疲れている

シャニマス二百五十八日目。

デイリーミッションだけです。
リアルで仕事始めだったので余裕はないです。

一次創作小説「戦闘」F

少年がケトルにしか聞こえない声で言う。

「依頼人ながら悪趣味ヨー。アレ言わせたかっただけだろ」

答えるだけの余裕がケトルには無い。
ミーナは一団と共に通路へ消えて行く。

「助けるって言ったのに……!」

ケトルは奥歯を噛み締める。押し寄せる無力感を痛みによって気力に変えるように。

「リャオ、聞いての通りだ。プリンセスの願いでその小僧は殺さないこととなった」

少年が肩をすくめる。
ローブの男は口元を歪めた。

「……ただし、最終的に見逃しさえすれば好きにしていい」

「そんなっ!?」

「あはは。ヨくやるヨー。どうせほっといてもコイツは出血で死ぬってのにナァ」

ミーナの抗議は無視され、なすすべもなく運ばれて行く。
流石の少年も若干顔を引きつらせている。
そして、ケトルは――踵を返すローブの男を見据え、剣を構えた。
少年の即応――ケトルとの間合いを一気に縮め、至近距離に迫ろうとしたところで、

「――ンッ?」

眉をひそめると、勢い良く背後へ跳びずさる。
直後、ケトルの側の壁が轟音を立てて崩壊し、地響きが床に亀裂を生む。
濛々と舞う土埃に視界が奪われる中、場違いな子供の声がした。

「ちょっとこれ……どうするのテロル」

答える声は若い娘の物だった。

「げほっ……。知らないわよそんなの! ちょっと魔力流し込んだら壁壊れるなんて誰が想像できんのよ!?」

土埃が晴れて行く。
瓦礫の奥から小柄な人影が現れる。

「それに、中心部へのショートカットになったじゃない。結果オーライよね!」

「激烈にお取り込み中だったみたいだけどね」

マントを着た若い娘が長い髪を靡かせる。その頬には大きな傷があった。
娘の頭上で鈴の音が鳴る。首輪に鈴を付けた蝙蝠の翼を持つ黒猫が娘の頭に乗っている。
娘は辺りを見渡して言った。

「……ちょっとサルファー、思いっきり注目されてんだけど」

「派手な登場だったからね」

「あたしのせいじゃないわよ!!」

なんだこいつら。
ケトルは瓦礫を払いのけるのも忘れ、呆然と娘を見つめていた。
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