『SOUL CATCHER(S)10巻』
神海英雄


ブログタイトルは帯の文言からなのですが、この表紙のどこに吹奏楽要素があるのかさっぱりですよ。めたるぎあ?な神峰っちゃんが最高に格好良いだけに、過去最高に何の漫画かわかりません。指揮棒が武器にしか見えないです。
…良く見たら申し訳程度に楽器が写ってますね。
でも最初に見た時、正直、バトル漫画の表紙だと思いました。

描かれているのは神峰と黒条、奥に伊調という三人の指揮者です。
奥へ奥へと向かう構図に不穏なものを感じつつ、この巻の内容を的確に表していて好きです。

そしてカバー裏を見て黒条マジか…ってなりました。
黒条は毎回カバー裏でお茶目さんなことをするから許しがたいです。畜生、可愛い。あざといけど可愛い。そう思ってしまうことが悔しいです。


以下感想です。極力ネタバレは避けていますが、一応注意です。


さて、本編の内容は伊調救出と全国大会です。
物語のテンポは更に加速、息つく間も無いバトル、バトル、バトル!
神峰と同じ目を持つ黒条、ライバルたる伊調、そして全国大会で相見える強敵達。ノベライズのピンナップに描かれていたキャラクター達もようやくお披露目です。
神峰の成長と仲間達の覚醒と、クライマックスに向けて全力疾走していく盛り上がりがお祭りのようです。
吹奏楽は人数が多いですが、そのひとりひとりを描ききろうとするエネルギーを感じます。
なにより大人数だと画面が楽しいです。ここで改めて、音楽って楽しいんだなと思いました。
神峰がつらいことやきついことから逃げず、向き合ったからここに来れた。それが感慨深いです。

黒条について。
彼はこの作品では異色とも言える、最初から最後まで「悪役」でした。
主人公と同じ心を見る能力を持ち、しかし主人公とは違って人をよからぬ方向へ誘導するのが好きな愉快犯。そこに理由は無く、実はいい人的なオチも無く。ただ不気味な存在でした。
彼は「理解できない人間」「わかりあえない人間もいる」ということを示す役だったのでしょうか。
今まで神峰が接してきた人間は、人間関係や部活関係のありふれた悩みを抱え、それでも話し方次第では相互理解できたり、音楽で通じ合ったりできました。しかし黒条にはそれが無い。抱えている問題も無く、指揮者としてもぶつかり合ってはいないのです。
確実に言えるのは、因果応報はあるということ。今までの神峰の行動が吹奏楽部での居場所を作ったように、黒条の今までの行動もまた、彼に報いたのだと思います。
私はこれでよかったと思います。心が見える者同士が(だから)理解し合えないというのは中々考えさせられるものがあります。
結果として神峰の主人公力が増しているのだから、黒条ナイスと言わざるをえません。チェーンソーと刀を携え、それでもだめなら徒手空拳で戦う神峰っちゃん最高に主人公。これが最初の頃は人と関わりたくないと言っていた少年なのでしょうか。個人的に神峰は全力で応援したくなる主人公なので、その成長が嬉しくて仕方が無いのです。でも日常ではまだ人ごみが怖いとか、そこまで急激に変わらないのも微笑ましいです。頑張れー頑張れー。


ジャンプ+移籍後から毎週怒濤の展開と引きのキレッキレ感が凄まじく、内容の過密度合いも含めてWJ連載時よりもパワーアップしてないですか。しかも掲載順位気にしなくていいからストレスフリーですし、いい掲載誌に落ち着いてよかったです。
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