エラムは恍惚としてその時を待っていた。いよいよ悲願が成就するのだ。
今は遺跡と化した巨大な転移装置――かつての時代、魔物の軍勢に対抗する為に築かれた砦でもあるそれは、五百年振りとなる稼働音を響かせた。

「長かった……」

転移装置の動かし方を知る者は、今の時代にはいない。それを知る為には遺跡の碑文を解読する必要があった。装置が悪用されないよう碑文は暗号で書かれていたが、人を雇い時間をかければ全て詳らかとなった。
そうしてエラムは装置を掌握した。
残るは動かす為の魔力だったが、これも問題なかった。
エラムは祭壇に目をやる。
幼さの残る少女が磔刑にされていた。ぐったりと目を閉じ、松明の灯りに一糸纏わぬ未成熟な裸身を晒している。
少女の背には翅があった。妖精特有の、魔力で編んだ翅だ。