ニワトリの鳴き声が、いつもと同じように1日の始まりを知らせます。
 小さな窓から伸びた薄い陽光が、ベッドで眠っているフランさんの頭を優しく撫でました。
「むにゃ…」
 フランさんはもぞもぞと身じろぎをした後、ゆっくりと目を開けました。
「おはよぉーわん太ー」
 ぺしぺし。隣で寝ているわん太さんを起こします。
 わん太さんというのは白くて大きな犬で、フランさんの大切なお友達です。
 寝る時も同じベッドです。なぜならば、まだ6歳のフランさんはベッドが大きすぎるし、一緒に寝た方がとお互いに落ち着けるからです。
 ところでこのわん太さん、本当はれっきとした「ラザフォード」という名前があるのです。でも、フランさんは彼のことを自分がつけたあだ名でしか呼びません。
 そんなわん太さんがうつらうつらしているうちに、フランさんはすっかり身仕度を整え終えます。
 そして洗面所から帰って来ると
「今日もいいお天気だね!」
 わん太さんに笑いかけました。