光が躍る。走るように。羽ばたくように。
いくつもの色が生まれては消え、また新しい色が生まれる。
短いサイクルを幾度となく繰り返しながら、いつの間にか光は広間の方へと拡がっていた。光は石畳に刻まれた陣に沿い、不可思議な幾何学模様を描き出す。

「――!」

ミーナが一際強く呪文を唱えると、魔方陣が光を放った。まるで、集めた月明りを凍らせてから砕いたような、何千匹という蛍の群れがいっせいに真夜中の洞窟から飛び立ったような、そんな眩さに、ケトルは思わず目を閉じる。
次に目を開けた時には、広間から見える夜空の色が変わっていた。月はゆっくりと傾いている。あの腐臭や寒々しい風はどこにもなかった。代わりに清涼な夜の風がケトルの頬を撫でて行く。

「転移に成功したわ……」

テロルが大きく深呼吸をした。