主人公コラボでシリアスめなお話を。
死ねたではないですがこういう話好きです…←
雨と美人さんの涙は素敵だと思います(おい)
*attention*
主人公コラボSS
シリアスちっくです
落ち込んでいるヒトラーさんとそれを慰めるフィア、的な
雨に濡れる美人さんが大好きなのです(おい)
泣いてる人を慰めさせる図が好きです←
相変わらずの妄想クオリティです
ナハトさん、本当にすみませんでした…!
以上がOKというかたは追記からどうぞ!
雨が降り注ぐ。
夕刻になってから降りだした雨は次第に強さを増していた。
そんな、ディアロ城の薔薇園……
その入り口付近に蹲る影がひとつ。
彼の長い黒髪はすっかり雨に濡れて、黒い制服にかかっていた。
うつむいた彼の白い首筋にも雨粒が当たっては滑り落ちていく。
それでも彼は顔をあげようとしなかった。
蹲る彼の周囲には微かに放出される悪魔属性の魔力。
不安定で、尚且つ少々強い、悪魔属性の魔力。
それは、彼の精神状態に影響している。
甘い、甘い、薔薇の香り。
ヒトラーにとってそれは毒に等しい。
しかし、彼はそこから離れようとしなかった。
雨は強くなる。
濡れた体は冷たく冷えきっている。
誰もいない、静かな空間。
そこが心地よいと感じる一方で、少し寂しい。
一人でいたい。
誰かに傍にいてほしい。
誰にも見つけてほしくない。
誰かに見つけてほしい。
どちらが、自分の本心なのか、ヒトラー自身にもわからなくなっていた。
―― その時。
「……此処にいらっしゃったんですね」
不意にヒトラーの体に降りかかる雨がなくなった。
ぱらぱらぱら、と何かに雨粒が当たる音。
ヒトラーは顔をあげた。
「フィア……」
微かな声でヒトラーは彼の名前を呼んだ。
そこにたっているのは、亜麻色の髪の少年。
サファイアの瞳を向けながら、傘をヒトラーにさしかけている。
フィアは周囲に視線を向けてから、ヒトラーに言った。
「……ヒトラー様、薔薇は駄目なのではありませんでしたか」
傘をさしかけたままに、フィアはヒトラーの隣に座った。
ヒトラーは蹲って、涙に濡れた顔を隠すように膝に顔を埋めた。
少し困ったようにその様子を見つめるフィア。
そして躊躇ってから、口を開いた。
「……クビツェクは大丈夫と言っていましたよ」
―― ヒトラーが此処で沈んでいた原因。
それは、先刻彼が赴いた任務が影響している。
パートナーであるクビツェクと任務に赴いていたのだが、
その途中でクビツェクが魔獣に傷を負わされたのだ。
ヒトラーが後ろを向いていた間に攻撃されたのを庇った形だった。
幸い傷はそこまで深くなく、クビツェク自身も気にするなといっていたのだが、
魔獣に負わされた傷だから念のため、とジェイドに引き留められている。
ヒトラーもそれは知っているのか、こくりと小さく頷いた。
「……一応、聞いてる」
しかしその声は力ない。
フィアはその声に眉を下げた。
どんな慰めの言葉もきっと今の彼には届かない。
直感的にそう感じた。
―― その根拠は、ヒトラーから感じる魔力……
彼の魔力、悪魔の魔力はその魔力の主の精神状態に影響される。
悲しみや苦しみ、恐怖や絶望……
それが、彼の魔力を強める。
今感じるヒトラーの魔力はいつもより少し強かった。
フィアはおずおずとヒトラーの頭に手をおく。
濡れている黒髪をそっと撫でる白い手。
そのままフィアは、静かな声でヒトラーを呼んだ。
「……ヒトラー様」
「私には、やはり守ることは出来ないのかな……?」
口を開いたヒトラーは消え入りそうな声で言った。
フィアは小さく首をかしげる。
「私では、仲間を守りきることが出来ない……
私は、やはり……所詮、悪魔、だから……
グストルに、庇われて怪我をさせてしまった……」
ヒトラーは声を震わせて言った。
その声には所々嗚咽が混ざっている。
震える肩。
泣いていることは、すぐにわかった。
強くなる、悪魔属性の魔力。
フィアには少々辛いものがある。
しかしそれを堪えて、そっとヒトラーの肩を抱いた。
びくっと、震えるヒトラーの肩。
「……大丈夫です。
ヒトラー様は、いつも皆を守ってくださっているじゃありませんか」
「……でも、私は……」
フィアはヒトラーの言葉を遮った。
これ以上、彼が自分を否定しないように。
これ以上、彼が自分を追い詰めないように。
「俺も、この国の騎士も、勿論夜鷲の騎士も……
皆、ヒトラー様に守られ、支えられているんです。
だから、そんな悲しいことを言わないでください。
クビツェクも心配していましたよ」
濡れたヒトラーの体を優しく抱き寄せる腕は暖かい。
氷属性魔術使いのフィアだから、普通の人間よりは体温が低いはずだが、
現在のヒトラーの濡れた体には十分に暖かく感じる。
フィアは静かな声で、付け足した。
「泣いても、大丈夫ですよ」
―― 大丈夫。今、此処でならば……
「弱い貴方でも、大丈夫ですから。
今は俺が守ります」
そういうフィアの言葉に、ヒトラーの肩の震えが大きくなる。
嗚咽が雨音に混ざった。
いつも頼もしくて、強くて、勇ましいヒトラー。
フィアを含め、他の騎士も皆その姿に尊敬の意を寄せていた。
けれど……彼が、他の誰よりも優しい分脆いことをフィアも知っている。
きっと、クビツェクもわかっている。
本当は彼が慰めにきたいのだろう。
泣きたくても、他の騎士の前では泣くことができないから。
だから、こうして一人で泣いて、一人で落ち込んで、
一人で……沈んでいくのだ。
「……フィア、帰って、いいぞ……?」
泣きながらヒトラーは言う。
フィアはゆっくりと首を振った。
「……ヒトラーさんが風邪を引きますから」
「それは、フィアも……」
フィアもだろう、とヒトラーは言う。
お前も此処で濡れていたら風邪をひく、と。
フィアは微笑んで首を振る。
自分も傍にいるから、というように。
「クビツェクの代わりにはなれませんが……」
―― 俺も、ヒトラー様の力になりたいです。
フィアはそういって、ヒトラーの肩を抱く腕に力を込めた。
優しい声と暖かな腕にすがるように、ヒトラーは寄りかかる。
雨が降り注ぐ薔薇園に二つの影が落ちていた。
―― Rainy rose garden ――
(強く、優しく、それでも脆い彼だから
壊れてしまうまえに、俺が支えたい)
(今だけは弱くてもいいかな それはこの薔薇の香りの所為にしてもいいかな…?)