冲方丁


アニメ『蒼穹のファフナー』のアニメ第一期の序盤のノベライズ、あるいは再構築した小説です。
アニメ版は途中で脚本家がバトンタッチしたのですが、このノベライズでは代わる前の部分も冲方氏が書いていたらこう描写していたかもしれない、というifです。

書き方や書きたいことや表現媒体の違いにより、舞台設定やキャラクターの性格や関係性に違いがあるらしいのですが、私はアニメ未視聴のため、特に気にしませんでした。


なお、読み始める前に『蒼穹のファフナー』について知っていたことは下記の通りです。

・舞台は島
・主人公の名前は一騎で、親友の総士とは緊張感のある関係(らしい)
・主人公がファフナーというロボに乗る
・得体の知れない敵が「あなたはそこにいますか」と問いかけてくる
・アニメ第一期の途中で脚本家が冲方氏に代わった
・去年放送したテレビシリーズで、死んだ方がまだ幸せなのでは?というレベルの重い展開をやった(らしい)

とまあ見事にミリしら状態でしたが、冲方氏のファンなこともあり、楽しく読めました。
限られた一巻の中で完結するために駆け足に感じる部分もありましたが「これだけは書きたい」というテーマは物凄く伝わって来ました。

島のギミックはミステリのトリックに使える域です。


刊行時期がアニメの放送とどう関係していたか不明ですが、内容がアニメ序盤の展開をなぞっているらしいため、プロローグを見ていた気分です。入門書としては丁度良い感じです。

ただ、読み込みが足りないのか、おそらく自分はまだこの物語を理解しきれていないという感覚があります。なので、この感想で見当違いなこと書いているかもしれません。

やはり一騎視点では読みきれなかった他のキャラクターの内面や、ケイ素化合物の質問の意味はアニメで観ないとわからないものでしょうか。
アニメも観たくなりましたが、アニメシリーズ(劇場版含む)を追うには長丁場になりそうでちょっと躊躇しますね…。


やはり冲方作品は好きですね。自分の中の攻撃的な衝動が別の何かに昇華されていきます。

陰惨で全体的に救いが無い話でしたが、だからこそ生きることへの渇望が鮮明に書かれていました。あなたはそこにいますか、その意味をはっきり理解することは出来ませんでしたが、ここにいたい、いるしかない、ここにいる、と叫ぶ子供達の物語なのかなと。
真矢の存在があるから、まだ一騎にとっての希望が消えたわけではないと思えました。彼らの旅路に幸多かれと祈らずにはいられません。


追記から、各キャラクターごとの感想です。小説のネタバレ他、読了後にwikipedia等で調べたことにも触れています。
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