ろくごまるに氏の作品を再読中です。


前巻からの時間の経過は不明ですが、
・蚊がいる季節〜そろそろ蚊がいなくなる季節
・和穂が人間界に来てから一年は経っていない
そうなので、夏から秋でしょうか。


挫折して、それから立ち向かうお話。
文字通り、泥にまみれても常に前進を忘れない人達のお話。

なんだかこの巻は、和穂にとってのターニングポイントなのかもしれません。
その最たる例が梨乱との出会いでしょう。境遇を理解し共感出来る、同い年で同性の友人が出来たこと。そして、思いっきり泣いて、気負わなくなったこと。
また、今まで味方だった相手を解放するために戦う、それを選択出来るのが和穂の強さなのかなと。誘惑に負けなくて良かったです。
元仙人という肩書きのために忘れていましたが、和穂は十五歳の女の子にすぎないんですよね。そのことを再確認しました。

殷雷は殷雷で、和穂をからかうのが恒例になって遂に泣き真似まで披露するわけですが。
その一方で、使用者の敵討ちなんて宝貝らしくないと自覚しつつも和穂の敵討ちを考えて決行(勘違いと気付いて未遂)するあたりが、凄く人間臭くなったと思いました。一巻の頃とも変わって来ています。
「……これでも武器の宝貝なんだ。少しは強がらせてくれ……」なんて、珍しく素直に吐露したりもします。個人的に殷雷のポイントは「自覚ある強がり」です。しかもこの会話の翌日にわざとらしく鍛錬て、昨晩の会話を吹っ切ろうとしたのかと邪推してしまいます。


例えこの先の展開がわかっていても、浮鉄が潜行し、距離計の数値がひとつひとつ上昇するシーンは緊張感があってハラハラしました。
でも山場はそこではないんですよね。封仙は敵の「目に見える(当面の)脅威」を潰し、奥の手を引き摺り出してからの攻防がめぐるましいです。
そろそろ語彙が欲しくなってきました。


ああそうだ、何気に、航昇みたいな容赦なくぶん殴っても良心が痛まないくらいに三下なキャラクターってろくご作品には珍しいですね。

夜主さんの台詞もいちいち好きでして。
龍華と似た顔で、仙人並の精神力とか、なんでしょうねこの人は。潜ってきた修羅場の数が凄いのだろうと推測しますが、それ以上のバックボーンが語られる日が来るのかどうか。

夜主さんとの掛け合い、何気に捜魂環も辛辣ですね。捜魂環に関してはこの先ちょっとありますから、その時に書こうと思います。
ただ、「普通の宝貝」の性格ってこんななのでしょうね。
人の姿にならない宝貝の中ではトップクラスにキャラが立っている宝貝だと思います。


今ふと思ったのですが、もしも封仙がもっと人気で、富士見が読者企画とかガンガンやるタイプだったなら、「ワシの考えた宝貝」を読者投稿させて、大賞に輝いた宝貝は本編に登場!とかそういうことやっていたんでしょうか。
などと過去に思いを馳せます。