6月末から7月初め頃に書いていた分を載せます。
6月の途中から書けなくなって、それでも話を練っているうちにある出来事から調子を崩したのと、書いたものが気に入らないところがあったので遅くなりました。
拍手をありがとうございました。
少年と話してから数日のちのこと、ラリサは資料を探すという名目で、書庫にいた。空気がやや、湿っぽい。
この書庫には、色々な本や資料が雑然と置いてある。中には摂政の私物のようなものまである。使い方を誰か咎めることはないのだろうか。
初めは、当たり障りのないものをちらちらと見るだけのつもりが、段々、面白いものを探しだす。ラリサの行為も、あまり良いことではない。
しかし、上手に息抜きができない彼女は、たまに自分を縛りつけているものから逃げたくなるのだ。仕事しかり、人間関係しかり。
彼女は、見咎められることを恐れながら、目に付いたものをおもむろにぺらぺらめくってみる。
(難しいことばっかだなぁ……。自分も勉強し続けないといけないのかな)
勉強すれば、これらの筆者と同様の何かが書けるのかもしれない。けれども同じ地平に立てる気がしない。
進学はした。多分、少なくとも表向きは学ぶ気があった。でも、今はもうすっからかんだ。
(これ……例のなんとか主義だ)
建国や元帥以前に、基となる思想があった。あまり知名度はなく、元帥が始祖のように思われているが。その思想に基づいて書かれた文章のようだ。
(初めは、文化の独自性と自主独立について説いていただけだったんだよね)
月面に住む人々の都市も時間が経てば、地球にある国家や文化と違ったそれなりの個性を持つようになったという主張だ。
それがいつの間にか、新世界秩序を築くとか、我々が導くとかといった話に広がっていった。
ラリサにとって、かつて皆を躍らせたそれらのフレーズに自らを委ねて束の間一体化するのは心地良いことだ。月面帝国が敗けた今となっては、口に出すのは憚られることだが。
(麻薬だよ、麻薬)
そう思うが故に何も本心から入れ込んでいるわけではない。多分、今のところは。