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美味いもん食わせろよ。2




そいじゃ、そろそろ続きを。




直江が平静を取り戻すまでに10分かかった。
その間にも、高耶は少し猫語で喋っていた。
萌え殺す気かと、起こしてしまおうかと思ったのだが、どうしてもその眠りのじゃまができなかった。
直江は少しずつ距離をとり、深呼吸を何度もした。

やっと落ち着いてきた。
台所に戻って、潮汁を完成させなくては。
湯引きしたので、灰汁はそんなに出ていなかったが、網で灰汁をとり、味をみながら塩だけで味付けする。
椀によそうと三ツ葉とすだちの皮をのせる。

よし、できた。

そのほかタッパーに入った総菜を皿に移し替えて、テーブルに並べた。

冷蔵庫の刺身も出して、高耶を起こそうと振り向くと、高耶は上体を起こしていた。

「起きましたか?」

寝ぼけ眼のままの高耶に話しかける。

「うまそーな匂いで、眠てられるかよ。」

頭をくしゃくしゃと掻きながら起きてきた。

「おお、スゲーお刺身。」

何の魚だろう。白身に少しピンクが入って桜の花びらみたいだ。
鯛じゃないし、ブリでもハマチでもないな。カサゴ?

「さあ、座ってください。御飯にしますか?日本酒もありますけど。」

「おまえ飲みたいんじゃねーの。」

「付き合ってくれるんですか?」

「少しだけな。あっ、でも飯も食う。」

そう言うと、高耶は自分で御飯を取りに行った。

「座っていても、良かったのに。」

「うちでは『働かざるもの食うべからず。』だからな。」

座っていたって、ご飯は自動に出てこない。食べたかったら、働かなきゃならない。
母親がいないから、自分のことは自分でする。仰木兄妹はそうやってきた。

「いただきます。」

高耶は食卓につくと、手を合わせた。どこから手をつけて良いのか
解らない。どれもうまそう。

それにしても、こんだけの料理を、直江が作ったのだろうか。
直江にこんな特技があったのか。
自炊しているところなど一度も見たことがなかったが。

「料理できたんだな。」

「少しはできますけど、これは違いますよ。知り合いの料理人に頼んでおいたんです。俺が作ったのは潮汁だけ。」

ホウボウの薄造り、ホウボウの煮凝り、里芋団子の海老あんかけ、長ネギのぬた、そして直江が作ったホウボウの潮汁。

まず高耶は潮汁を飲んだ。

「ん、美味しい。直江、すごくうまいよ、これ。」

魚の出汁がよくでていて、濃い。すだちの香りがそれを締めていて、美味しい。

お刺身も美味しい。脂がのっていて、甘い。

高耶は気持ち良くなるほど、もりもりと食べてくれた。
少しアルコールが入ったからか、好物を食べているからか、機嫌が良かった。
直江はそれを眺めながら、随分と自分がリラックスしていることに気がついた。
忙しい毎日にいかに高耶不足していたかが解る。

あなたのことで心が荒むのに、あなたによって救われる。

不思議だ。
感情の全てがあなたに繋がる。あなたが穏やかであることがこんなにも嬉しい。

「ごちそうさま。はー、食った食った。まさかお前のうちでこんな美味いもん食えるとは思ってなかったぜ。」

ついこの間まで、直江の家の台所は使っている形跡が無かった。
お湯を沸かすくらいしか使っておらず、フライパンも鍋も無かった。
ご飯は近くのコンビニや外食ですましているようだ。
だから料理はできないのかと思っていた。
料理しなければならない環境にないのだ。
直江の今の母親は男を台所に入れるタイプではなさそうだし、こいつに手料理を食べさせたい女なんて腐るほどいる。
呼べばほいほいやってくるに違いない。

「喜んでいただけたなら光栄です。どうかしました、高耶さん。」

さっきまで機嫌が良かった筈なのに、たった一瞬で不機嫌にみえる。

「…なんでもねえ。もう帰る。」

高耶はそう言うと立ち上がり、上着をつかむと玄関に向かった。

直江には意味が解らない。何が高耶を不機嫌にしたのか。
解らないがこのまま帰すつもりは無い。

廊下に出る扉の前で直江は高耶の腕を捕まえた。

「離せよ。」

「何怒っているんですか?」

「別に怒ってねえよ。」

「だったらなんで急に帰ろうとするんですか。」

「元々飯食ったら帰ろうって決めてたんだよ。あんまり長居したら悪いだろ。電車の時間もあるし。
本当に美味かった。ごちそうさま。」

確かに9時近い。松本に帰るのであればあんまり長居はしていられないだろう。だが笑う顔は不自然だ。
高耶は何か怒っている。
直感で直江はそう思った。
怒らせたきっかけは解らないが、まだ高耶を帰したくない。
もっと側にいたい。

高耶は腕を振り払う。だが抵抗するのは遅すぎた。
直江は高耶を後ろから抱きしめた。強く抱きしめ、離さない。
高耶はもがいて腕から抜け出そうとしたがびくともしない。

「離せ。」

力でどうにかする気か?

高耶は反発を覚えて暴れた。頭を押さえつけられる事が大嫌いなのだ。

だけど振り向いて見た直江の顔は泣いてしまいそうに悲哀に満ちている。

「もう少し、そばに居させて。」

切迫した思いが込められていた。

まだ足りない。まだあなたを離したくない。もう少しだけでいいからそばにいさせて。今離されたら死んでしまう。

泣き落としかよ。

直江は今にも涙をこぼしそうな顔をして高耶を見つめた。そして思いを告げるように首筋を吸う。

高耶はため息を吐きたい気分になった。

やきもちで恥ずかしくなって、泣き落としでほだされてしまう。

俺の方がどうかしている。

やっぱりお泊まりコースになってしまうのだろう。
大概自分に甘い。
だがこんな捨て犬みたいな顔されて、置いていけるか。

高耶は体の力を抜いて、そのまま直江に体を預けた。
頭の隅ではあずさの最終の時間を思い出そうとしていたが、それもどうでも良くなっていき、
なにも考えられなくなっていく。





一応終わり。
辻褄が合わない。あと言葉がちがう。
書きたかったのは直高がご飯食べながらの会話話。
だが浮かばなかった。
残念。

まあ自己満。
とりあえずいつまでも未送信フォルダーにあるのが嫌なんだよ。







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