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第2章「思い出の場所に」2


商店街は様々な店が声を張り上げ、お客を
引こうと一生懸命だった。
「さーあ!安いよ安いよ!寄っとくれ!!」
「らっしゃい!」
「えー、整理券を配布しておりまーす!」
いろんな声が聞こえる中に
アルナとルスクは早歩きでやって来た。
「良い、ルスク!ここの店バーゲン狙いよ」
「ホントに行くの?アルナ」
強気なアルナに対し弱気なルスクだった。
「皆さん、只今よりセールを開始します!」
「始まったわ、行くよルスク!」
「待ってよアルナ」
二人の手はしっかりと握られていた。
一方、思い出の場所では皆が疲れていた。
「はひーっ!!もう腹減って動けねぇよー」
「きっとバーゲンセールへ行ったのね」
「アルナは特に行きたがるからね」
あはははははと皆で笑い合っていた。
「マルク、どうかした?」
しきりに外を気にするマルクに声を掛ける。
「何でもないよ、ティナ」
そう言いながらもやっぱり外が気になる。
「アルナの事気にしてるのねー?」
「そ、そんなんじゃないよ」
「でも、この間アルナの事相当気にしてた」
皆からからかわれ必死になって「違う」を
連呼するマルクを見つめて、ティナが
ため息を吐いた。
「アルナかぁ、やっぱ可愛いよねー」
「ん?何か言ったか、ティナ」
「あんたにゃ関係ないでしょ!!」
「いでーっ!!」
平手打ちを食らってラッツが叫んだ。

緩い丘の上を登って2つの影がやって来た。
「遅くなっちゃったね」
「アルナが欲張るからだよ」
「ま、ゆっくり帰りましょ!!」
アルナとルスクがらんららんららーんと
繋いだ手を振りながら、思い出の場所へと
足を早めた。
丘を登り終えたアルナとルスクが
ふと空を見上げると
太陽が燦々と輝いていた。
「明日も晴れそうねー」
「そうだね、皆お腹空かしてるだろうなー」
そんな会話をしながら2人して苦笑いし
家のノックをコンコンと叩くと
見慣れた顔が覗き込んだ。
「アルナとルスク帰って来たよー!!」
そう聞いて、マルクはホッとしたように
1人胸を撫で下ろした。



第2章「思い出の場所に」1


その日は良く晴れていた。
暖かな光が窓を通しても感じられる程
気温の高い1日だった。
時は流れ、平和な日々が過ぎていった。
「あぁっ?!今、なっつった?!」
「じょ、じょ、冗談だよ!ほら、練習練習」
ここは、見晴らしの良い丘の上に建てられた
別名「思い出の場所」と言う家。
中は暖房冷房完備、音響効果があるうえに
外に迷惑を掛けない防音製の板を使って
建てられている。
そんなこの家に住むのは個性的な奴等。
毎年行われている、ダンスの大会。
1等になれば賞金3000000円が手に入ると
あって、この近くでは
もっぱらの一大イベントとして
知られていた。
「こらぁ!そこ!ダラダラしない!」
「ふいーもう疲れたぁー!!」
「しょうがないわね、じゃあ休憩!!」
「やほーい!!」
ラジカセの音楽をプッシュして音を止めると
タオルで汗を拭った。
「お疲れ様、ティナ!」
「うん、有り難うサイリス」
「オレっちのはー?」
「自分で取れば?」
明るい金色のくるくるした髪の毛のティナ
真っ黒なロングヘアーのサイリス
そして賞金を狙うイケイケボーイ、ラッツ
「ちぇーっ」
渋々自分でドリンクを取って、ラッツが
飲み始めた。
「ぷはー!!ウメェ!!」
すると、2階の一室のドアが開いた。
「皆、マルクが気が付いたぞ」
それを聞いて3人が一斉に振り向いた。
「ホント?!ターム」
「良かったね」
「さすがオレっちの弟子」
「あんたは何もしてないでしょ!!」
ティナのげんこつがラッツに落ちた。
「いてーっ!」
ハハハと笑いに包まれる。
「皆、心配かけてすまない」
「マルク!大丈夫?」
ティナが心配そうに声を掛ける。
「ああ、アルナは?」
「アルナならルスクと買い物じゃない?」
「そうそう」
それを聞いてマルクが少し安堵の表情を
浮かべた。
「そのうち帰ってくるわよ」
「そうだな」
「オレっち腹減ったぁぁぁぁぁ!」
ラッツの声と共にお腹がぐぅと鳴った。
「はいはい!練習練習!休憩終わりよ!!」
「うへー」
ティナの言葉にラッツが舌を出して呻いた。

家から近くの商店街。
そこに、2人の姿はあった。
綺麗に纏めた髪は
腰の辺りで揺れている女の子。
そして、手を繋ぎ横を歩く男の子。
「アルナ、皆が見てるよ」
「いーの!ルスク、行くよー」
そういうアルナの頭には真っ赤なリボンが
揺れていた。



ここまで更新した感想4


はい。

こんばんは(笑)

次から次へとキャラが減っていますが

2章より新キャラ登場です。

お楽しみに!!

それではっ!


第1章「消えゆく者達の運命」3


その日。
空は雲に覆われた、はっきりしない
天気だった。
「何か、怖いよ」
不意に言葉が口から出る。
それは、昨日の事。
打ち明けられた、話。
「いいか、良く聞いてくれ」
「うん」
長い時間と、驚きの連続。
「おじさんが!?そんな事をしたら」
「大丈夫、君との約束だ」
「また、会えるよね?」
すがるように俯せる。
「いつかまた会えるよ、忘れ去られる前に」
「僕は忘れない!忘れたりしないよ」
部屋を出てぽつりぽつりと何かを口にする。
「そうだ、先生にお線香あげようっと!」
駆け出したその時、急に目の前に
入って来た、その姿。
「何だろう?」
その部屋には妄りに入れないはずだった。
急に不安を感じた、その時だった。
ドカーンと言う爆発音がして
ガラスが割れた。
ビービービーっと危険を知らせるサイレンが
辺りに響いた。
「い、いたたたたた」
割れたガラスはバラバラと天井からも
降ってきた。
「わあああああ!!!」
もうダメだと諦めた時に走ってくる人影が
ギリギリの所でそれを交わした。
「こら!部屋に居なきゃダメじゃないか!」
「リーヴィル、ごめんね」
と、次々に爆発音が鳴り響き
天井のあちこちからガラスが破壊された。
「くそ!奴等一体何処に!」
「リーヴィル、怖いよ」
「大丈夫だ!離れるなよ!?」
「うん!」
背中におんぶしてもらい、崩れていく中を
走り出した。
外へ出ると魔術師達が次々に出て来ていた。
「くっそ!奴等、なんてしつこいんだ!」
「リーヴィル様!」
「どうした!?」
数人の魔術師が駆けて来ると。
「魔方陣が、奴等に」
「意地でもジャヴィラを、と言ってました」
「おじさん!おじさんは!?」
その場にいない事に、気付いた。

「リーヴィル様!危ない!」
その声に真上を見上げると、巨大な石の壁が
リーヴィルめがけて崩れてきた。
「わあああああ!!!」
ぎゅっと瞑った目を開けると
僅か数センチの間で止まっていた。
「リーヴィル!?」
「行け!走るんだ!早く!!」
魔術師の1人が腕に少年を抱える。
「待って!リーヴィルが!リーヴィルが!」
「ごめんな、もう無理かも知れない」
静かな夜に、ガラガラガシャーンという
音が響く。
「リーヴィルぅぅぅぅぅ!!」
少年の叫び声が夜空に
いつまでも聞こえていた。



第1章「消えゆく者達の運命」2


激しい術式同士がぶつかり合って
爆発を起こす。
「く、くそっ!」
「どうした、もう終わりか?」
ついに力尽き倒れ込む姿をみて相手の術式が
一気に入って来た。
「ハハハハハハッ!!」
「ぐあぁぁぁぁぁ」
魔方陣へ近付き支えている支柱を弾き返す。
「な、何だ!これは!?」
グァングァンと音を立てて魔方陣が揺れる。
「イヤぁん何よこれ!?」
そこには1人の女の子。
すやすやと眠りについている。
「くそっ!やられた!」
踵を返すと俯せた姿がニヤリて笑って
事切れた。
「おのれ!!」
「何よ、単なる時間稼ぎなの?許さない!」
ゴウッと火柱が上がり
たちまちキナ臭い匂いが辺りに充満した。
辺りがシーンと静まり返る。
焼け焦げた人影が手を伸ばす。
魔方陣が光に包まれ元の姿に戻った。
身体中で力を振り絞り、封印を施すと
走ってくる姿が名を呼んだ。
「ファルヴァル先生!」
駆けて来る姿が掠れて見えなくなる。
「先生!先生!しっかりして!」
「おお、無事か」
何とか絞り出した声。
「先生、僕は、僕は、きっと強くなる!」
涙声で顔を埋める。
「だから、だから、だから心配、しないで」
「はぁ、な、何を心配、す、す、す」
苦し気に身体がビクンビクンとうねる。
「先生!!」
「あ、が、と、う、げ、元気、で」
握り締めた手がするりと抜け落ちた。
「先生ーっ!!うわーんっ!!」
やがて、数人の足跡が聞こえて来た。
「兄貴!?嘘、だろ?」
「リーヴィルぅぅぅぅぅ」
駆け付けた救護班は首を横に振るだけ。
「そんな、そんな、兄貴」
辺りは風が吹き抜けていくだけだった。

「兄貴、さぞ無念だったろうな」
埋葬が静かに行われた。
「うっ、うっ、うっ」
泣きながら花を飾り付ける。
「僕、頑張る!先生の教え、絶対忘れない」
「兄貴、後の事は任せてくれ」
そして、お別れの時が訪れた。
空は薄い雲に覆われたはっきりしない
天気だった。




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