ミーナはぐらりとした眩暈を覚えて己を掻き抱いた。足元が消失し、虚無の底へと落ちて行く感覚がした。自分が椅子に座っているかもわからない。
不意に温かさがミーナの体を包む。慣れ親しんだぬくもり――ミリアムがミーナを抱きしめていた。ウィクトルが頭を撫でてくれた。二人はミーナが落ち着くまで待ってくれた――いつものように。

「……嘘、ですよね?」

震える声を絞り出した。悪い冗談だと言って欲しかった。すがり付く言葉を求めて腕に力を込める。

「ごめんなさい……。本当はあなたが成人して、物事を受け止められるようになってから伝えようと思っていたの」

「じゃあ、どうして……」

「あなたの本当のお家が見つかったのよ」

今度こそミーナは言葉を失った。