もしも彼等が幼児化(紅主従編;6)
前回の続きは
気紛れにあります。
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「―…あれ?」
それはちょっとした違和感。
すっかり夜も更けて、ふわああぁっと大きなあくびをしながら布団に入った時だった。
目に見えたわけでも、何かが聞こえたわけでもないのだけれども、そんな感じがしたのだ。
「誰か居る?っ…うわぁ!!?」
「チッ」
「くっ、何すんだよ!」
天井裏に誰かが居る気がして声を上げた途端、板が外れておれの心臓へ目掛けてクナイが飛んできた。
それを横に転がってズレることで、間一髪でなんとか避けられたけど、舌打ちと共におれの目の前に誰かが降りてきて。
「だ…誰だ!?」
一瞬佐助さん率いる忍隊の人かと思ったけど、その人の纏う雰囲気と目つきに直ぐに違うとわかった。
そうでなくとも、面識があるからこそ彼等が優しいのは知っているし。
「死にいくだけの主には知らんでいいこと」
「なんだと!?」
「貴様みたいなひ弱な奴ならば、我一人でも余裕よ。―…ついでに"紅天女"の首をいただこうぞ」
「くっ!?そう簡単に殺されてたまるもんか!」
額と拳に炎を灯し、炎を噴出してソイツの後ろへと回り込む。
ちんちくりんのおれを見て油断していたのか、拳を簡単に頭に打ち込むことができて…フラついたその隙に近くにあった帯を使って手足を縛り柱へと括り付けた。
「何が狙いだ?」
「ぐあっ」
「おれは一体何の"ついで"なんだ?」
聞き逃さなかったそれと、直感的に感じる何かの違和感。
何が面白いのか、ククッと喉をふるわせると、奴は片唇を器用にあげて笑った。
「愚問だな。この城へ忍び込む理由など、決まりきっておろう」
「…まさか、」
「ふははは、僅かでも"足止め"が出来れば上等よ。有能な武将であろうと、小童となった今では我等にとって脅威ではない。―…今が好機というものだ」
「ふざけるな!」
「ぐあっ!?」
「そんな事はさせない!おれが守ってみせる!」
「ぐっ…、もう手遅れだ。小童だろうが情けも容赦もするつもりはない。我など足下にも及ばない、相当な手練れが向かったはずさ」
「っ!」
憤りを隠すことなく奴を睨みつけると、奴は幸村さん達が居る部屋の方へと目をやる。
そしておれの方へとまた視線を戻すと、ぐしゃりと顔を歪めて笑った。
「残念だったな、紅天女?」
「っ―…黙れ!」
こうしてる場合じゃない。
少しでも早く行かなくちゃ。
ザワザワと風で揺らされた木々の音が、不安を大きくしていく。
奴を縛り付けた帯をチラリと目をやり、そう簡単に奴も逃げ出せないこと確認すると、腕に灯した死ぬ気の炎の炎圧を上げた。
加減をしなかったために、障子が部屋中の物が吹き飛ぶのが見えたが、そんなことに気にしている場合じゃない。
そのまま手を後ろの方にやると、さらに純度を増し燃え上がった炎で飛び、幸村さんの部屋へと急いだ。
「クソっ!間に合え…!!」
君色、空の唄番外編
(どうか、どうか、無事でいて)
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