「二人共、大丈夫ですか!?」

「追い込みも、失敗、か。簡単な依頼だと思って、いたんだが……」

 薄暗い路地裏から出たケトルとリャオを迎えたのは、小柄な少女と巨躯の男性だった。
 ミーナは大きな苺色の瞳と、柔らかいが太めの眉が顔の中で目を惹く十二歳の少女だった。チョコレート色のセミロングの髪に帽子を乗せ、マントを纏い、いかにも魔法使いといった風情である。ただ服に慣れていないのがありありとわかるため、どうにも服に着られているという印象を受けずにはいられない。
 ケトルは自身の新品の鎧を見ながら、自分も同じようなものなのだろうと思う。

「兄貴、あいつムカツクヨー!! 絶対オレラで遊んでるヨ!! 無傷で確保って依頼で無けりゃ、オレだってもっと……」

 リャオが巨躯の男性に愚痴を言い始めた。

「わかった、わかった。作戦を考え直そう」

 彼はリャオと長い間冒険者のコンビを組んでいて、だからだろう、リャオを宥める手付きも慣れたものだった。
 サーディットは見上げるほどの大男で、筋骨隆々とした体格の持ち主だった。頭に布を巻き、簡素な鎧を身に纏い、大きな斧を担いでいる。年齢は二十二歳だが、実年齢よりも老けて見えた。
 何かあった時のためにミーナを路地の前に残し、サーディットを護衛として待機させ、残り二人で獲物を捕獲する。それが今回の作戦だった。
 それで充分だったはずだった。捕獲対象となる相手は、猫一匹なのだから。