟いた。
普段滅多に図書館になど来ない彼だが、
一応タイトルをみてそれが何の本であるか位はわかるらしい。
ヒムラーは小さく笑って"僕が読むわけではないのですけれど"という。
「?自分で読まないんなら、何で?」
少し不思議そうな顔をしたルカにヒムラーは説明しようとしたが、此処は図書館だ。
あまり騒ぐのもいただけない。
「説明はあとから……
とりあえず、本の貸し出し手続きしてきます」
「あ、手伝うよ。また大量に本集めやがって……」
ヒムラーの抱えている本の山をみてルカは苦笑する。
読書家、研究好きな彼はどうしても図書館に来るとたくさんの本を集めてしまう。
腕力がある方でない彼はたくさん本を持つと落としてしまうのだ。
「先いくぞ?」
ルカはヒムラーが持っている本の半分を持つとさっさとカウンターに向かう。
さりげなくもやや強引なフォローに苦笑しつつ、ヒムラーはルカを追いかけた。
***
「そんで?何でお前がそんな本とりたがってたんだ?
お前が読む訳じゃない、っていってたけど……」
本をもってヒムラーの部屋に戻ってきたルカはヒムラーに訊ねた。
彼がいた本棚の段階からルカは疑問に思っていたのである。
基本的に歴史書や魔術書が多い城の図書館だが、
幼い騎士たちもいるために普通の小説等も置いてある。
ヒムラーがいたのはそんな棚。
普段彼が読む本とはかけ離れたジャンルである。
ヒムラーは頭の上にちょこちょこと上っている召喚獣のひよこを下ろしつつ、
"あぁ、それはですね"と笑いながらいった。
「以前街の書店で出会った女の子に、読み聞かせてあげようかな、と。
流石に所見で読むのは難しいので、その練習がしたくて」
「読み聞かせ?」
ルカはいっそう怪訝そうな顔をした。
そんな彼に頷いて見せつつ、ヒムラーはいう。
「えぇ。以前街で出会った目が不自由な女の子がいて、
前にも読み聞かせをしたんです。
あ、あの……アネットさんの妹様です」
「あ、あぁ!マリン様か!」
ルカもそこまで聞いて納得した顔をした。
アネットはルカの同期生の騎士。
無論その家族である彼の妹とも面識はある。
―― そう。
ヒムラーが図書館で探していたのは、
以前であった赤髪の少女が読みたがっていた本のシリーズ。
「ハインリヒ、マリン様と面識あったんだな。ビックリした」
「えぇ。前に書店で偶然お会いして……
またいつか、お会いしたときに読んであげられたら良いかな、と思って」
ヒムラーはそういいつつ本の背表紙をそっと撫でる。
その表情はとても優しいものだった。
目が不自由で文字は点字でしか認識できない幼い少女。
点字に翻訳される本はごく一部だから、とつまらなそうにいっていた彼女。
以前であったときにも、彼女が読みたがっていた本をヒムラーは読み聞かせてやっている。
そんな優しいヒムラーの横顔を見つめつつ、ルカは微笑んだ。
「へぇ……本当に優しいのな、ハインリヒ」
ルカは感心したようにいった。
アネットの妹……マリンが視力を失っていることはしっていたが、
だからといってどういうフォローをしてやれば良いかなどは考えたことがない。
せいぜい、彼女がアネットに会いに来るときに使いを寄越すくらいのものだ。
本の読み聞かせなど、考えたこともなかった。
「いえいえ。読みたい本が読めないっていうのはつまらないだろうな、と」
ヒムラーはそういって照れ臭そうに笑う。
ルカの手放しな誉め方は少々照れるものがある。
「そういえば、ルカさんは僕に何か用事があったのですか?
図書館まで探しにきたということは何か用事だったのでしょう?」
ふと思い出したようにヒムラーは問いかける。
普段からよくヒムラーの部屋に遊びに来るようになったルカだが、
用事がない限りは自室にいなかった場合諦めて部屋に戻っている。
そんな彼がわざわざ図書館まできたということは、何らかの用事があったのだろう。
そんなヒムラーの言葉にルカは"忘れてた"と呟いた。
「そうだった。本繋がりでの話なんだが、
ディナ陛下が陛下の姉君の集めていた資料を貸してくださってな。
陛下の姉君……ディアノ様もお前と同じように古代の魔術とか研究してたそうで。
ディナ陛下に前にハインリヒのことを前に話したんだけど、
自分とにたようなものに興味を持ってる騎士がいるだけで酷く喜ばれてな……」
"俺が読むわけでもないのに貸してくださったんだ"とルカは苦笑する。
ヒムラーはそんな彼の言葉に目を丸くしてまばたきをする。
一介の騎士がそこまで王女と親しく会話をするものなのか、と。
あげくそれで自分の名前をルカがあげていたことにも驚いた。
だが、その点はルカに"うちの陛下ならありうるだろう?"といわれ、納得した。
ヒムラーもこの国の王女のマイペースさはよく知っている。
「量があるから俺の部屋に起きっぱなしになってるんだけど、読むだろ?」
「えぇ、是非!」
嬉しそうに笑うヒムラー。
少々おそれ多くはあるが、研究熱心な彼にとって、
新しい資料というのはやはり魅力的だ。
ルカは嬉しそうに笑うヒムラーをみて目を細めた。
自分の好きなものにたいしてこうして子供のようにはしゃぐ彼の姿を見るのは、
なかなか心が暖まるものである。
じゃあいくか、といって立ち上がるルカに勢いよく頷いて、
ヒムラーはルカの背中を追いかけた。
―― Kindness ――
(お前は謙遜したけれど、やっぱりお前は優しいと思うよ)
(だって読みたいものが、好きなものが制限されるというのは
やはりつまらないと思うから…できる限りお手伝いしたくて)