「フランちゃんじゃないのさ」

夕暮れ時のアルナー。買い出しから帰る途中だったフランはロジーに呼び止められた。
フランはかったるさを隠そうともせず告げる。

「何か用? あたし、今からお夕飯のお手伝いなんだけど」

「フランちゃんって好きな人いるの?」

「ミャクラクなさすぎない?」

ロジーは悪びれずに笑った。

「いやぁ、友達と話している時にそういう話題になってさ、フランちゃんはどうなんだろうなって」

「あなたはどうなの」

「うーん、同い年くらいの男の子ってどうもお子様でときめかないのさ」

「あっそ」

「だから大人の男の人ならどうかなって。ヘリオスさん、とか」

「大人が子どもを相手にするわけないじゃない」

「そうさね。でもフランちゃんはいっしょに住んでるし、ひとつ同じ屋根の下で暮らすうちに恋が芽生えるってよくある話なのさ!」

「そんなのちっとも聞いたことない。……でも、そうね。あたしアイとかコイとかよくわかんないけど、ヘリオスさんとならケッコンしてもいいと思うよ」

途端、ロジーの目がキラキラと輝いた。きゃあ、と歓声。

「ステキなのさ!」

「そういうのじゃないから」

フランはにべもなく言った。

「だってね、……だって、ケッコンした方が『それから』が約束されるでしょ?これからがある、そう思えるでしょ?」