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( ゚∀゚)「残念だが、部活があるからな」←バスケ部二年
(*゚∀゚)「時間あればなー」
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( ゚∀゚)「安西先生……野球が観たいです」
(*゚∀゚)「バスケやれ」
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( ゚∀゚)「名電頑張って欲しいぜ」
(*゚∀゚)「オレは健大高崎が好きー」
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( ゚∀゚)「秘境グンマーが生んだ俊足の化け者共か……」
(*゚∀゚)「群馬県民が怒るぞー」
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( ゚∀゚)「まー足を使って掻き回す野球は俺も好きだな」
(*゚∀゚)「バンバン走ってバンバン盗塁決めるからなー」
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( ゚∀゚)「二塁から一気にホームに突っ込む場面も多い」
(*゚∀゚)「ピッチャーが一番相手したくない高校だろうね」
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( ゚∀゚)「周りが盛り立ててやんないと、ピッチャー1人で野球やり出しかねないからな」
(*゚∀゚)「にーちゃん本当に野球好きだなー」
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( ゚∀゚)「ああ。超好き」
(*゚∀゚)「なんで野球部入らなかったの?」
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( ゚∀゚)「だって怖いじゃん、硬式ボール」
(*゚∀゚)
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( ゚∀゚)「デッドボールとかやべぇよ、めっちゃ痛いよ。野球部のギコはこの前ノック中のボールが当たって頬の骨を折ったらしいし」
(*゚∀゚)「オレの友達のハインはバスケットボールで突き指して骨折したらしいぞ」
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( ゚∀゚)
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( ゚∀゚)「え、何それ。バスケちょーデンジャーじゃん」
(*゚∀゚)「一年ちょいバスケやっててそれに気づかないってすごいな、にーちゃん」
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( ゚∀゚)「もうやだ俺バスケしたくない。家でゴロゴロしながら春選抜見てたい」
(*゚∀゚)「にーちゃんよくそんなんでレギュラー取れたなー」
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( ゚∀゚)「あー、名電優勝しねーかなー」
(*゚∀゚)「でも名電次が厳しいんじゃないかー?」
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( ゚∀゚)「光星か……。まー苦戦は必至だろうな」
(*゚∀゚)「近江相手に大差で勝ってるからなー」
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( ゚∀゚)「名電だって宮崎西と履正社に大差で勝ってるし」
(*゚∀゚)「アヒャー乱打戦になりそうだねー」
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( ゚∀゚)「野球やってみようかなー」
(*゚∀゚)「危ないから嫌なんじゃなかったっけ?」
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( ゚∀゚)「いや、ランナーコーチャー楽しそうだなと思って」
(*゚∀゚)「でも野球部のブーン、ランナーコーチャーやってて打球直撃してたぞ?」
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( ゚∀゚)
(*゚∀゚)「ファールボールって意外と打球速いからなー」
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( ゚∀゚)「じゃ、じゃあアンパイヤ」
(*゚∀゚)「ファールボールが内股に当たってるのをよく見るぞー」
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( ゚∀゚)
(*゚∀゚)「それに、今の季節はいいけど夏はめちゃくちゃ暑いだろうからなー」
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( ゚∀゚)
(*゚∀゚)「あ、にーちゃんあれがいーんじゃないか?」
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( ゚∀゚)「あれって?」
(*゚∀゚)「ボールボーイ。ほら、ファールゾーンに座ってる奴」
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( ゚∀゚)「おー!それいいな!」
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( ゚∀゚)「おし決めた!俺、ボールボーイになるわ!!」
そしてジョルジュはボールボーイになるために野球部に入った。
しかし彼はそのうち高校野球の魅力に取り憑かれ、ボロボロになりながらも必死に練習をしていた。
いつの間にか、彼はレギュラーを目指し練習をしていた。
元々運動神経のよかった彼は、メキメキと力を付けていった。
三年最後の夏。
ジョルジュ達の高校は甲子園出場を決めた。
ジョルジュも他の選手たちと共に甲子園の土を踏んでいた。
……だが、彼はベンチに入ることは許されなかった。
ファールゾーンで椅子に座り、声を出すことも許されず、ただ飛んできたボールを拾い、審判に渡すだけの仕事。
かつて自分が目指した場所に、彼はいたのだ。
なのに、彼の心を満たす物は何もなかった。
結局チームは負けてしまった。
相手高校の校歌を聞きながら、チームメイトは涙を流していた。
ジョルジュの瞳には涙は浮かんでいなかった。
彼にはもう、涙を流せるような余裕がなかったのだ。
校歌が終わり、チームメイト達が応援団に挨拶をしようとアルプスの前に集まる。
ジョルジュも最後の挨拶をしようと、チームメイトの列に参加しようとした。
「あ、君。君は行っちゃだめだよ」
ジョルジュの背中に、審判員の声がぶつかる。
重かった。痛かった。
今まで受けた死球なんかよりも、よっぽど痛かった。
ジョルジュは審判員の方を振り返らず、涙を流しながら挨拶を交わすチームメイトの姿をじっと見つめ、唇を噛んだ。
ボールボーイを引き受けた以上、彼は球場の職員として扱われる。
涙声で挨拶する選手達とも、ベンチに入れず、応援に徹することになったチームメイトとも違う、独立した存在。
甲子園球場のグラウンドにいる以上、彼にはチームメイトと共に涙を流すことも許されないのだ。
挨拶が終わり、チームメイトがベンチを片付けている中、ジョルジュの頭をポンと叩く手があった。
「……お疲れ様。もう、戻っていいよ」
先ほどジョルジュを止めた審判員の声だった。
その時、もう流れないと思っていた涙が、ジョルジュの両目から溢れ出した。
唇を噛み、肩を震わせながらジョルジュは涙を流す。
頭に乗った手の重みは、ジョルジュの涙が止まるまで、ずっと残っていた……。